建設グラフインターネットダイジェスト

〈建設グラフ2009年12月号〉

技術・製品ニュース

立ち止まらないスピーディーな3次元測量を実現

――移動体搭載型スキャナーで危険箇所のデータ取得も可能に

株式会社 タナカコンサルタント


▲急傾斜地 計測状況

 すべての建設事業において、その最初に欠かせない工程は測量だが、近年は工期の短縮化によるコスト縮減を実現しつつも高品質な施工が求められることから、測量も迅速であると同時に、高度な精密さと分かりやすさが求められる。そのためには地形や施工対象の形状を精確に再現し、把握できる3次元データを活用することが最も有効だ。そこで、注目されているのが「タナカコンサルタント株式会社」(苫小牧市・田中稔代表取締役)が開発、運用している「移動体搭載型レーザースキャナーによる3次元計測システム」だ。

▲空中斜め写真
▲フィルタリング処理 ▲グラウンドデータ作成
▲移動体搭載型
レーザースキャナー
(GPS・IMU 内臓)

◆誤差はわずか10mmの高性能 移動体搭載型レーザースキャナー
 移動体搭載型レーザースキャナーは、計測距離が最大1,000mでありながら、誤差はわずか10mmという精度を持つ高性能スキャナーである。この移動体搭載型レーザースキャナーを作業車両やへリコプターなどの移動体に搭載することで、調査対象となる地形、構造物などを計測点で立ち止まることなく、移動しながら3次元データを得ることができる。また、無人ヘリコプターに設置すれば、低空飛行による鳥瞰、俯瞰視点からの計測も可能となるため、従来は危険がともない困難だった海岸線や岩盤斜面、複雑な形状の斜面はもちろん、地震、洪水、地滑り、土砂崩落、火山噴火などによる被災現場などの計測も安全に行える。
 移動しながら計測できるため、測量にかかる作業日数は短縮され、施工準備段階での時間とコストは大幅に削減できる。しかも、レーザースキャナーによる計測であることから夜間作業も可能で、通行量の多い幹線道路の渋滞箇所なども、通行止め措置をともなわずに作業を進めることが可能だ。


▲ドーム改修工事 改修前 ▲ドーム改修工事 改修後

◆目的・用途に応じてデータの処理・加工も自由自在に
 こうして得られる3次元データは、簡略化した2次元データへの変換も可能で、さらには3次元CADデータや3次元モデル形状データへの変換も可能であるため、断面図や管理図の作成ばかりでなく、商用プレゼンテーションのためのCG作成など、幅広く応用することもできる。
 また施工後にもレーザー計測し、当初の3次元データと比較すれば、例えばトンネル施工における覆工厚や、道路、地盤などの切土、盛土の土量など、表面や外見からは見えない内部状況を精確に算出できるため、施工後の構造物の出来形などを正しく確認できる。これにより施工中の施工管理だけでなく、施工後の工事検査においても有力な検査資料として活用でき、品確法に対応できるとともに、施工者にとっては工事成績評定点の向上と総合評価の向上も期待できる。
 もちろん、完工施設の維持管理においても、定期的なレーザー計測を行えば、浸食、亀裂、剥離などの劣化状況を確認でき、適切なメンテナンスが行えるため、建設行政において今後の重要テーマとなる公共施設のストック(アセット)マネージメントにおいても欠かすことはできない。
 そうしたデータの取得とともに、基礎的な解析と、顧客ニーズに適したデータの適切な取捨選択といった処理・加工は、高度に専門的な技術と知識を要するため、同社では移動体搭載型と地上据置型の2種類のレーザースキャナーを操作するスタッフと、3次元データの解析編集ソフトを専門に運用するためのチームを組織しており、ユーザーの目的・用途に的確に応えられる体制を確立している。すでに道内の建設現場で導入され始めており、その精度と使いやすさから本州企業からの問い合わせも来ている。

▲車両による計測状況 ▲レーザー計測3次元データ トンネル断面の計測

◆危険な山間部の除雪作業の安全度向上に貢献
 現在、北見工業大学では、世界遺産として認定された知床への重要な観光アクセス道路となる知床横断道路の通年通行実現のため、新たな除雪システムの確立に向けての研究が進められているが、積雪量や地面の地形、埋設物の形状などを精確に計測する必要から、同社のシステムが注目され共同研究が行われた。
 積雪寒冷の豪雪地帯である北海道は、特に山間部での除雪作業は常に作業員の生命が危険に晒されるため、積雪状況と地形についての正確な把握が欠かせない。ところが、現状では作業員の経験と勘に依存しているのが実態で、熟練した除雪機オペレーターの不足が深刻化な問題となっている。このため、同社としてはこの分野への導入促進にも力を入れていく方針だ。



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