建設グラフインターネットダイジェスト

〈建設グラフ2009年8月号〉

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東北北陸を結ぶ日本海沿岸東北自動車道

――秋田県北部の産業・経済の発展を支援

能代河川国道事務所 日本海沿岸東北自動車道・一般国道7号鷹巣大館道路


 能代河川国道事務所は秋田県北部を所管しており、昭和11年に県北部の米代川改修のため、旧内務省仙台土木出張所の「米代川改修事務所」として、能代港町(現能代市)に設置されたのが始まりで、後に幾多の変遷を経て現体制となり、米代川の改修事業や管理、日本海沿岸東北自動車道、一般国道7号の改築事業と管理務を担当している。



日本海沿岸東北自動車道
▲日本海沿岸東北自動車道 大館北〜小坂(新直轄) 平成21年5月撮影

 日本海沿岸東北自動車道は、新潟県新潟市を起点に、東北縦貫自動車道(弘前線)と連結し、青森県青森市に至る延長約322kmの高規格幹線道路で、新潟・山形・秋田・青森の4県を短時間で結ぶ。広域的な道路であるため、道路整備者は北陸地方整備局の新潟国道事務所、羽越河川国道事務所、東北地方整備局酒田河川国道事務所、秋田河川国道事務所、能代河川国道事務所にまたがる。
 この路線によって、関東以北の日本海側に、新たな連携や交流による地域づくりの可能性が広がり、市街地の交通混雑の緩和や地域の防災ルートも確保されるなど、多角的な整備効果が期待されている。また、高速交通ネットワークによる広域観光ルートも形成され、秋田港・能代港等へのアクセスが向上し、大館能代空港のカバー圏拡大と東北道の迂回路として代替ルートの機能が期待される。

▲大茂内第二トンネル坑口 ▲雪沢第一トンネル工事(坑口写真)

 能代河川国道事務所は、このうち大館北〜小坂間の14km区間について、平成15年度から新直轄方式として整備に当たっている。現在の事業の見所は(仮称)大茂内第二トンネルと雪沢第一トンネルの施工で、大茂内第二トンネルは、大館市商人留〜同市雪沢地内の全長2,988mに及び、大館北〜小坂間の中でも最大のトンネルだ。
 掘削工法はNATM(ナトム)工法で、岩盤を掘削機械や発破によって掘削した直後に、周囲にコンクリートを吹き付けて、ロックボルトを打ちながら岩盤を安定させて進む。発生土はタイヤ方式で運搬する。
 施工区間周辺には世界的に有名な黒鉱鉱床や、市民が利用する温泉が多数分布しており、古くから火山性のミネラルが供給されているが、掘削工事によって、一部の鉱山跡地に見られる重金属などの流出が懸念されることから、有識者および専門技術者からなる委員会を設け対策を検討し、トンネル掘削土は「土壌汚染対策法」に準じて適切に処理されている。
 一方、雪沢第一トンネルは延長が2,553mで、大茂内第二トンネルに次いで2番目の規模となる。掘削は大茂内第二トンネルと同様にNATM工法と発破によって掘削を進めており、坑内で発生した土砂はTC(トラックコンテナ)により、搬出されるシステムを採用している。




一般国道7号鷹巣大館道路
▲鷹巣大館道路延伸部(あきた北空港)付近

 一般国道7号は、新潟市から山形県と秋田県を経由して青森市へ至る約520kmの国道だが、市街部では交通混雑が発生している。特に、秋田県北部は、三次救急医療施設の60分カバー圏が72%でしかなく、圏域の拡大が重要課題だ。一方、人口の減少、地場産業低迷から、対策として新幹線駅秋田駅や秋田港、大館能代空港などの主要交通施設とのアクセス向上が求められている。また、この路線は災害時の緊急輸送道路であるにも関わらず、道路災害や交通事故などの通行止め時には、大幅な迂回を強いられているため、代替路の確保が急務となっていた。特に、秋田県では災害時の備蓄倉庫を大館能代空港に隣接して整備しているため、平常時の空港の利活用促進だけでなく、緊急時の対応に備えてアクセス条件の向上が必要だ。

▲摩当山トンネル 北秋田側パース

 そこで、能代河川国道事務所は、その代替路として、鷹巣大館道路の建設に着手している。この路線は、延長13.9kmの自動車専用道路で、平成17年度に北秋田市栄〜大館市櫃崎間(延長8.3km)が事業化され、平成19年度には、新たに北秋田市脇神〜栄(延長5.6km)が延伸事業化された。そして現在は、北秋田市栄〜大館市櫃崎間について、用地買収と改良工事に着手する一方、摩当山トンネルにも着手している。
 摩当山トンネル」は、大館市大子内〜北秋田市栄を結ぶ、延長3,336mの長大トンネルで、大館側より2,042.5m、北秋田側より1,293.5mを施工するもので、避難坑が併設されている。
 掘削は他と同様に発破によるNATM工法で施工が進められており、大館側は掘削ずりで大館市大子内〜櫃崎間の路体盛土を行う。

日沿道、鷹巣大館道路整備に貢献します
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