建設グラフインターネットダイジェスト

〈建設グラフ2009年12月号〉

技術・製品ニュース

石膏粉とホタテ貝殻を活用した自然由来重金属汚染土の不溶化剤

――現地発生汚染土を建設資材として有効利用する安全な不溶化処理技術

株式会社 イーエス総合研究所


▲不溶化剤添加
 平成15年2月に土壌汚染対策法が施行され、重金属類の調査方法や基準値、汚染土壌の措置について法的な規制を受けることとなった。北海道には重金属、特にヒ素を含む海成泥岩類や火山岩類等が広く分布し、公共工事においても自然由来の重金属汚染土壌に遭遇する事例が多く、経済性・確実性・安全性のバランスがとれた対策立案が課題となっている。重金属汚染対策方法には、掘削除去(汚染土を採掘除去後、処分場で処理する方法)・封じ込め処理(遮水シートで汚染土を封じ込める方法)・不溶化処理等が行われてきたが、その中でも経済性・確実性・安全性のバランスが取れ注目されるのが(株)イーエス総合研究所(常松哲代表取締役・農学博士)の開発した石膏粉とホタテ貝殻を主成分にした「ヒ素汚染土壌不溶化剤(RE-1)」の不溶化処理技術である。

▲原子吸光 光度計 化学分析

◆不溶化処理とは
 不溶化処理とは汚染物質である重金属が溶出する可能性のある汚染土に不溶化剤を混合し、化学反応によって重金属を難溶性の形態に変える処理法で、不溶化処理された後の土は盛土材などの建設資材として建設発生土の有効利用につながる。
 不溶化剤としては、セメント系固化材や鉄系、硫化物系、鉱物系、リン酸系、樹脂系、チタン系、セリウム系、マグネシウム系、カルシウム系など様々な種類があるが、選定においては対象元素の化学形態、pH、酸化還元電位、共存イオンの種類、土のイオン交換容量、有機物含有量などを十分に考慮する必要がある。
 ところが、セメント系固化材は安価(材料)ではあるものの、六価クロムが溶出する恐れがあるほか、pHの上昇、それに伴う鉛などの重金属の溶出が危惧される。
 鉄系、硫化物系は不安定な化合物であるため、pHなどの適用範囲に制約があり、取扱いが難しい。鉱物系のような固体の不溶化剤は、混合にばらつきが生じやすく、移動性に乏しいことから、溶出した汚染水が不溶化剤に接触しなければ効果を発揮しない。リン酸系、樹脂系、硫化物系、チタン系、セリウム系、マグネシウム系は、高価であるために高コストとなることが避けられない。
 そこで、潟Cーエス総合研究所は、自然界に豊富に存在する物質に着眼し、pHが中性で有害物質を含まず、溶解性と移動性を特徴とするカルシウム系の石膏粉とホタテ貝殻を主成分に、将来的に環境リスクが少なく、リサイクル促進にもつながる安価な不溶化剤(RE-1)の開発に成功した。

◆新技術の概要
 この技術は、トンネル・河川・道路・ダムなどの建設現場で発生する自然由来のヒ素等重金属汚染土を、石膏粉とホタテ貝殻を主成分としたカルシウム系不溶化剤で処理するものである。
 汚染土にこの不溶化剤(溶解性)を添加すると、溶解したカルシウムイオンが汚染土粒子表面に吸着して高濃度のカルシウム層が形成され、その層が効果的な反応層となって効率的に汚染土粒子からの重金属の溶出を抑制する。

▲不溶化性能試験結果 ▲不溶化メカニズム

▲ヒ素汚染土壌不溶化剤(RE-1)

◆新技術の特徴
 不溶化剤(RE-1)の品質は、生産と施工の各工程で段階確認試験を行うため、十分な性能を確保できる。
 性状は粉体状であるため施工性が高く、待受け工法、混合工法、層状工法、吹付け工法など、汚染土の性状並び、現場状況に合わせて多様な施工が可能である。
 また、ヒ素等重金属との反応性が良く、少量の添加量で不溶化効果を発揮するため、在来工法(セメント系固化剤)に比べても施工トータルコストを抑えることができる。しかも速効性があり、効果発揮までの時間が短いために工程を短縮できる。
 自然界に存在する石膏とホタテ貝殻を主成分としているため、将来的な環境リスクが少なく、不溶化処理した汚染土は盛土材などの建設資材として建設発生土を有効利用できるなど、リサイクル促進につながる。
 処理する汚染土が酸性もしくはアルカリ性であっても、この不溶化剤(RE-1)を添加することでpHが中性に近づくため、不溶化処理後に重金属が再溶出する心配はなく、将来的に安定性が持続する。不溶化処理後も土としての性状がそのままの状態を保つため、再利用する際の施工において取扱いが容易である。

▲リテラ混合 ▲撹拌機付バックホウ混合 ▲吹付け施工

◆NETISの厳格な審査を経て登録と検証・評価
 この技術は国土交通省の厳しい審査を経て、同省が所管するNETIS(新技術情報提供システム)に登録され、現場試行調査を実施するとともに、北海道立工業試験場並びに、秋田大学工学部資源学部と潟Cーエス総合研究所による共同研究で検証を行った結果、高い評価を得て、北海道建設部技術管理課の新技術情報提供システムにも登録されている。
 自然由来の重金属土壌汚染対策は国内外で共通の重要課題であり、建設現場では合理的であるとともに高効率的な処理工法が求められている情勢から、この新技術への関心が高まっている。今後、各地の建設現場での需要に対応できるよう、生産体制は地場製造工場とタイアップすることで生産ラインが確保されており、安定供給体制は万全である。
 潟Cーエス総合研究所は、昭和45年の創立以来、常松社長を中心に社員による多くの研究・学会発表と、諸官庁、公益団体、民間企業より土質試験・環境調査・化学分析等の豊富な業務実績を背景に、土壌汚染調査、化学分析、処理方法提案、そして処理後のモニタリングまで、総合コンサルティング業務を含めたサービスを独自に提供してきたが、この新技術ヒ素等汚染土壌不溶化剤(RE-1)による不溶化処理技術についても幅広い普及・定着を目指して技術提案していく方針である。


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