建設グラフインターネットダイジェスト

〈建設グラフ2008年9月号〉

寄稿

多彩な農業展開が見られる本道農業の縮図

――普及センターと連携して事業化

後志支庁産業振興部農村振興課 課長 春名 良雄

後志支庁管内の概要
 後志支庁は1市13町6村で構成され、その面積は4,305ku(全道面積の5.2%)で、大部分は丘陵地、山岳、段地と極めて複雑な地形を示しています。中央部には支笏洞爺国立公園の秀峰羊蹄山(1,893m)がそびえ立ち、北西には東洋のサンモリッツと云われているニセコ連峰(主峰ニセコアンヌプリ1,390m)が連なり、小樽、余市、積丹、岩内の港湾と海岸美が果てしなく続くニセコ積丹小樽海岸国定公園、さらに寿都、島牧の海岸一帯は狩場茂津多道立自然公園に指定され、多くの温泉や景勝地を抱えています。
 農業に目を向けますと、各河川の流域に余市、倶知安、岩内平野等がひらけ農耕地をつくり、管内農業は北海道農業の縮図と云われるほど多様な農業が営まれています。
 特に尻別川流域は後志の穀倉地帯でもあり、余市、仁木の果樹、留寿都の大根、共和のスイカ・メロン、羊蹄山麓一円の馬鈴薯、真狩のユリ根等はつとに有名です。

後志支庁管内の農業農村整備事業
 管内の概要でも触れましたように、当後志支庁管内では、多様な農業が展開されており、農業農村整備事業も多様な対応を迫られてきました。
 しかし、農地の整備に係る地元負担の軽減措置(通称「パアーアップ事業」)により面整備の需要が高まり、現在、管内の事業は面工事が主流となっています。
 平成20年度は、道営事業で11地区12億4千万円余、団体営で4地区2百万円余、合計で15地区12億4千万円余を予定しております。

経営体育成基盤整備事業
・意欲ある経営体(農家)育成のための生産基盤の整備を行う事業
共和町:共和中央地区(本年度は暗渠・客土・用水路・排水路などを予定)
 この地域は、春先に気温が隣接する羊蹄山麓より若干高く推移するため、馬鈴薯も早く有利な状況で出荷することが出来ますが、この地域の転作畑は、排水不良地が多く、暗渠排水を実施することにより豆類や馬鈴薯を作付けできるようになり、また客土を実施することで砕土性の向上やイモの皮むけ防止(品質向上)が期待されています。

畑地帯総合整備事業
・畑作地帯の担い手の生産合理化に必要な生産基盤の整備を行い生産振興・経営の安定を図る事業
留寿都村:留寿都西部地区(本年度は、区画整理・暗渠排水などを予定)、倶知安町:倶知安北部地区(本年度は、調査設計などを予定)
 留寿都では、大根の栽培が村の畑地面積の25%を占め、全道一です。しかしその作業は重労働で収穫は「だいこんハーベスタ」で行っていますが、ほ場の傾斜によっては抜き残しや傷・折れなどが多くなります。このため、傾斜を緩和するなどして農作業の安全と効率化等が期待されています。
 また、倶知安北部地区は排水不良地における対策について、後志農業改良普及センターが行ってきた、管内の堆肥を使った有材心破などの効果検証に基づき、JA等各組織が連携のもと事業化に至った地区で、その効果発現と地域への波及が期待されています。

中山間総合整備(生産基盤型)
・条件不利地域(中山間地域)における農業生産基盤の総合的な整備を行う事業
蘭越町:ほたるの里地区(本年度は、暗渠排水・客土・区画整理・用水路)、富岡地区(本年度は、調査設計を予定)、順次区画整理・客土などを実施。
 水田地帯で「らんこし米」の産地でもある両地域は、客土等による食味の向上や転作作物の導入などが期待されています。
 京極町:羊蹄京極地区(本年度は、調査設計を予定)、順次区画整理・客土・農道などの整備を進めます。

中山間地域総合農地防災
・地勢等の条件が悪く生産条件が不利な地域における、農地を始めとした地域資源の保全を図る事業
 蘭越町:初田地区、名駒地区を実施、本年度は暗渠排水・用水路などの整備を予定しています。
 共和町:下梨野舞納地区を実施、本年度は調査設計を予定し、順次用水路・暗渠排水などの整備を進めます。

地域用水環境整備事業(単独魚道整備) ・自然生態系の保全を図るため、魚類の移動を妨げている農業用水利施設(頭首工、落差工等)に魚道を設ける事業
 本事業では、検討会を設けて専門家の方や地域の方などから意見をいただきながら進めており、蘭越町と倶知安町で1地区ずつ実施しています。
蘭越町:三和地区、倶知安町:倶登山地区
 本年度は、魚道をそれぞれ4基と2基程度整備する予定としております。

最後に  このほかに、管内8町村61活動組織で「農地・水環境保全向上対策」としまして地域で様々な取組が行われております。当課といたしましても地域に対し、側面的に支援して行きたいと考えております。
 また、北海道、市町村の財政状況が厳しさを増すなか、事業費は近年右肩下がりを続けてきました。来年度以降も厳しい状況が想定されますが、過年度に実施した調査でも、農家の投資意欲の中で「基盤整備」は順位も高く、管内農家の基盤整備への意欲に今後とも応えられるよう頑張りたいと考えております。
 管内には、農業農村整備事業で整備された農地は勿論のこと、フルーツ街道や各所に市民農園、活性化施設などがあります。管内にお出かけの際は、最寄りの直売所などで「地のもの」「旬のもの」をお求め下さいまして、管内の農業に、農地や農村景観に思いを馳せていただき、後志農業の応援団となっていただければ幸いです。


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