建設グラフインターネットダイジェスト

〈建設グラフ2008年8月号〉

interview

基幹産業の農業や地域住民の命と暮らしを支える公共事業

――美深町は実力派の政治家を輩出し北上川管内の地域振興に貢献

株式会社 山崎組 代表取締役社長 山崎 晴一氏

山崎 晴一 やまざき・せいいち
昭和29年12月26日 美深町出身
昭和52年 3月 日本大学生産工学部土木工学科 卒業
昭和52年 4月 (株)北野組 入社
昭和55年 4月 (株)山崎組 入社
平成10年 2月 (株)山崎組 代表取締役社長 就任
公職
 (社)旭川建設業協会 理事
 上川農業建設協会 理事
                現在に至る
株式会社 山崎組
中川郡美深町字東4条北4丁目
TEL 01656-2-1665

 元運輸大臣の松浦周太郎、元道議会議長の西尾六七などの大物政治家を輩出した上川管内美深町。ここで昭和8年から建設土木業を展開しているのが山崎組だ。2代目の故山崎幸一氏は北海道町村議会議長会会長等の要職を務める傍ら、山崎組の企業基盤を固め、子息の現社長である山崎晴一氏にバトンタッチしたのが平成10年。おりしも公共事業に陰りが見え始めた時期に企業経営のカジ取りを任された。山崎社長は語る。「公共事業はピーク時の半分。どこの会社も苦しい。しかし右肩上がりの時代は終わり、公共投資は第二段階に入った。これからは品質が評価のポイントだ」と。美深町の基幹産業である農業や地域住民の命と暮らしを支える、農業基盤整備、道路整備、治水対策の推進。費用対効果の経済合理性だけで「無駄な公共事業」が批判されがちの昨今だが、公共事業のすそ野は広く、波及効果は今でも大きい。
――創業は昭和8年にさかのぼりますが、社長は何代目になりますか
山崎
3代目です。淡路島から入植した祖父の勝郎が、農業の傍らで大工の仕事を始めたのが発端だったようです。戦前、上川管内にも各地にでん粉工場があり、その建設を手掛けたのが建設業に参入したきっかけになったと聞いています。
――先代の幸一氏は地元でも信望が厚く、美深町議、議長・全道町村議会議長会会長として戦後の復興に貢献されたと伺っています。後には美深を地盤に中央政界で活躍し、労働大臣、運輸大臣等を歴任した大物政治家の松浦周太郎元代議士の秘書として政治活動を支え、元衆院議員の故川田正則氏、元道議会議長の故藤井猛氏とともに「秘書三羽がらす」と呼ばれました
山崎
 父は町議になる前から松浦氏の私設秘書を務め、暮れになると必ず予算復活の陳情で東京へ出掛けていた記憶が、子ども心に残っています。東京から戻るのは、だいたい12月28、9日頃でした。
▲社屋
――当時地元の予算要望は何が大きなテーマでしたか
山崎
 美深町では昭和28年に天塩川氾濫による大水害が発生しました。そのため、天塩川の洪水対策として築堤の整備が緊急の課題だったようです。それから美幸線の誘致でしょう。国道40号線はまだ砂利道の時代でした。当時、松浦先生は予算確保に大きな力を発揮されたと聞いています。  町長、道議を歴任した西尾六七先生は教育に熱心でしたね。戦後間もなく道立の農業高校に先駆けて町立酪農学校を独自に設置するなど、先見性がありました。将来を見据えて一次産業の担い手を育てようという考えだったと思います。さらに、広域連携にも取り組まれていたと聞いています。いまでは酪農、畜産が美深町の主力産業に発展しています。
――社長の略歴をお聞きしますが会社への入社年は
山崎
55年です。大学を卒業後、旭川の(株)北野組で3年間お世話になってから帰ってきました。いろいろな現場を経験させてもらいましたが、大きな現場としては旭岳に向かう道道大雪山層雲峡線の工事が思い出に残っています。飯場暮らしも経験しました。  美深に帰ってきた55年当時は、中曽根内閣のマイナスシーリングで公共事業のそれまでの伸び率が一服状態になった時期でした。それでも公共事業は右肩上がりでした。今のように仕事が少なくて心配することはなかったのですが、小泉政権が誕生してからは、公共事業はピーク時の半分です。
――公職はありますか
山崎
 現在は商工会の役員だけですが、平成11年に父が町議を引退したのを受け、11年から15年までの1期だけ町議を経験させてもらいました。しかし、二足のワラジより本業に専念しようと考え、2選出馬は断念しました。税金から議員報酬を頂いている以上は公務優先が私の考えです。反面、父は松浦先生に仕えていた関係もあって、政治の世界が好きでしたね。
――農業者が安心して生産に励むためにもインフラ整備は必要絶対の条件ですね
山崎
 そのとおりですね。
▲「びふかアイランド」天塩川カヌーボート乗り場 ▲日本最北端の水田と畑作酪農地域
――西尾氏が酪農学校を設置したとのことですが、美深町では農業基盤整備事業に早い時期から取り組まれていたのですか
山崎
 美深は昔から水田の北限地帯と言われてきました。地方の農家が安心して農業経営できる環境づくりが、最終的に食料の自給率向上につながりますから、そのお手伝いを私たちができれば、これほどうれしいことはありません。  また、道路は農産物の流通にも影響します。牛をセリにかける場合、移動中の道路事情によっては体調を悪くし、セリの価格に影響するという話を聞いたことがあります。
――戦後、上川管内もインフラ整備は急速に進みましたが、高速道路や河川整備など課題は多いのでは
山崎
 私の考えですが、北海道自体、インフラ整備の第二段階に入ったのではないでしょうか。戦後間もなく、一ケタ国道、二ケタ国道の整備、それから一級河川の治水対策を早急に実施しなければならなかった。公共投資も第二段階に入り、費用対効果のモノサシで公共事業の是非が議論されがちですが、そうなれば地方は医療過疎にますます拍車がかかります。過疎地域ほど公共で支える仕組みが必要です。交通手段ももっと充実させないと、地方切り捨てになりかねません。
――美深町は稚内と旭川との中間地点。美深町のように幹線に位置していながら、人口は14,000人を超えていたピーク時の約4割にまで落ち込んでいます
山崎
 人口が最も多かった昭和35年当時はモータリゼーションの時代ではありませんでした。今は車社会で、消費人口なり流通人口は常に移動しており、人口の減少がそのまま経済の停滞に連動しているわけではないので、そんなに悲観することはありません。  ただ、公共投資が第二段階に入り、より質の高い事業が求められていることは確かです。
――社長は、「北北海道に高速道路を実現する住民の会」で、企画広報の責任者となっていますね
山崎
 代表は名寄市の方で、下川町、美深町、中川町、音威子府村の5市町村で構成しています。士別剣淵までは高速道路が開通しているので、今後、士別剣淵〜名寄間の早期開通が地元の悲願。先月も国交省に要請活動を行ったところです。民間の活動は昔の方がもっと活発だったと思います。最近は「公共事業は悪」のようなうがった見方が一部にありますが、いささか心外に感じています。  いま下川のサンルダムの建設計画に対して話題が高まっていますが、下川町を含め天塩川流域の住民で反対している方々はほんの一握り。治水対策はダムのほかに築堤、河道、護岸、頭首工などの整備計画を総合的に立てているので、ダムだけを取り上げて議論するのはおかしい。  ダムは水量調節の機能を持っているので、渇水期の利水対策のほかに、特にカヌーやイカダなどイベントの実施にあたり観光振興の面も見逃せないことを理解してほしいものです。
――現在維持管理もなさってますか
山崎
 美深管内の道路、河川、公園の維持管理、除雪、災害対応に24時間態勢で取り組んでいます。社員は、地域の大動脈を守っているという気概を持って業務に励んでいます。
▲大型車の往来が多い美深町国道40号線と緊急車両
――全国的に「災害に強い道路づくり」を目指していますが、現状は
山崎
 音威子府〜中川間は一本道で、昨年、音威子府バイパスが着工しましたが、早期完成が待たれます。  昭和56年の大洪水の際、国道40号が決壊し、中川町は完全に陸の孤島になりました。当社の中川町の現場にいたスタッフが浜頓別経由で美深に戻ったことがありました。どんな過疎地であっても一本しか道路がないのは絶対駄目です。救急医療を考えると助かる人も助からない。費用対効果という経済合理性だけでインフラ整備の在り方を論じてもらっては、はなはだ迷惑な話。地域住民が生きていくための基盤ですから。「田舎に人は住むな」というなら、農業の崩壊につながり、食料自給率の低下を招く悪循環に陥ります。したがって、インフラ整備に終わりはありません。
――社長としての経営理念をお聞かせ下さい
山崎
 品質、安全、利益の確保の三拍子が揃っていないと企業経営は安定しません。「地域の振興に寄与する」、「災害を防止して社業の進展を期する」などを社訓に掲げ、さらに品質システムの効果的な展開を明確に打ち出していきます。
会社概要
建設業許可:北海道知事許可(特・般)上第20号
従 業 員 数:46人
 有資格者  1級土木施行管理技士 15名
         2級上木施行管理技士  7名
         1級建設機械施工技士  1名
         2級建設機械施工技士  3名
         2級建築施工管理技士  5名
         2級造園施工管理技士  2名
         2級管施工管理技士   1名
売 上 高:  17年度 1,460,059千円
      18年度 1,215,659千円
事 業 内 容:
 土木一式・建築一式・舗装・とび、土工請負
 鋼構造物・造園・水道施設・管工事請負、除排雪請負
 石油類の販売及び給油所経営、一般区域貨物自動車輸送事業
 損害保険代理店
事 業 所:旭川出張所 札幌出張所

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