建設グラフインターネットダイジェスト

〈建設グラフ2009年11月号〉

寄稿

岐阜県立多治見病院新西棟(仮称)建設工事について

岐阜県都市建築部公共建築住宅課


▲南からの外観 ▲西側からの外観


はじめに
 岐阜県立多治見病院は、昭和14年に設立されて以来、東濃地域の中核病院として「ガン治療」をはじめ高度な医療の提供を続けており、地域にとって不可欠の存在となっている。
 しかしながら、病棟については昭和43年度及び昭和45年度に完成したもので一部は平成2年度に建替られたが、中核病院に見合った医療サービスや療養環境が提供できなくなってきていた。
 このため、地域住民に信頼される「地域基幹病院」及び「高度専門病院」にふさわしい医療サービスの提供ができる「21世紀型病棟」の整備を目指したものである。

▲アトリウムの内部


新病棟整備の理念
 当病院は、地域住民に信頼される「基幹病院」「高度専門病院」であると共に、患者中心の医療ができることのみならず、働く職員、地域住民にとって満足できる施設であることが必須条件である。
 このため、施設整備の方針として、下記の6項目を整備方針とした。

 @ユニバーサルデザイン、地球環境への配慮など「やさしさ」の追求
 A患者のプライバシーや生活の質など「快適さ」の追求
 Bわかりやすい配置・動線など「便利さ」の追求
 C地震など災害への対策、院内感染の防止など「安全性」の追求
 D各部門の関連性を考慮した部門配置、メンテナンスの容易さなど「効率性」の追求
 E技術、機器の変化に柔軟に対応できる施設であることなど「柔軟性」の追求

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設計上配慮したポイント
配置・土地利用計画
 現在敷地での建設のため既設病棟を使用しながらの新病棟建設である。ただでも狭隘な場所であり現在も駐車場不足に悩まされているため、病棟を高層化することにより完成後、現在の病棟を解体し将来400台の駐車スペースを確保する。
 また、敷地内にできるだけ多くの緑地帯を設けることとした。
病室計画
 入院患者の個別環境の向上のため一看護単位を42床とし、個室率の高さを50%にまで高めた。1室の最大床数は4床とし、4床室においても、廊下側のベッドにも窓を設け患者自らに窓を開閉できるような配慮をしている。4床室の広さも病室出入り口から患者の様子が見やすいベッド配置とした。
 全ての病室はベッドサイドでの介護や処置行為にも配慮した十分なスペースの確保を念頭に置き、患者専用ロッカーを配した。また、病棟のいたるところに、患者が家族と共有できる時間を過ごせるために、食事や談話のためのスペース(談話室)を配置した。病室に付設されているトイレは、全て車椅子での利用が可能としたスペースを確保した。
 病棟の廊下の腰壁には「東濃檜の間伐材」と廊下の照明は「美濃和紙を使ったブラケット照明」とし、地場産材を生かした優しい空間づくりを目指している。
構造計画
 本建物は、医療施設であることから、国土交通省編「官庁施設の総合耐震計画基準及び同解説」によれば最高度の構造的安全性が求められる。このため、巨大地震の際にも人命の安全確保のみならず、病院機能維持の確保が大きな課題であり、現状で最も優れた耐震性能が期待できる免震構造を採用することとした。
 東濃地域には活断層が数多く存在しており、現在までに得られた知見から、そのうちの最大の地震動を予想しこれに耐えうる設計とした。
 主体は鉄骨造で基本スパンは長辺方向10.5m、短辺方向は7.5〜9.1とし、柱は、剛性の確保のためCFT構造としている。
 基礎はGL-4.0m以深に砂礫層が存在しているため、この層を支持層とする直接基礎とした。 設備計画
 エネルギーの効率的利用を図るため、コジェネレーションシステムを導入。発電効率40%、総合効率70%以上を目指している。
 受電設備については、フェイルセーフの観点から6,600Vの2回線引き込みとし、それぞれ別の変電所からの受電としている。
 照明器具は、インバータ等を使用したエネルギー効率の高い器具を採用し、時間帯によい適切な照度を確保するとともに、昼間は昼光を可能な限り利用するよう配慮した。また、トイレ等個室には消し忘れ防止のため、センサーを設置した。
 冷温水管、冷却水管など配管材は、耐久性の高いステンレス鋼管を使用するなど長寿命化を図ることでライフサイクルコストの低減を図るとともに、維持管理の過程で特殊な廃棄物がでないような機器資材の選定を行った。


建物概要 
名  称:岐阜県立多治見病院新西棟(仮称)
所 在 地:多治見市前畑町5丁目161番地
用途地域:準工業地域
敷地面積:29,071u
構造・規模:地上8階 地下1階(鉄骨造、免震構造)
建築面積:4,661.889u(病棟部分)
延べ面積:26,753.50u(病棟部分)
     ※他に既設との渡り廊下5棟 鉄骨造 延べ面積 314u あり
病 床 数:460床
工  期:平成20年3月25日〜平成22年1月30日

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