建設グラフインターネットダイジェスト

〈建設グラフ2009年7月号〉

interview

2009年の農林水産大臣賞を受賞

――国の財産づくりに携わり業界発展と地域活性化を目指す

小針土建株式会社 代表取締役社長
釧 路 建 親 会 会       長
小針 武志氏

小針 武志 こはり・たけし
昭和39年1月9日 生まれ
昭和61年3月 明治学院大学 経済学部商業科 卒業
平成 2年1月 小針土建株式会社 土木部 入社
平成 7年6月 小針土建株式会社 常務取締役
平成12年5月 小針土建株式会社 専務取締役
平成19年4月 小針土建株式会社 代表取締役社長
 (同日付けグループ会社 北央舗道株式会社 代表取締役社長)
平成18年5月 根室支庁管内建設業協会 副会長
平成20年4月 帯広林業土木協会 監事
平成20年5月 釧路建設業協会 理事
小針土建株式会社
本社/標津郡中標津町緑町南2丁目1-1
TEL 0153-72-3265

 漁港漁場整備等に実績を残した建設業者を顕彰する、農林水産省の09年度漁港漁場関係事業優良請負表彰の大臣表彰に輝いた全国3社の中で、北海道から選ばれたのが、根室管内中標津町を拠点に88年の歴史を持つ小針土建株式会社だ。現社長の小針武志社長は、創業者から数えて4代目。平成19年に、実父からバトンを受け同社のトップに立った。小針土建は、根室管内を中心に道路、橋梁、河川、下水道、治山、港湾、護岸、漁場整備等、幅広い分野で地域社会の資本づくりに貢献している「地域一番店」。もとより同社の技術力には定評があり、北海道開発局優良施工表彰(平成10年)、北海道林務部(林道治山)優良施工表彰(同8年)、北海道水産部(水産土木)優良施工表彰(同2年)、北海道農政部(農業土木)優良施工表彰(昭和50年)など数多く顕彰がその証左だ。「地域とともに歩む」をモットーにインフラ整備に専念する同社の小針社長にインタビューした。

――農水大臣表彰は全国9道県の中から小針土建と、岩手、静岡県の3社が選ばれました
小針 地域の一番店として地元のご理解をいただきながら、漁港漁場整備等に取り組んできたことが認められ、公共事業の受注業者として大変な栄誉と喜んでいます。
▲社屋
――社業の歴史は根室管内でも古いほうですか
小針 根室では一番古いかもしれません。祖父の武雄が大正9年に、橋梁の架替工事を受注し、翌10年に中標津で小針組を創業したのが始まりです。それ以前には、国後で軍馬の牧場整備や木橋整備に携わっていたこともあると聞いています。  元々は福島県から北海道に渡り、いったん網走に入植し、その後、中標津に移ってきました。当時、中標津に入植したのは、わずか5戸。標津川をはさみ平野部の土地を5戸で分けたそうです。
――社長の略歴を伺いたい
小針 私は昭和39年生まれです。父は何も言いませんでしたが、祖母からは「いずれは跡取りに」と言われていました。  昭和61年に大学(明治学院大学経済学部)を卒業後、準大手ゼネコンに入り、東京支店の経理部に配属になりました。毎月の支払いは、キャッシュと手形を合わせて百億円単位でした。バブル経済の絶頂期で、丸4年ほどお世話になりました。  建築部門は公共事業には見向きもせず民間の建築物件の受注競争に走っていましたが、バブルの崩壊とともに企業倒産が相次ぎ、発注者の債務保証までした多くの大手ゼネコンが建設費を回収できないなど、残酷な世界を垣間見る経験をしました。
――バブル崩壊の予感はありましたか
小針 銀行回りをしていましたが、施主のメーン銀行が「ちょっと待ってくれ」と、手形なり小切手を振り出さないことがままありました。
――中標津にはいつ戻りましたか
小針 平成2年です。次第に公共事業費の配分が伸び、中標津でも仕事が切れることはありませんでした。私たちが中標津の企業として今日あるのも、地元に育ててもらったお陰と思っていますから、これからも地域の一番店であり続けたいと願っているところです。
――先代の弘会長は釧路建設業協会の会長を務めるなど管内のリーダーとして一目を置かれていますが、社長からみて会長はどのような存在ですか
小針 父も厳しい時代を経験してきただけに、企業としての技術力を高めつつ財務体質の強化に腐心してきたと思います。その辺は会長の手腕が大きかったと思います。技術力と財務力とのバランスを、いかに保つかが企業経営のポイントじゃないですか。わが社は工事高のほぼ100%が公共事業で、しかも土木が中心です。公共事業費が減り続ける中、例えば農業等の異業種への参入を検討したことはありませんでした。今後も本業を大切にしていきたいと考えています。
▲平成6年 北海道東方沖地震 北方領土救援活動
――平成6年10月4日に発生した北海道東方沖地震では、会社も被害を受けたと思いますが、どのような救援活動を行いましたか
小針 この社屋も震災後に建て替えました。社屋もそうですが、管内の国道、道道が随所で寸断したので、全職員が24時間態勢で交互交通の旗振りなどの交通整理や道路管理にあたるなど、ライフラインの確保に努めました。また、外務省の要請を受け、国後島、色丹島の住民への救援物資の輸送をお手伝いしました。  海洋土木では、標津漁港、野付漁港、別海漁港、羅臼漁港の根室海峡で仕事をさせてもらっていますが、震災後はこうした漁港整備、漁場整備に一定の予算が配分され、受注につながっています。官庁の設計とは別に、受益者の漁組や漁師の人たちに前浜の勾配など工事の内容をきちんと説明し、理解してもらいながら取り組むよう心掛けています。前浜は漁師の人しか使いませんが、活気がありました。
――最近の漁獲量はいかがですか
小針 管内でも羅臼漁港、標津漁港は一番活気があります。羅臼のスケソウは以前に比べると漁獲量がかなり減っていますが、他のホタテ、サケ、ホッキ、コマイはかなりの水揚げがあります。昨年、サケの水揚げが減少しましたが、水温の上昇に伴い、サケの好む水温域の過密による餌不足が影響していると聞いています。
▲平成20年 野付崎海岸浸食対策工事
――根室海峡は日本でも有数の漁場です。漁場整備によって水揚げがさらに伸びる可能性は
小針 その辺のバランスは一概には言えませんが、懇談している際に皆さんが一様に指摘されるのは磯焼けです。この海域でも若干の磯焼けがありますが、漁場整備によりアサリ・北海縞エビやタコなどの水揚げは伸びていると思います。  事業所を標津町に設置し、多くの仕事をさせてもらいました。サケの定置網に影響しないよう、漁期は工事を避けるなど、漁組と工事の日程調整等打合せをしながら取り組んでいます。その意味でも今回の大臣表彰では漁業関係の皆様に感謝の気持ちでいっぱいです。
▲平成20年 尾岱沼漁港2工区 ▲平成20年  野付地区(床丹)
――昨年に、建設業界の若手経営者の団体・建親会の会長に選ばれましたね
小針 2世、3世で組織している団体です。私自身も諸先輩に育てられましたが、私より若い連中が釧路、根室で活躍していますので、業界発展と地域活性化のために頑張ってほしいと期待しています。
――技術者の育成にはどう取り組まれていますか
小針 不安に思っていることは若手、技術者の担い手が一気に少なくなっていることですね。工業高校の卒業生に建設業離れの傾向があるのが気がかりです。いったん建設業界に就職しても、「どこかイメージが違う」と感じて辞めると、他産業に流出し、再び戻ってくるのはレアケースです。発注者とエンドユーザー・市民の間に立って橋渡しの役割を果たしつつ、国の財産づくりに携わっていることに誇りを持ち、建設業をもっとアピールしたいと考えています。
会社概要
資 本 金:50,000千円
創   業:大正10年4月
設   立:昭和25年5月
建設業許可:北海道知事許可
許 可 番 号:特・般−18根第108号
許 可 業 種:
 本社 特定:土木・とび土工・舗装・鋼構造物・浚渫・水道施設
    一般:建築・造園・石・管
年間売上高:1,751,822千円(平成19年度)
営 業 所:
 札幌営業所/札幌市北区北7条西2丁目6 37山京ビル925
       TEL 011-708-0055

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