建設グラフインターネットダイジェスト

〈建設グラフ2009年1月号〉

interview

湾岸危機を契機に転身

――旅行業界から見た建設業

東工業株式会社 代表取締役 天方 智順氏

天方 智順 あまかた・とものり
昭和39年1月21日 生まれ
昭和63年3月 京都外国語大学英米語学科 卒業
昭和63年4月 ジャパンコスモ株式会社 入社
平成 3年1月 第一建設株式会社 入社
平成 4年1月 東工業株式会社 入社
平成 9年5月 同社 常務取締役 就任
平成12年5月 同社 代表取締役 就任
公職
平成14年1月 社団法人釧路青年会議所 理事長
東工業株式会社
釧路市材木町14番30号
TEL 0154-41-5353

 道路舗装工事をメインに採石プラントや運送会社も運営する東工業(株)は、釧路市の優良工事表彰を受賞するなど、地元建設会社として不動の実績と地域の信頼を得ている。天方智順社長は三代目で、元は外国語を専攻してスペインに留学し、東京都内の旅行会社に勤務した異業種の人材だが、先代社長の重病と湾岸戦争危機を契機に、会社を引き継ぐことになった。首都圏での厳しい営業経験を持つ同社長の目には、取引先が固定的な建設業界は、営業環境としてむしろ恵まれていると感じるようだ。もっとも、その背景には地域を熟知し、地域とともに生きてきた生き様と、実績の積み上げの賜であることを自覚しており、それが地場企業が生き抜く上で大切なものであると力説する。

――会社の概要と社長の略歴から伺います
天方 昭和34年に、札幌の岡本興業(旧・岡本建材)の道東出張所に祖父の天方良一が赴任し、釧路に来たのが始まりです。岡本興業(株)の先代と、私の先々代は実の兄弟にあたります。そして、運送部門と砕石製造販売に携わったのがスタートでした。  その後、昭和38年4月に採石の運送を目的とし先々代が個人として創業し、昭和38年11月にに東建設株式会社として法人化し、現在地に会社を設立しました。46年9月に東運輸鰍ェ東建設鰍謔闕フ石部門を合併し、東工業鰍ノ称号変更して、48年に釧路町別保に砕石工場を新設。56年に父の天方勇が代表取締役に就任しました。  私は昭和39年に生まれ、採石場の重機やローラーなどで遊んだり、アスファルトフィニッシャーの上に乗ってレバーを動かしたものです。後に大学で外国語を専攻し、在学中はスペインに半年間留学して、最初に就したのは旅行業界でした。しかし、平成2年に父が大病を患う一方、旅行業は第一次湾岸危機で危うい時期だったので、平成4年に帰省しました。
――東京での経験でプラスになっていることは
天方 屋台骨を支える公共事業が大変な時代とはいえ、それでも得意先が決まっており、当社製品を買ってくれるわけですから、他の小売業界や製造業の業界から見ると恵まれた環境です。名刺を出せば、東工業の社名に馴染みを持ってくれます。東京では、名刺を渡しても捨てられたことがあります。
▲砕石プラント
――会社の業績は砕石・舗装が中心ですか
天方 最も比率が高いのは舗装で、次に土木、砕石の順番です。土木と舗装は8割以上が公共事業で、その他は商業施設の駐車場などの民間土木ですが、なぜ公共事業がけしからんといわれる世相になったのか、不思議です。GDPの数%を建設費にあてる先進国はどこにもないと国民に叩かれたため、それを抑制した結果、今や欧米サミット8ヶ国の中でもかなり低い方だと思います。  しかし現在、全国の景況がこれだけ苦しいのですから、国債発行で将来的に赤字を残すかもしれませんが、それを30年、50年後の若い世代が負担することに何のためらいがあるのでしょうか?将来のための今を潰さないために、今こそ景気対策としての公共事業ではないかと思います。道路にしても、一度造れば終わりではなく、みな寿命が来るのです。釧路は人が住み始めて100年程度です。1000年以上の都で、古くから街道が栄えていた本州の人々からは批判されたくないものです。  本道では昨年4月1日に、豪雪で釧路市から管内町村に向かう何十台もの通行車両が、路上で閉じこめられ、多くのドライバーが凍死の危機に直面しました。それを私たちのような地場建設業者が一台一台、生存と燃料を確認して救助・復旧に当たったのです。私たちは宣伝下手でもあり、また大々的にPRするのは愚行の一つだと思われていますから、恩着せがましい宣伝はしてきませんでしたが、今後は私たちの世代の社長がアピールしていくべきでしょう。
――釧路は平成になってから震災が2回ありましたね
天方 当社の担当路線だった391号線は、法面が地すべりを起こしていたので、急きょ通行止めにして36時間不眠不休で復旧に当たりました。どの現場代理人も職員も、間髪入れずに自分の持ち場に駆けつける習慣が根付いていますから、私たちの対応がなければ、自治体も災害時の対処は難しいでしょう。  特に各スタッフとも住居周りのことを把握しているので、災害時には「あそこのじいさんは大丈夫か」と、近隣を気遣う意識があります。一方、近隣住民も通勤時などのプライベートの場で、気づいたことを報告してくれます。
――平成20年度の釧路市優良施工業者表彰では、釧路川右岸通改良工事で受賞されましたね
天方 寒い中で懸命に現場に臨んでくれた職員に感謝しています。当社の技術者は、どの官庁に出しても恥ずかしくない人材が揃っており、父の代から培った土壌だと思います。何しろ、他社からスカウトがあったりするほどですから。
――スタッフには、どのような会社の基本姿勢を示していますか
天方 除雪などの地道な業務も普段から懸命に従事し、利益率の低い民間工事も面倒がらないようにと話しています。舗装工事にしても、何億円もの工事を受注できる業界大手が、釧路の猫の額ほどの舗装にまで携わったのでは、私たち地場企業の存在意義はなくなります。地元で認めてもらえないと、コンビニのようなゼネコンのフランチャイズ吸収という流れになるかもしれません。したがって、地元企業として譲れないのは、除雪と災害時の対応で、それができないようでは存在意義はないと思います。
――厳しい経済状況ですが、今後をどう生きぬく考えですか
天方 少なくなるけどなくならない業種ですが、地元の人に選ばれる会社でなければだめです。そのため、どうすれば選ばれ、仕事を任されるかをみな考えてほしいと話しています。例えば、私が公職を引き受けたり、職員も町内会活動に励むことも、信頼の積み重ねだと思います。そして、地元で収入を得て地元で消費し、地元の経済活動を支える意識を持って欲しいと言っています。
会社概要
創  業:昭和38年 4月 1日
会社設立:昭和42年11月20日
資 本 金:2,000万円
売 上 高:10億円
許可番号:北海道知事(特-12)釧第00285号
許可業種:土木一式、とび・土工、舗装
社 員 数:37名
関連会社:東運輸株式会社
表 彰 等:
優良施工業者 北海道知事(平成10年)
釧路市優良施工業者表彰(平成20年度)


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