建設グラフインターネットダイジェスト

〈建設グラフ2008年8月号〉

寄稿

自然環境に配慮した農業村整備事業の推進

――自然環境と調和した農村空間の創造

根室支庁農村振興課 課長 鈴木 佳孝

管内の概況
 根室支庁管内は、根室市、別海町、中標津町、標津町、羅臼町の1市4町で構成されており、北海道の最東端に位置し、北東部はオホーツク海に、南部は太平洋に面しています。
 人口は、平成17年国勢調査によると84,057人で中標津町がわずかに増加傾向にあるが、ほかの市町は減少しています。
 面積は、約8,534km2(北方四島を含む)で全道の約10%を占めています。また、北方四島を除いた面積は、3,498km2で鳥取県とほぼ同じ広さとなっています。
 管内の気象は、根室半島及び沿岸部では海洋性気候、

自然環境
 管内は、知床連山や根釧原野の地平線など、雄大な自然景観を有し、多様な野生生物が生息する北海道のなかでも豊かな自然が残された地域であり、原始的な自然で最後の秘境と呼ばれ、平成17年7月にユネスコ世界自然遺産に登録された知床半島を有する「知床国立公園」や、日本最大級の砂嘴の野付半島や風蓮湖などの湖沼を有する「野付風連道立自然公園」など4ヶ所の自然公園をはじめ、国指定の原生自然環境保全区域や2ヶ所の道自然環境保全地域、13ヶ所の鳥獣保護区域が指定されています。
 これらの地域には、タンチョウ、シマフクロウ、オジロワシ、クマゲラなど多くの希少な鳥類を始め、多くの野生生物の重要な生息地となっており、事業を推進するうえに置いてもこれらの環境に配慮し、調和のとれた整備が必要となっています。

農業状況
 管内の農業は、昭和29年から根釧パイロットファーム建設事業や昭和48年から新酪農村建設事業が実施され、現在は豊かな土地資源を基盤に自給飼料を活用し、1戸当たり耕地面積が68.8f(全道平均の約3倍)・飼養頭数120頭に及ぶ大規模な草地型酪農が展開され、生乳生産量では全道の約2割にあたる77万5千トンとなっています。
 しかし、近年、国際化の進展、輸入飼料・燃料の高騰、飲用牛乳の消費の落ち込みなど厳しい生産情勢に加え、担い手の確保や環境問題への適切な対応が強く求められるようになっています。

農業農村整備事業の推進
 根室支庁管内における平成20年度農業農村整備事業の当初予算は、厳しい予算環境の中で道営27地区、約21億2千5百万円、団体営9地区、約2億3千7百万円で合わせて36地区、約23億6千2百万円(対前年比95.5%)を確保することができました。
 事業別の予算は、畑地帯総合整備事業が2地区で4億8千6百万円を予定しており、地元の町とアロケーション事業として営農用水事業を実施することになっています。昨年3年間の債務負担行為限度額を設定し、浄水場設備整備を設計施工一括発注方式で発注しましたが、今年度の秋までには施設が完成する予定で、その後施設、機械設備などの機能試験を行い来年の夏には完成する事になっています。
 草地整備関係事業は、3事業を実施しており13地区、約8億6千9百万円となっており、全体事業費の約41%を占めています。
 草地整備事業の実施に関しては、河川汚濁防止のための緩衝帯草地の設置、土砂流失防止対策、雑草対策などの支庁独自の環境に優しい取り決め事項を定め、受益者に計画段階から十分説明して理解を求め事業を実施しています。
 農道関係事業は、3事業で11地区、6億8千万円を予定していますが、新規地区の8地区は調査設計を実施することになっており、工事は来年度から本格的に実施となる予定です。
 海岸保全施設整備事業は、1地区、約1億5百万円で離岸堤1基を整備する予定です。
 新規地区は、草地整備事業(担い手中核型)が上風連地区、別海東地区、上春別北地区、光進地区の4地区、畑地帯総合整備事業がケネカ地区の1地区、農道整備事業が栄進地区、美原東地区、中島第2地区の3地区、農道特別対策事業が19線地区、矢臼第2地区、39線地区、北17号地区、西春別第4の5地区、全体では13地区となっています。
 道営事業の繰越予算を合わせた実施予算は、約26億9千万円(対前年比101.1%)となり、これらの予算執行にあたりましては、地元要望を十分確認のうえ北海道農業農村整備推進方針に基づき適期に事業を執行する予定でおります。
 また、予算の確保という観点から、今年度から始まる北海道特定地域連携事業推進費(次期道州制モデル事業)の要求をしているところです。
 管内農業の酪農経営をめぐる情勢は非常に厳しい状況に加え、食の安全・安心志向の高まり、環境問題への適切な対応などが強く求められています。このため、生産性の高い草地基盤整備、営農用水の整備などの農業農村整備を計画的・効率的に進め、飼料自給率の向上を踏まえた低コストで安全・安心な生乳生産、良質な乳製品の安定供給などを目指すとともに、河川環境の保全等に配慮しつつ、地域農業の持続的な発展及び豊かな農村空間の創造に資する事業展開が重要と考えております。
 管内は道内有数の酪農専業地域であり、地域資源を将来にわたり適切に保全管理する必要がありますので、19年度から農地・水・環境保全向上対策事業が導入されたことにより、施策の普及啓発や地域住民の方々が地域の資源を知り、守り創造し、育てていく活動組織への支援などを関係機関等と連携して取り組んでまいります。
 また、農村の過疎化・高齢化が進み農村の活性化が急務となっていることから、北海道農山漁村活性化プロジェクト支援交付金、更には新規事業の農山漁村地域力発掘支援モデル事業などのソフト事業を有効に活用できるように各市町との連絡強化に努め、支援していくことにしています。


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