建設グラフインターネットダイジェスト

〈建設グラフ2009年3月号〉

寄稿

湯西川ダム

鹿島・清水共同企業体 現場代理人  米山 義春

▲ダム堤体打設中全景

1.工事概要
 湯西川ダムは、利根川水系湯西川の栃木県日光市西川地先に建設される多目的ダムで、洪水調節、流水の正常な機能の維持、かんがい、水道・工業用水の供給を目的としている。
 構造物の規模は、堤高119m、堤体積約103.2万m3、堤頂長約320mの大規模の重力式コンクリートダムである。堤体コンクリート打設方法としてRCD工法(h=101m)とELCM(h=18m)が採用されている。
 本工事は、入札時にVE提案として「施工日数の短縮」「施工日数の短縮に係わる具体的な施工計画」「ダムコンクリートの品質確保対策」及び「工事全般の施工計画」を求め、価格と価格以外の要素を総合的に評価して落札者を決定する入札時VE(総合評価落札方式(高度技術提案型(V型)))の試行工事である。
 本工事の主なる制約条件は以下の通りである。
@湯西川ダムトンネルの閉塞工は、付替県道黒部・西川線の共用開始(平成23年6月末)以降とする。
A使用する骨材は、川治河床砂礫及びダムサイト掘削ズリを優先して使用するものとし、湯西川河床砂礫で過不足を調整する。ただし、仮置時、骨材製造時及びコンクリート製造時の混合は認めない。
B堤体コンクリートの打設はRCD工法又はELCM(拡張レア工法)あるいはそれらの併用を基本とする上記の制約条件や現場条件を考慮し、本工事においては以下の提案を行なっている。
 「施工日数の短縮」については、
@ケーブルクレーン基礎掘削量の低減や右岸EL620からの直接積込みにより左岸河床掘削と右岸掘削の並行作業等により本体基礎掘削の工程短縮
A15t級ケーブルクレーン2基とSP-TOM 1基(Spiral Pipe Transportation Method)を採用し運搬能力の向上や狭隘部打設効率の向上等により打設工程の短縮
B湯西川ダムトンネル工の打設リフトの厚層化等による閉塞工程の短縮
 以上の提案等を行い、本体関連工事であるカーテングラウチング工、堤外仮排水路工の検討・確認を行なった結果、最遅となる湯西川ダムトンネル閉塞工が完了する平成23年9月17日から試験湛水を開始できるが、最終的なダム品質の確認を行い、堤内仮排水路の閉塞が確実にできる、非洪水期となる10月1日から試験湛水を行い、96日間の施工日数の短縮を提案した。 
 「ダムコンクリートの品質確保対策」については、骨材製造からコンクリート打込み・養生に至るまでの一連の工程について問題点を抽出し、@コンクリート強度等の品質のばらつきの抑制、A有害な温度ひび割れの発生の抑制、B暑中時及び寒中時の品質低下の抑制、C打設面からの漏水の抑制、Dコンクリート中への有害物混入防止等の効果を実現すべく、各種の品質確保対策を提案した。

▲コンクリート打設状況(標高EL=640) ▲環境配慮型照明(カクテル照明方式)
▲仮設備の塗装イメージ

2.工事における周辺環境への配慮
 工事周辺地域は自然環境に恵まれた良質な観光地であり、しかも施工区域は貴重な土地を提供してもらった地元住民の居住区と隣接していることなども考慮して、環境対策には万全を期している。
 まず、掘削工事では、ケーブルクレーンの基礎形式(コンクリート基礎)を掘削量の少ないグランドアンカー形式の採用を提案し掘削土量の低減を図っている。また、骨材製造・貯蔵設備は、一次破砕設備設置場所の変更と重ダンプ専用道路の省略、骨材貯蔵方式の変更、引き出し暗渠方式の変更等を行い敷地造成面積の縮小を図っている。
 また、居住地域境に防音壁を設置して、極力騒音を抑制するとともに、定期的な騒音・振動測定を実施していく。希少植物については、施工前に採取し指定された場所に移植するほか、夜間照明に環境配慮型照明設備の導入やプラント施設の着色(こげ茶色)などにより生態系への影響を極力抑えていく。


湯西川ダム事業の完成に貢献します
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