建設グラフインターネットダイジェスト

〈建設グラフ2009年6月号〉

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東紀州地方の暮らしの安全を確保し経済を発展させる

――早期開通への地域の高い期待を背負って整備

紀勢国道事務所 国道42号熊野尾鷲道路・近畿自動車道紀勢線

 紀伊半島を所管する紀勢国道事務所は、三重県の中南勢、伊勢志摩と東紀州地域における主要幹線道路の整備・維持管理事業を行っている。その中から自動車専用道路の国道42号熊野尾鷲道路と新直轄方式で建設中の近畿自動車道紀勢線の整備について紹介する。


▲熊野尾鷲道路

国道42号熊野尾鷲道路

 熊野尾鷲道路は、東紀州地域の中心都市である熊野市と尾鷲市を繋ぐ道路で、近畿自動車道紀勢線と一体となって高速交通ネットワークを形成する自動車専用道路だ。
 東紀州地域は、年間降雨量が約4,000oにも達し、全国でも有数の豪雨地域で、国道42号や311号の熊野市から尾鷲市に至るほとんどの区間は、雨量規制区間となっている。このため、異常気象時の通行を確保することは地域住民の悲願となっていた。
 したがって、この路線は一般国道42号の2カ所の通行規制区間の代替路線となるため、地震や台風などの災害時における緊急の輸送路として地域の生命線となるとともに、平常時には通行の定時性の向上も図られる。
 この定時性の向上は、流通における信頼度の向上にもつながるもので、近畿自動車道紀勢線や一般国道42号、311号と主要地方道などの幹線道路と一体となり、広域交通ネットワークが形成されることで、都市圏からのアクセス性が向上し、輸送時間が大幅に短縮し、農林水産物の鮮度の確保と輸送費のコストダウンが図られ、地場産業の振興に大きく貢献する。
 地域住民の暮らしの安全と、経済的な安定が確保され、それを基盤に就業、医療、教育、ショッピングなどの日常生活において、高次のサービスを有する都市圏との時間短縮が図れれば、地域相互間の交流・連携が促され、人口の定着化も期待できる。
 特に、三重県南部地域は、そうした農林水産資源だけでなく、恵まれた自然環境や貴重な歴史的文化遺産が豊富で、地域ではそれらを活かした活性化プロジェクトが計画されている。これにともなって、都市圏とのアクセス性が向上した熊野尾鷲道路によって、観光客の誘引を促進し、プロジェクトを支援することも期待されている。
 こうした多様な整備効果が見込まれるだけに、早期の完成が望まれているが、工事は平成8年度の事業化の後、14年度から着工、20年4月に尾鷲南IC〜三木里IC間の延長5.3qが供用開始された。
 そして現在は、三木里ICから大泊IC(仮称)間について用地取得を推進するとともに、逢神曽根トンネル・亥谷山トンネル・大吹トンネル・改良工事及び橋梁工事を推進している。

▲標準断面図
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▲近畿自動車道紀勢線
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近畿自動車道紀勢線

 近畿自動車道紀勢線は、大阪府松原市を起点とし、紀伊半島沿岸部の和歌山県和歌山市や田辺市などを経て、三重県多気郡多気町で近畿自動車道伊勢線に接続する延長約340qの幹線自動車道。このうち尾鷲北IC(仮称)〜紀伊長島IC(仮称)間(L=21.2q)を、紀勢国道事務所が所管している。
 京阪神と紀南を結ぶ幹線道路として、輸送時間の短縮や一般道の混雑緩和を図り、地域相互の産業、経済、文化、観光の振興と発展に寄与することを目指している。
 また、今後の30年以内には50〜60%の確率で、東南海・南海地震が発生すると予想されているが、国道42号における津波浸水予想区域の割合は30パーセントに上り、通行止めになった場合の迂回路はなくなるために、災害時に孤立するという不安を抱えている。また、熊野尾鷲道路と同様に全国屈指の豪雨地域にあって、しばしば土砂災害も発生している。とりわけ、平成16年に発生した国道42号の崩落災害では、仮復旧に3昼夜を要したことは記憶に新しい。
 このため、この路線を整備することで、災害時における代替路を確保するとともに、迅速な救援活動が可能となる。
 同時に、第3次医療機関への移送時間が大幅に短縮し、緊急医療にも整備効果を発揮して、「いのちの道」として交通機能が確保される。こうした時間短縮効果は、人々の生命救助だけでなく、地域間の交流も活性化させることになるため、地元では「東紀州に高速道路をつくる会」や「近畿自動車道紀勢線建設促進期成同盟会」が結成されるなど、開通に向けて地域の要望は高まっている。
 そうした期待を背負って整備が進められるこの路線は、尾鷲北IC(仮称)から紀伊長島IC(仮称)間の用地取得と、高丸山トンネル・馬越トンネル・始神トンネル、道瀬トンネル、紀伊長島トンネルの着工、改良工事や橋梁工事を推進するとともに、海山トンネル、古里第2・第3トンネル、加田トンネルも契約された。

▲標準断面図
東紀州安全協議会・東紀州安全協議会(新鹿奥地区)
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