建設グラフインターネットダイジェスト

〈建設グラフ2009年7月号〉

interview

直接高速道路に乗り入れができない道内の各空港

――若手の経営者が集まり「インフラ整備と地域活性化」の政策づくりに取り組む

全 道 み ち ネ ッ ト の 会 会       長
サンエス電気通信株式会社 代表取締役社長
宮田 昌利氏

宮田 昌利 みやた・まさとし
昭和35年4月21日生まれ 釧路市出身
学歴
昭和59年 学習院大学 経済学部 経営学科 卒業
平成16年 小樽商科大学大学院 商学研究科 修士課程 卒業
平成17年 北海道大学農学院 共生基盤学 博士課程 入学
職歴
昭和59年 ベンチャー企業設立 代表取締役
昭和62年 サンエス電気通信(株) 企画開発室長
昭和63年 (株)サンエス・マネジメントシステムズ 代表取締役
平成12年 サンエス電気通信(株) 代表取締役社長
平成19年 (株)光映堂シーエーブイ 代表取締役社長
公職
総務省 電子政府推進委員、NPO法人 札幌ビズカフェ 代表理事
(社)北海道未来総合研究所 理事、(社)北海道IT推進協会 監事
北海道ニュービジネス協議会 副会長、北海道ギガビット協同組合 理事長
北海道 道州制特区提案検討委員会 委員、北海道 まちづくりアドバイザー
北海道の地域とみちをつなぐネットワーク連絡会議(みちネットの会、全道9地域)会長
北海道ITクラスター推進フォーラム 運営委員
釧路根室圏まちとくらしネットワークフォーラム 座長
釧路商工会議所 議員、釧路ITクラスター推進協会 監事
釧路市電気設備事業協会 会長、釧路地域土木電気設備協会 副会長、他
サンエス電気通信株式会社
本社/釧路市星が浦大通1丁目7-1
TEL 0154-51-2924

 釧路市・札幌市(支店)を拠点に全道で事業展開しているサンエス電気通信株式会社は、電気設備工事、通信設備工事を核に風力発電システム等の新エネルギー、省エネや情報通信技術の分野で新基軸を打ち出している。3代目の宮田昌利社長は49歳の働き盛り。本業以外に「北海道の地域とみちをつなぐネットワーク連携会議」、「釧根地域戦略会議」の活動を通じ、北海道のインフラ整備と地域活性化の政策づくりに取り組む。「北海道を豊かにするには、農業がもっと元気になることだ」との思いから、北大農学部の大学院の門を叩いたという驚くべき行動力の持ち主だ。

――会社の生い立ちからお聞かせください
宮田 戦後の昭和22年に祖父が浜中町で電気工事業のサンエス電気商会を創業したのが始まりです。その後、釧路に移り、33年にサンエス電気株式会社として法人化しました。  祖父は10男2女に恵まれ、10人兄弟全員が父親の仕事を手伝っていたそうです。戦後の復興が一段落し、住宅建築の着工件数が伸びていた時代です。40年代に入って各家庭に電話の普及が予想されたため、6男である私の父が42年にサンエス通信を設立しました。私が小学校2年の頃で、当時の父は電話工事で全道を飛び回っていました。  54年には電気と通信が合併して現在のサンエス電気通信株式会社に組織変更しました。わが社は戦後、文字どおり「電気の波」と「通信(電話、携帯、光ファイバー)の波」に乗って順調に社業を発展させてきました。いまは第3の波である「IT(デジタル化)の波」「環境(新エネ)の波」を加えることが、私の役割だと思っています。
――社長は学習院大学のご出身ですが、釧路では異色の経歴ですね
宮田 釧路教育大付属の小・中学校を卒業したので、地元に進学しても同じ顔ぶればかりですから、無理を言って私学の函館ラサール高に進みました。生徒会の議長やラクビー部ラグビー部主将、寮チューター団長を務め、学業はほどほどでした。当時、学習院には故大平首相のブレーンで政治学者の香山健一先生や、講談社新書で知っていた経済学の島野卓爾先生がいたことから、何となく親近感がありました。ラサールには学習院大学経済学部への推薦枠(1名)があり、3年の10月に進学が決まりました。すごくラッキーでありがたかったですね。
――ゼミでは何を研究しましたか
宮田 交通経済、計量経済学の川嶋ゼミです。そこではゼミ長をさせてもらいました。川嶋教授(秋篠宮紀子様のお父上)のゼミは帰国子女が多く、英語主体の授業でした。先生はアメリカのインターステート・ハイウェイシステムと地域経済との関係を、経済学の視点から研究されていました。私にとっても川嶋ゼミで勉強させてもらったことが生きていて、交通経済や地域経済の視座をいただいたと感謝しています。  私の書いた卒業論文は、将来ハイウェイと同様に情報ネットワークの整備による地域インパクトがあるはずだと展望し、交通経済学の一つとして情報伝達の特性について論考したものです。その当時は、すでにパソコン通信のサービスが実用化していましたから、少しだけ時代を先取りしたテーマだったと思います。
――北海道は光ファイバの整備がまだ遅れています
宮田 国道沿線にはダークファイバが整備されていますが、まだ活用されていないことが多いです。昨年、国土交通省光ファイバ利活用の実証実験を北海道の上ノ国町と松前町で実施しました。自治体の協力を得て、サンエス電気通信と開発局が主催し、町民参加のブロードバンド体験教室などで、情報通信技術を活用した過疎地域における地域社会モデル検討調査業務を行いました。また、開発局の光ファイバを地域イントラや地デジ防災デジタル化などへ応用することができるようになってきていますのでこれからだと思います。  私たちは釧路で「まちとくらしネットワークフォーラム」という会を運営しています。管内は高速道路が、道東まで延長(本別〜釧路間)されないかもしれない。もし釧路まで延びても、本来はその先の中標津、根室を抜けて羅臼、知床のオホーツクまで地域のネットワークを整備すべきなのです。  しかし、残念なことに地方の声は「道路はあるからいい」などと驚くほど消極的です。高速道路を体験したことのない人は効果を実感できないため、街頭インタビューには、「道があるからいい」と答えるに決まっています。  国土の頭からつま先まで背骨の部分、北海道なら稚内から函館までと、横の線として道央から道東、オホーツクまできちんとネットワークとして整備することが必要で、一番望ましいのは北海道の幹線としてループしていることです。九州、四国は魚の背骨のように出来ています。それに比べると北海道はあまりにも貧弱です。戦後60年も経っていながら、未だに釧路に高速道路が整備されていないことで、外国の観光客やビジネスマンに驚かれています。  例えば、世界遺産の知床と新千歳空港は1本で結ばれていません。これでは国際空港とは言えません。空港から直接高速道路に乗り入れできず、札幌ですら中心部から高速に乗れないこと自体が時代遅れです。
▲社屋
――インフラ整備が進めば道東の発展の可能性は飛躍的に高まりますね
宮田国は食糧自給率を2020年までに50%に伸ばす目標を掲げていますが、自給率を10%押し上げる可能性は北海道にしかありません。中でも十勝、オホーツク、釧根が有力ですから、物流の面からも道路、空港、漁港のインフラ整備は欠かせません。
――みちネットの会の活動では自費で霞ヶ関にまで足を運んでいるのですね
宮田 市民ですから対等な立場で陳情活動を行っています。業者として行っているつもりはありません。そこで北海道の窮状を訴えていますが、ただお願いするだけでなく、「農商工連携のプロジェクトを実現できれば、食料自給率のアップにつながる」など、日本全体への貢献を具体的にアピールしないと効果はありません。
――みちネットの会は、平成16年度から活動が始まりましたが、手ごたえは感じていますか
宮田 国交省も、ようやく私たちの活動を認知してくれていて、局長クラスの幹部をはじめ、谷口博昭技監は道路局長の当時からお会いしています。これからは単なる陳情団ではなく、一緒に政策や具体的なプロジェクトを考えるようにしたいものです。そのためにも開発局や道と表裏一体の動きにならないと説得力はありません。北海道としてどうしてほしいのか、どう考えているのか、具体的な話を今後持ってい行きたいと思います。  それで「まちとくらしネットワークフォーラム」、「釧根地域戦略会議」などで、若手の経営者が集まり、行政関係者の話を聞きながら、政策づくりに取り組んでいます。  例えば農業は、個人経営の農家と農協、行政が中心となって進めてきましたが、農家の高齢化、担い手不足のなかでは限界があります。国は企業参入を促進するため農地法を改正しようとしていますが、農業法人が生まれて作物を生産するにしても、建設業には十分なノウハウがありません。農業は定着するのに2年、3年から5年ぐらいかかりますから、インフラ整備も含めてプロジェクトとして取り組まないと失敗しかねないものです。  予算が潤沢にあった時代は良かったが、限られた予算の中では優先順位や効果が期待される、「選択」と「集中」がキーワードになります。そうなると政治力だけではなく、理論的で、説得性のある説明責任が求められます。日本中の各地域が競争しているわけですから、具体的な事業効果を説明できなければ、国の予算は付きません。  今回、小樽商大で書いた修士論文は、建設業、電気通信業などの既存産業がいかに事業ドメインを変えていくのかをまとめました。  その時、つくづく北海道では農業の勉強が必要と思い、北大農学院博士課程に入り、現在2年目です。どうも3年では卒業できそうにないので6年間に延長してもらったところです。(笑)
――本格的な研究に着手したのですね
宮田 北海道の新しい農業のありかたを研究したいと考えています。例えばアメリカは農業生産全体の15%はパートナーシップとして異業種の参入を認め、農業の活性化、高度化に取り組んでいます。日本も次第に契約農家が増えていますが、法人も参入し、既存農業者と連携して、もっと活性化しなければなりません。北海道ならそれができます。そして、ただ大手流通に価格を叩かれるものであってはならず、自ら安全、安心な作物を生産し、価格をつくっていくことです。北海道は農業をベースにして、そこに建設等さまざまな産業が連携し、農業、漁業、環境、観光などを通じて域際収支の黒字化を図ることが大事です。その新しいモデルを描くことが必要と思い、いま勉強を始めたところです。  これからの環境社会を考えると、エタノール、植物性プラスチックが注目されており、その資源に恵まれた北海道の潜在力は大きな可能性を持っています。それを支えるための社会基盤整備は、最低限の条件です。根室と釧路、羅臼と釧路、オホーツクと釧路の間をつなぐ道路、港などのインフラ整備を急ぐとともに、それを生かすために地域で取り組む政策として「環境」と「食」関連のプロジェクトが北海道を豊かにすると期待しています。
会社概要
創   業:昭和22年10月1日
創   立:昭和33年 4月1日
資 本 金:1億5,000万円
社 員 数:60名
建設業許可:知事許可(特・般-16)釧第425号
      電気工事業・電気通信工事業
      消防施設工事業
事業所所在地:
 札 幌 支 店/札幌市東区北46条東19丁目1-1
       TEL 011-787-2821
 根室営業所/根室市花咲町1丁目8-1
       TEL 0153-23-2207
 中標津営業所/中標津町東28条南2丁目6番地
       TEL 0153-72-1539

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