建設グラフインターネットダイジェスト

〈建設グラフ2009年11月号〉

寄稿シリーズ

前年度比5.6%増の事業予算で
道都を取り巻く周辺インフラを整備

「土木の最前線から」〜札幌土木現業所編


●美唄浦臼線美浦大橋新設(上部工)(国債)工事 豊松吉・菱中・沢田特定建設工事共同企業体 所長 中村 秀敏氏
●当別ダム建設事業本体工工事 鹿島・竹中土木・岩倉特定建設工事共同企業体 所長 山村 法男氏
●当別浜益港線道路改築(翌債)工事2工区(道州) 北土建設株式会社 現場代理人 谷村 昌信氏
●待合川砂防工事(国債) 株式会社 石山組 現場代理人 千葉 秀隆氏
●勇・岸本・草別特定建設工事共同企業体 所長 工藤 隆治氏


▲美唄浦臼線美浦大橋新設(上部工) 架設状況
 札幌土木現業所は、政令指定都市である道都・札幌をふくむ道央圏を所管している。道内唯一の国際空港である新千歳空港や、石狩湾新港などを擁する北海道の政治・経済の中心地であるとともに、周辺には有数の稲作地帯と、有力な観光資源もあり、地域住民の生活インフラのみならず、それらの産業・資源を生かして北海道経済を牽引していくための産業インフラの完成も望まれている。
 そうした地域の要請に応え、今年度当初予算では368億円の公共事業費が配分され、前年度より5.6%の増加となった。これによって、道路、河川、漁港など195カ所で社会資本整備が進められている。それらのうち、当別ダム建設事業、 当別浜益港線道路改築事業、美唄浦臼線美浦大橋新設事業、栗沢南幌線清幌橋架換事業などについて、施工の最前線に立つ現場代理人諸氏の寄稿を通じて紹介する。





川で隔たれた美唄・浦臼の交流の架け橋――クローラクレーンによるベント工法で施工

美唄浦臼線美浦大橋新設(上部工)(国債)工事 豊松吉・菱中・沢田特定建設工事共同企業体 所長 中村 秀敏氏


▲工事全景

 豊松吉工業では、本年現在、札幌土木現業所管内で4本の鋼橋架設を進めているところですが、中でも、美浦大橋は美唄市と空知管内浦臼町の間に流れる石狩川に架かる長大橋であり、大規模な橋梁架設工事です。  架橋地点には、現在も往年の歴史を語る渡船が運航されており、美唄市と浦臼町を結ぶ重要な交通手段として、これまで地域の生活を支えてきたそうです。
 近年、自動車による移動が常態化し、道路を利用する事が多くなりましたが、この地域で近隣の橋を利用するには、8km上流の奈井江大橋か、14km下流の月形大橋まで迂回しなければならず、日常生活の面で不便な状況にある一方で、架橋により空知中核工業団地への企業立地の促進や、北海道縦貫自動車道を利用した農産物の輸送時間の短縮が図られるなど、地域経済への波及効果が大きい事から、美唄市と浦臼町にとって長年の夢となっていました。
 そうした背景や期待を受けて、平成13年度に北海道札幌土木現業所が美浦大橋新設工事に着手しました。  橋梁の規模は、全長L=822.6m、構造形式は主径間がニールセンローゼ桁、左右の側径間が、3径間連続鋼床版箱桁で構成されています。
 当社では、平成16年度に浦臼町側のP5橋脚〜A2橋台の鋼床版箱桁部分の上部工195mを施工しましたが、本年度も、美唄市側のA1橋台〜P3橋脚の鋼床版箱桁部分の上部工324mの施工にたずさわることができました。

▲架設状況1 ▲架設状況2

 施工においては、クローラクレーンによるベント工法を採用しており、ベント9基を設置しました。桁高が3.7mと高いことから、桁が上下にも分割しており、217ブロックに及ぶ桁材を現地に納入して、吊り上げ可能な単位に組立てた橋桁のブロックをベントで支持しながら順次架けて行きます。
 橋桁が架け終わると、主桁の接合部をボルトにより締付け、鋼床版上面(デッキプレート)部を機械溶接(サブマージー)・手動溶接(半自動)により接合し、最後に周囲の景観に映える黄色を基調とした仕上げ塗装・落橋防止装置などを施工して、本工事は完了となります。
 この地区は軟弱地盤層で、周辺道路の状態も悪いことから、重車両利用時の振動等には十分配慮し、安全第一・品質重視を念頭に現在、工事を進めているところです。
 当社としては、企業体である菱中建設梶E沢田建設鰍ニともに、本工事を通じて、地域の豊かな未来に貢献していきたいと考えています。

美浦大橋の概要
工 事 名:美唄浦臼線美浦大橋新設(上部工)(国債)工事
橋 梁 名:美浦大橋(みうらおおはし)
路 線 名:一般道道 美唄浦臼線
道路規格:補助幹線・B交通
橋  長:822.6m
支 間 長:3@108.00m+196.60m+3@97.5m
有効幅員:13.0m(車道8.5m + 歩道 3.5m)
上部構造形式:(A橋) 3径間連続鋼床版箱桁 A1〜P3
        (B橋)ニールセンローゼ桁   P3〜P4
       (C橋) 3径間連続鋼床版箱桁 P4〜A2
工事期間:平成21年3月27日〜平成22年2月26日


↑上に戻る





当別ダム建設工事概要

当別ダム建設事業本体工工事 鹿島・竹中土木・岩倉特定建設工事共同企業体 所長 山村 法男氏


▲堤体右岸から見た左岸全景

はじめに
 当別ダムは、当別川総合開発事業の一環として、石狩川水系当別川の当別町字青山十万坪地先に多目的ダムとして建設中の国内最初の台形CSGダムである。台形CSGダムは台形ダムとCSG工法の両方のメリットを併せ持つダムであり、ダム建設における3つの合理化(設計・施工・材料)を同時に達成する新しい型式のダムとして考案されたものである。
 CSG母材(骨材)は、堤体基礎掘削および河床砂榛を使用する事から、従来のコンクリートダムと比べ、自然環境への影響を最小限に出来るほか、骨材製造設備を必要としない等のメリットがある。
 本体工事は平成20年10月に受注後、冬期間を通して本体基礎掘削・各種仮設備設営・試験施工を行い、平成21年5月からコンクリートの打設、6月からCSGの打設を開始したところである。

▲CSG製造設備全景

工事概要
 当別ダムの諸元は、堤高52m、堤頂長432m、堤体積約81万m3で、洪水調節、流水の正常な機能の維持、かんがい用水および水道水の供給を目的としている。
 全体工期は平成24年12月までの51ヶ月であるが、ダム本体打設は平成22年10月までに終える必要があり、冬期間を除き実質11ケ月で完了させる予定である。
 当工事の特徴としては、通常のコンクリートダムと比べて本体打設速度が速いことが挙げられる。全打設面を2〜3分割施工とし、CSG打設・コンクリート打設・プレキャスト型枠据付を交互に施工する事となり、綿密な工程管理・作業場所調整が求められる。
 高速施工に対応するため、CSG打設エリアでは材料敷均し・転圧管理にIT土工管理システムを採用しているほか、ダム上下流型枠および通廊はプレキャスト型枠を使用して合理化を図っている。また、材料運搬は重ダンプ(55t)を使用して作業効率の向上と、狭い作業エリアでの車両台数削減により安全性の向上を図っている。

▲CSG打設状況(重ダンプ+28tブルドーザ) ▲上下流PC型枠据付状況

おわりに
 現場は道都札幌から1時間程度のところに位置するため、工事開始当初から見学者が多数訪れており、特に地元小・中学校の課外授業としての体験学習の場にも利用して頂いている。
 施工業者として、現場見学会の実施、公道一斉清掃、地域イベントヘの参加等を通して、地域とのコミュニケーションを更に図っていくつもりである。
 今後のダム工事は平成22年10月に本体打設を終え、引き続き取水・放流設備、河道整備、仮排水路トンネル閉塞工と進めて、平成24年3月から試験湛水を開始する予定であり、安全管理・工程遵守を最優先として鋭意努力している。



↑上に戻る





自然に細心の注意と配慮で施工

当別浜益港線道路改築(翌債)工事2工区(道州) 北土建設株式会社 現場代理人 谷村 昌信氏


 当現場は、当別町青山の山々に囲まれた位置にあり、周辺環境の保全に充分配慮し施工を行うため、低騒音建設機械の使用・工事区域以外への立入禁止措置・濁水処理用の沈殿槽の設置等を行っている。また、前年度にチュウヒ(ワシタカ類)の営巣が確認されているため、施工前に営巣の確認、及びエゾサンショウウオ、ザリガニ、ヤマシャクヤク(植物)等の貴重種の保護を行いながら施工に当っている。
 当現場の切土箇所の土質は、表層に崖錐堆積物、下層に当別層の細粒砂岩が分布している。この土砂を流用し路体盛土を行っているが、シルト分が多く、砂岩は風化も激しいため、作業終了時の敷均し、締固めの徹底と横断勾配を付けて滞水防止を図りながら施工を行なっている。
 盛土箇所の基礎地盤は、表層部から厚さ1.0m〜4.0mは軟弱な砂質粘性土層のため、基礎地盤を破壊しないように緩速載荷工法で盛土を行っている(盛土速度が10cm/日以下)。
 施工箇所は、例年11月上旬頃には積雪となるため、早期土工事終了を目指し、複数路の工事用道路を造成し、ダンプトラックの作業効率を上げ工期短縮を図っている。
 こうした作業の傍で、当別ダム発注工事の安全連絡協議会で行う植樹会、道路清掃、公道での旗の波運動、祭り支援等に参加し地域貢献に努めている。


工 事 名:当別浜益港線道路改築(翌債)工事2工区(道州)
発 注 者:北海道石狩支庁札幌土木現業所
請 負 者:北土建設株式会社
工  期:平成21年3月27日〜平成22年2月1日
請負金額:251,422,500円 (税込み)
工事概要:工事延長L=706.0m
 ・土砂掘削  V=92,700m3 軟岩掘削 V=35,600m3、路体盛土  V=58,000m3
 ・切土法面整形  A=12,400u 盛土法面整形 A=700u
 ・管渠工  φ600mmL=32m  U型側溝工 L=2,050m、路床排水  L= 469m  遮断排水 L=500m
 ・車道下層路盤工 A=5,760u  車道凍上抑制層 A=5,470u
 ・逆T式橋台工  N= 2基


↑上に戻る





水が“待ち合って”増水 待合川砂防工事(国債)

待合川砂防工事(国債) 株式会社 石山組 現場代理人 千葉 秀隆氏


 本工事箇所は深川市音江町豊泉で、国道12号線「深川道の駅」から札幌に1kmの地点にあり、国道12号線と待合川が直交している。
 工事区域は国道を挟みL=305mで、掘削量は7,000u、護岸工2,213u、落差工4基帯工1基、排水工3基及びその他工事であり、工期は平成21年3月27日〜平成21年12月16日となっている。
 待合川は、音江山と沖里河山(いずれも800m級)の間の深い沢の水を集め流れ出る様より「待ち合い川」と呼ばれる由来がある。
 急峻な地形で、雨が降ると旧来その名のとおり急激に増水し、河岸浸食など土砂災害により周辺農地に被害が発生しており、本工事はこれらの防止を目的とする砂防事業である。
 田園地帯であることから自然環境に配慮し、現地発生の自然石を利用して落差工法面にそれを配列した護岸工としている。

▲上流 落差工(垂直壁型枠工) ▲下流 落差工 石張り


↑上に戻る





清幌橋架換工事概要

勇・岸本・草別特定建設工事共同企業体 所長 工藤 隆治氏


▲完成予想CG


一般道道栗沢南幌線及び清幌橋の歴史
 一般道道栗沢南幌線は、南空知の岩見沢市栗沢町と南幌町を結ぶ延長10.5kmの路線です。
 この路線は、その両町相互の物流・通勤・通学における生命線であるともに、岩見沢市中心部から北広島市にわたる地域の交通ネットワーク上で重要な路線となっています。
 この一般道道栗沢南幌線において、両町の中間部を流れる夕張川に架かるのが清幌橋です。
 現在の清幌橋は、昭和10年に完成した橋長529mの橋梁で、現存する道道の長大橋としては最も古く、完成当時は大変立派で、付近の義経神社境内や、我が国の河川工事としては最初の床留め施設とともに南幌町唯一の名所となっていたそうです。また、戦時中は鋼材転用のため、南幌側160mほどが解体され、木橋にて通行を確保、昭和36年に鋼橋として復旧し現在に至っています。

架換工事の開始
 完成後70年にもおよぶ老朽化や、橋両端取付は屈曲部となっていたため、特に冬季に安全走行確保が課題であり、これを直線化とすると共に歩道を設置し、通行車両の安全はもとより歩行者や自転車の安全をも確保するために架換工事が平成14年より開始されました。

工事施工
 本工事は、南幌側3径間の架設等上部工事および両岸の取付道路工事の施工であり、桁架設時の450tクレーン設置箇所の地耐力確保等の困難を克服し、平成21年11月下旬の供用開始を予定しています。

おわりに
 当作業所は『見て見ぬふりは不親切 互いに声かけ危険ゼロ』を安全スローガンとし、みんなで「話し合い」「考え」「分かり合い」、危険に対する一人ひとりの感受性を高め、危険を感じたらすぐに対処することを心がけ、今までの経験から得た重要な教訓をもとに現場全従業員が一丸となり、知恵と工夫で皆が安心して働ける職場を目指して作業を進めています。


橋梁諸元
橋  長:692.0m
有効幅員:12.0m(車道8.5m+歩道3.5m)
支 間 割:A径間、C径間51.6m+51.8m+51.6m、B径間109.7m+156.0m+109.7m
上部工形式:3径間連続鈑桁+3径間連続鋼床版箱桁+3径間連続鈑桁
下部工形式:A1:逆T式橋台(鋼管杭φ800)
        A2:逆T式橋台(場所打ち杭φ1500)
        P1〜P3、P6〜P8:小判型壁式橋脚(鋼管杭φ800)
        P4・P5:小判型壁式橋脚(鋼管矢板φ1000)


↑上に戻る










HOME