建設グラフインターネットダイジェスト

〈建設グラフ2008年8月号〉

寄稿

地域資源を活用したまちおこしを

――低タンパク質米の生産は全道一

留萌支庁産業振興部農村振興課 課長 今井 正

▲遠別町・金浦原生花園からみた夕日と利尻富士 ▲風車のふもとで農作業(苫前町)

【留萌のすがた】
 留萌支庁は、西部が日本海に面し、南北に155kmと縦長の地域です。
 管内総面積の約81%が森林で、北部には天塩川流域から宗谷支庁にかけて国立公園に指定されているサロベツ原野が広がり、中南部では海岸近くまで丘陵が迫る地形が多く、河川沿いに平坦地が分布しています。
 南北194kmに及ぶ海岸線は「日本海オロロンライン」の愛称で呼ばれ、暑寒別天売焼尻国定公園などの景勝地を有する自然に恵まれた地域です。
 ここ留萌管内から観る夕陽は「日本一の夕映え」と言われ、夕陽を題材・話題にしたエリア、モニュメント、イベントなどが数多くあります。
 夏には海水浴を中心に多くの観光客が訪れています。近年は、各地で温泉を利用した施設の整備が行われ、従来の通過型観光から通年型・滞在型観光への取り組みが進められています。
 冬期間には北西の季節風が強く、日本有数の風力発電施設の適地とされ、地方自治体、第三セクター、民間企業により大型の風力発電施設が建設され、現在風車台数は95台となっており、全道の総発電量の55%を占めています。管内を縦断している国道232号をドライブしていると大きな風車が目に入ってきます。
 管内の恵まれた自然環境を活用したさまざまな施設や産業が生み出され、農業農村整備においても地域資源を活用し、創意工夫をこらした取り組みを積極的に行うことで、地域の活性化や更なる発展を目指しています。

▲コンバインによる稲刈り風景 ▲ぶどうの収穫(増毛町)

【留萌の農業】
 管内では、南北の異なる自然条件を生かし、酪農・稲作・畑作・野菜・果樹などバラエティーに富んだ農業が営まれています。
 酪農は、幌延町、天塩町を中心に経営規模の拡大、近代化が進み、管内農業産出額の半分を占める大規模な経営が展開されています。
 稲作・畑作・野菜は、遠別町以南で生産され、特に留萌地域は道内有数の良質米産地として高く評価されています。お米のおいしさを決める要因の一つが「タンパク質」の含有量で、タンパク質の少ないお米は吸水が良いため、炊きあがりがふっくらとしたおいしいご飯になります。
 留萌管内米は、お米に含まれるタンパク質が6.8%以下である低タンパク質米の生産割合が全道一高く、平成17年度、18年度、19年度の3年連続、食味の優れた産地として評価されています。また、野菜も、その気候風土を生かし、クリーンな野菜が生産され、道内はもとより本州市場へ出荷され、高い評価を得ています。
 果樹は、増毛町で、りんご、おうとう、なし、ぶどうなど多様な種類の栽培が行われ、道内有数の産地となっています。
 農業経営規模が拡大している反面、農家戸数、農業就業人口が減少しており、農業就業人口のうち65歳以上の占める割合が38%と全道平均を上回っている状況です。
 支庁では、留萌農業の持続的な発展のため、農業を営む基盤となる農地・農業用施設の整備を基本とし、経営者となる認定農業者、農業生産法人、新規就農者、女性農業者への情報提供や地域の活性化・営農に対する支援事業を進めています。

▲堆肥化処理施設内で稼働しているロータリー撹拌機(小平町) ▲施設の長寿命化を図るため機能診断調査を実施した頭首工(遠別町)

【留萌の農業農村整備】
 留萌支庁の平成20年度農業農村整備事業は、道営事業が15地区・11.7億円、団体営事業が6地区・0.7億円を予算計上し執行しているところです。
 道営事業は総合整備事業のなかで、将来の農業生産を担う基盤の整備(主に暗渠排水)と農地に水を供給する用水路の整備を重点的に整備しています。
 生産基盤の整備は、「弾力的な整備」手法を採用し、効果の早期発現とコスト縮減に努めています。たとえば、暗渠排水であれば、ほ場内の排水不良箇所を事前に聞き取り、暗渠の配線間隔を密にしたり、疎水材の材料を地域内で容易に確保できるチップやモミガラにしています。
 農業用施設においても、施設の長寿命化を図る観点から、施設の劣化が致命的な状況になる前に適切な補修・補強等の対策を取ることで供用年数を効率的に延伸させる方法が確立され、ストックマネジメントの取り組みも推進していくこととしています。
 中山間地域総合整備事業・小平地区では、町内で発生する牛糞・籾殻・野菜残渣・下水汚泥・ホタテ貝殻等を活用した堆肥化処理施設が完成し、環境への負荷軽減や化学肥料に頼らない安全で質の高い農産物の生産を推進していくこととしています。
 また、農地や農業用施設を整備するハード的な整備ばかりではなく、地域活性化施策に掲げられているソフト事業の推進にも力を入れています。
 昨年度から本格的にスタートした「農地・水・環境保全向上対策」が代表的な施策で、管内においても、6市町村・30地区・約3,000haの農用地を対象に、農地や農業用施設の維持管理作業を地域住民が一体となって保全活動と営農活動が出来るように支援をしています。
 地域の貴重な資源の保存や豊かな心を創造する農村環境の保全が、地域住民のみならず、都市住民からも大きな期待が寄せられています。


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