建設グラフインターネットダイジェスト

〈建設グラフ2009年4月号〉

寄稿

古平神恵内線 交付金改築工事(六志内トンネル)現場報告

●六志内トンネル拡幅工事 草別・福津 特定建設工事共同企業体
所長 田中 敏明

▲図-1 工事位置図
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1.はじめに
 六志内トンネルは、道道998号 古平神恵内線の当丸峠山頂に位置する全長215mの道路トンネルです。この古平神恵内線は平成8年11月に国道229号線の海岸ルートが開通するまでは、積丹半島の東西を結ぶ重要な幹線道路でした。しかし、大雨や豪雪等の影響によりたびたび『通行止め』を余儀なくされていました。また、近隣の「原子力発電所」建設に伴い 避難用道路に位置づけられ、早期の通年開通の実現が叫ばれていました。そこで近年、改良工事が行われ大型のドームシェルターが作られて道路も広くなりましたが、六志内トンネル区間だけが他の箇所と比較すると狭小断面となり、高さ通行規制により大型車はう回を余儀なくされるなど、交通障害の原因として懸念されていました。
 さらに、平成5年夏に発生した「北海道南西沖地震」後に実施された道路及び周辺地質点検による調査の結果から、トンネル背面の天端部に大きな緩み領域が4箇所ほど確認され、早急な対策も必要となっていました。(いずれも補強対策は終了済み)  以上のことから、今回の工事は現トンネルの狭小区間を対象に正規の建築限界を確保できるよう内空断面を拡げ、地質調査で判明した緩み領域区間の恒久対策を行うための、トンネル拡幅工事です。

2.地形・地質
 当トンネルの地質は、新第三紀中新世の安山岩・変質安山岩を基盤に構成され、 硬質ではあるが変質部で節理状を呈しています。また、岩質境界付近には劣化帯や緩み域が分布しています。地形は両坑口の土被りが小さく、特に古平側の30m区間は急勾配の斜面を成し、5m程度の土被りで斜面方向と平行にトンネルが通過する形となっています。

▲写真-1 ブレーカ拡幅掘削
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▲写真-2 小口径先受け補助工法
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▲写真-3 昼間片交防護プロテクター
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3.拡幅掘削施工
 拡幅に先立ち、両坑口巻出し上にエアモルタルによる人工地山を構築する事で土被りを確保、さらに掘削補助工法として小口径長尺鋼管先受けを採用、天端前方にアーチ状の改良体を形成しながら、平成20年10月 神恵内側から『夜間通行止め』による一方体制で大型ブレーカでの掘削を開始しました。
 しかし、65m拡幅した12月初旬に中規模の抜け落ちが発生したため、『全面通行止め』により復旧処理(空洞充填エアモルタル注入)と補強対策(既設覆工背面注入、小口径先受け支保)を行い、同時に前方探査を実施し2箇所で脈状劣化部の確認に至りました。新年からは早急に通行の確保を図るため、昼夜作業での掘削再開となり、岩質劣化部に小口径補助工法を併用しながら施工を進め、現在3月初旬の到達を目指し細心の注意を払い拡幅を行っています。
 新年度からはインバート及び覆工・舗装工などの工事が行われる予定と聞いておりますが、この工事の完成によってより安全な通行が確保される路線となってくれる事を願い、これからも土木工事を通じ地方の開発に貢献できればと思っています。



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