建設グラフインターネットダイジェスト

〈建設グラフ2008年10月号〉

interview

宗谷の酪農家を農業基盤整備で支え食料自給率に貢献

――夢は日本最北端の稚内市内でコメの栽培に意欲

株式会社 共成建設 代表取締役社長 西森 靖之氏

西森 靖之 にしもり・やすゆき
昭和62年3月 札幌学院大学 卒業
昭和62年4月 株式会社共成建設 入社 現在に至る
公職
有限会社共成農産 代表取締役
稚内建設協会  理事
北海道土地改良建設協会 理事
北海道地域開発計画センター 理事
アグリサポート宗谷 事務局長
株式会社 共成建設
稚内市栄1丁目34番1号
TEL0162-33-2539

 サハリンを指呼に望む人口41,000人の稚内市。冬はブリザードにさらされる日本最北端の地は今年の夏も利尻、礼文島を目指す観光客で一時の賑わいを見せた。稚内といえば水産都市を連想しがちだが、稚内を拠点とする宗谷管内は北海道でも有数の酪農地帯だ。管内の人口に匹敵するほどの乳牛が飼育されており、なんと63,000頭にのぼる。約27万dの生乳生産量は全道の約7%を占めるという。1戸あたりの広大な耕地面積を背景とした大規模な草地型酪農を展開している。宗谷の酪農家を陰で支え、草地の不陸(でこぼこ)修正や傾斜の緩和、排水の改良などを行う草地整備改良事業では他社の追随を許さないのが稚内市の共成建設だ。  昭和17年の創業以来、現在で9代目という西森社長は生粋の稚内っ子。祖父が酪農業を営んでいただけあって、建設業の傍ら農業法人の共成農産を率い、無農薬野菜生産の事業を展開している。低農薬のジャガイモ以外はタマネギ、カボチャ、ソバなどすべて完全無農薬というこだわりを見せる。大消費地向けに農薬をふんだんに使い大量生産・出荷の誘いには目もくれず、安心、安全な食の提供にこだわり、昔から名寄が北限とされるコメ栽培にも意欲的。地元のコメと野菜、乳牛、魚が補完しあい、本人の言葉を借りれば「物々交換」しつつ、食料自給率100%都市という壮大な夢を描いている。

――会社の沿革からお伺いします
西森 創立は1942年、昭和17年です。24年に法人化し、私が父の後を受けて9代目の社長に就任したのが平成11年です。私が当社に入社したのは、昭和62年で当時の年商は15億円程度。その後、順調に受注高を伸ばし、ピーク時の平成13年度には40億円の大台に乗せましたが、公共事業費の大幅な削減に伴い、今では20億円強にまで落ち込んでいます。  昭和48年当時、共成建設は経営危機に瀕し父は創業者から建て直しを託されていたようです。又、当時はそんな父の後姿を追いかけ、幼少の頃から父の測量や手伝いをした記憶が残ってます。社屋は地元のデパートと同じ4階建てでしたが、一気にどん底に滑り落ちたような感じがしました。中学校から高校までは父の建設作業現場でアルバイトをし、本業界には少なからず興味がありました。  私が社長就任当初の持株は、全株数の5%程度しかなく、経営者としての危機感を日々常に感じながら経営という重圧に緊張感をもって携わってきました。
――それでは今も100%オーナー社長ではないのですか
西森 その後10年とゆう歳月を経て株主のご理解もあり、今では持株数も過半数である50%を超え、株主総会も短期間で意見集約されています。厳しい時代環境ですが、農業土木のように我が社の得意分野を生かし、地元地域の信頼を得ることで活路を見出す事が出来る。社員びいきに聞こえるかもしれませんが、「オヤジ1人の稼ぎで家族が養え、子供の大学費用の心配も無い」そんな就業員の待遇を目指したい。そのため決算利益の半分は社員に還元したい。反対に赤字決算なら1円も出せませんが・・・。
▲社屋
――農業基盤整備には先代からも力を入れていた分野ですか
西森 オヤジの実家は稚内で酪農を生業としていました。宗谷の酪農発展に少しでも役に立ちたいという気持ちはあります。管内の草地造成はわが社が一番と自負しています。  最近は飼料値上がりの影響がありますが、酪農家の経営が軌道に乗り始めたのは10年ほど前のこと。私が農地を買い取って農業法人の共成農産という野菜の会社を立ち上げたのも食料の自給自足に一歩でも近づきたいと考えたからです。
――宗谷管内の人口75,000人に対し、乳牛、肉牛の飼育頭数が63,000頭。食糧基地として自給率向上に宗谷管内が果たしている役割は大きいですね
西森 おっしゃるとおりです。野菜の会社は正直言って利益は出ていませんが、低農薬のイモを除き、タマネギもカボチャも完全無農薬です。一定の利益を出して雇用を確保するために大消費地向けに生産する道もあるでしょうが、そのためには農薬を使って大量生産・安定供給が不可欠です。私としてはそういうことはしたくありません。無農薬の安全、安心な野菜を地元の人たちに食べてもらいたいと思っています。タマネギの完全無農薬栽培は全国的にもあまり類を見ないのではないでしょうか?その代わり手間は掛かります。通常の3倍も5倍も・・・。ゆえに市販価格の2倍の価格となってしまいます。  酪農業の知り合いから何とか遊休地を借りてくれないかと頼まれ、そこではタマネギ栽培をしています。土地代はただみたいなものですが、5年後に草地にして返すといった形を取っています。野菜の会社でも土地は持っていますが、遊休地を利用し作物を育て、返還時期には牧草地で返すことで地域活性化に少しでも貢献したいと思う気持ちからです。
――無農薬栽培は緯度の高い宗谷の気象条件にマッチしています
西森 最初はユウチイモの復活が夢でした。戦前まで盛んに栽培されていた勇知イモ。普通のイモに比べて価格が3倍ぐらいだったと聞いております。戦争になって誰も作る農家がいなくなり、その後、酪農が盛んになって行きました。野菜の会社では平成元年から試作を試みましたが、勇知イモになりませんでした。原因は肥料によって生育や味に違いがありました。当時、一番適していた肥料が馬糞でしたが、現在馬を飼ってる農家がほとんど無く、当時の肥料を再現するのは困難な状態です。今は昔の勇知イモに近いと言われている農林1号という品種を主軸に栽培を行っています。
▲無農薬野菜畑 ▲共成農産
――共成農産の主要作物はタマネギですか
西森 そうですね、いろいろな種類の野菜を生産していますが主流はイモ・タマネギ・大根・カボチャ・トウキビといったところでしょうか。お陰様でいい評判いただいています。  ソバや小麦も最近、試験的に栽培を試みています。市内のソバ屋さんの中で当社で育ったソバを使い営業を行っている店もあります。最終目標はコメ作りに挑戦したいと思っています。温暖化で気温が上がっていますからチャンスはあると思います。食が人間として生きる原動力である以上、安心安全な農作物を後世に残る子供達に継続したいと思います。
――当然、食料の自給自足向上も念頭にいれているんでしょうね
西森 もちろんです。水産資源もあることですから、我が社の野菜とコメを加えて稚内市民の自給率100%実現が夢です。
会社概要
創立:1942年4月1日
設立:1949年2月14日
従業員数:43名 (2008年8月1日現在)
札幌営業所:札幌市東区北11条東5丁目17番地
        TEL 011-742-4329
旭川営業所:旭川市常盤通3丁目
        TEL 0166-20-7105
建設業許可:
北海道知事許可 (特-19) 宗第74号
 許可の種類 土木 とび・土工 舗装
北海道知事許可 (般-19) 宗第74号
 許可の種類 石 鋼構造物 しゅんせつ 造園 水道施設
主要受注先及び格付:
北海道開発局    (土木 B)
北海道建設部    (土木 A)
北海道農政部    (農業土木 A)
北海道水産林務部  (水産土木 A)
             (森林土木 A)
稚 内 市     (A)

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