建設グラフインターネットダイジェスト

〈建設グラフ2009年9月号〉

interview

伊達市の芸術文化の振興に取り組む

――建設業は文字どおり「地産地消」

社団法人 室蘭建設業協会 副会長
株式会社 勝田組 代表取締役
菊谷 達夫氏

菊谷 達夫 きくや・たつお
昭和23年8月1日生まれ 伊達市出身
昭和44年   日本大学経済学部 中退
昭和44年7月 株式会社 勝田組 入社
昭和47年7月 株式会社 勝田組 代表取締役 就任
株式会社 勝田組
伊達市舟岡町182番地
TEL 0142-23-2355

 企業活動を通して社会貢献をすることは、いまや企業経営者の社会的使命とまで言われるようになった。行政が個々の企業を評価する基準の一つが社会貢献で、財務体質の評価が高いだけでは、評価ポイントが下がる時代だ。気候が温暖で「北海道の湘南」とも言われてきた伊達市は、道外からの移住のメッカになりつつある。市街地のインフラ整備が進み、文化施設なども整っている。メセナ協会、アートビレッジ実行委員会等の市民活動も活発だ。そんな文化活動を支えている市民の1人に、建設会社の現役社長がいる。勝田組の菊谷達夫社長で、菊谷秀吉伊達市長の実兄でもある。
――会社の概要からお聞かせください
菊谷 会社の設立は昭和38年です。昭和23年生まれなので、小学生の頃です。まさか父親の会社を継ごうとは考えてもいませんでした。会社とはいっても、事務室は四畳半程度のものでしたが。  伊達はもとから一次産業が基幹産業ですが、明治時代に人口が11,000人を記録し、室蘭市より多かったのです。商業都市としての機能を持っていたので、当時は後志からも買物に来ていたそうです。現在は37,000人で、世帯数は17,600世帯です。  私は団塊の世代で、学生運動の盛んな時期に大学が封鎖され、1年間授業が受けられない状態が続く中、昭和47年に亡くなった父親が、病に倒れたこともあって、大学を中退し伊達に戻りました。それまでは会社を継ごうという気持ちはありませんでした。  伊達に戻った当時、技術者は4、5人で、列島改造論により公共投資に風が吹いていた時代ですから、それなりに仕事が回っていました。100%土木1本で、道路整備、農業土木が主力でした。
――社長暦は管内でも長いほうでは
菊谷 父が亡くなったオイルショックの時に、社長に就任しました。若くして社長になったため、これまで公職が多く、40代で商工会議所の副会頭を務めました。その他、文化団体や体育協会の会長も歴任していました。室蘭建設業協会の副会長は今年就任したばかりですが、建設業協会は自分が所属する団体でもあり、業界・社員のために一生懸命に務めを果たすつもりです。
――農業など他産業からの就労はありましたか
菊谷 ハウス栽培は今ほど盛んでなかったので、収穫時期が過ぎると建設産業に従事するケースが多かったです。漁師の方はいなかったと思います。
▲昭和新山ガラス館
――伊達は道外からの移住者が多く、街並みも整備されていますね
菊谷 一見きれいですが、体育施設などの公共施設はかなり老朽化しているので、建て替えの時期が迫っています。  ただ、伊達の特色として文化度はかなり高いと言えます。カルチャーセンターの利用率は30万人都市並みです。カルチャーセンターのオープンと同時期に「伊達メセナ協会」が発足、初年度から最近まで私が副会長を務め、現在は相談役です。  また、美術年鑑のトップ10に入るほど著名な2人の画家が伊達で創作活動をしています。その支援団体として「だて噴火湾アートビレッジ実行委員会」を立ち上げ、その会長職を務めています。  絵にはいい音楽を聴き、いい文学に触れることが大切といわれますが、伊達はまさにハイカルチャーな町でもあります。北海道ジュニア美術セミナー、皇后陛下にピアノのご指導をされた岩崎淑さんを招いた公開練習のマスタークラス、詩人の谷川俊太郎の朗読など芸術文化に取り組んでいます。子どもたちを含め、絵や音楽、文学を通して想像力や豊かな感性を学んでほしいと願っています。1泊2日の「画伯にチャレンジ」美術セミナーには全道から120人の小中高生が集まりました。
――本業においては、最近の経済状況はかつてない厳しさでしょう
菊谷 20数年社長を務めていて、いままでに経験したことのない厳しさです。売上だけはどうにもならないので、いかに社内経費を抑えるかです。  しかし、事故を起こしたら会社の存続に関わるので、安全対策だけは手は抜けません。
▲社屋
――入札制度についてはどう考えていますか
菊谷 本来は100%の落札率が適正価格なのですが、落札率が高いと「談合」と疑われ、低価格でさえあれば良しとする風潮があります。しかしながら、企業が過剰な価格競争で低価格入札を繰り返した結果、デフレスパイラルを招き、建設産業は年々、収益性を低めて所得を下げてきました。これがひいては北海道全体の所得低下に繋がり、本州との所得格差を広げていると言えます。  サブプライムローンやリーマンショックに端を発した世界金融危機による今日の経済危機においては、真に必要なのは内需拡大です。そのためには、北海道農業の生産力を高める農業基盤整備や、農産物の流通力を高める道路など、北海道の経済力強化に貢献する社会資本整備が有効です。しかも、これにともなって景気浮揚効果や雇用効果も生じます。建設業はそうした波及効果をもたらす産業であり、地域の商社を通じて地元の資材を調達するなど、地産地消によって地域での資金循環を生み出す業界です。したがって、インフラ整備には十分に予算配分すべきであり、入札もただ安ければ良しとする短絡的な契約は見直すべきでしょう。  伊達は景観に恵まれている観光地を抱えています。昭和新山、有珠山、羊蹄山、ニセコ等変化に富んだ山々や洞爺湖、支笏湖など、これらの観光資源を生かす上でも整備の余地があります。
――建設協会の会員企業の動向は
菊谷 基準を見直した結果、会員は増えています。会員企業が減ると協会の運営自体がますます厳しくなりますから、副会長として協会の抱えている課題等について会長に進言できるよう努めたいと考えています。
――今後の存続に向けて、異業種への参入についてはどのようにお考えですか
菊谷 これだけ仕事が減ると、異業種への参入を本格的に検討しなければなりません。家族構成や住宅ローンなど社員の生活実態を知っているだけに、地方の企業ほど簡単にリストラはできません。  しかし、現行の道の補助制度では容易に参入できません。社員の給与分だけでも稼げればいいところです。5年ほど前に観光事業に参画したこともありますが、厳しい状況です。農業についても社員と共に勉強していますが、農業経営はなかなか難しいですね。  異業種へ参入し成功するには、最低でも3年間はかかります。計画内容の審査基準を厳しくしてもいいから、道のソフトランディング費用をもっと手厚くしてもらいたいです。他企業との合併も、ちろん考えてもいますが、なかなか条件が難しい。特にオーナー企業同士は難しい面があります。合併には行政指導も必要かもしれません。
会社概要
創  業:昭和12年8月
会社設立:昭和38年12月
資本金:48,000千円
事業内容:土木工事業
許可番号:北海道知事許可(特・般-18)胆第60号
年月日:平成19年1月5日
許可業種:特定 土木工事業・とび土工工事業・舗装工事業
     一般 建築工事業・管工事業
IS09001:登録番号:RQ178(財団法人建材試験センター)
従業員:25名(内技術者19名)
     1級土木施工管理技士18名
     1級建築施工管理技士1名
受注高:10億
受賞歴:
昭和56年 北海道土木部優秀建設業者知事表彰受賞
昭和57年 北海道林務部森林土木優良業者知事表彰受賞
平成 9年 第17回北海道開発局優良工事施工業者局長表彰受賞
平成14年 室蘭開発建設部優良施工業者部長表彰受賞

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