建設グラフインターネットダイジェスト

〈建設グラフ2008年8月号〉

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40年の診療史を引き継ぐ地域の基幹病院

――「患者主体」の理念を計画の基本に

シリーズ・医療の危機を救う  労働者健康福祉機構 和歌山労災病院


▲和歌山労災病院 北側外観

 和歌山労災病院は、40年にわたって地域に密着した診療を行ってきたが、老朽化が進んでいたため移転新築が進められている。敷地は最寄駅である南海加太線「八幡前駅」から徒歩5分の住宅地に位置しているため、形態・外構計画においては地域の景観にも十分に配慮し、親しみやすい病院を目指している。
 構造は鉄筋コンクリート造、地上6階建、延べ面積約22,000uで、病床数300床、外来診療科目17科で構成されている。免震構造の採用による安全性の向上、医療情報システムの導入による施設機能の効率化、手術・救急部門など診療部門の強化、病棟部門の充実による高度急性期医療・救急医療・地域医療への対応強化、療養環境の改善などにより、河西地区の基幹病院機能を担う高機能な施設を目指している。
 建物の形態は、近隣への日照妨害や、威圧感を極力抑制するため、敷地内中央にコンパクトに配置し、将来の増築にも対応できる計画としている。外構は、可能な限り敷地内緑化を図り、散策路や憩いのスペースを整備するなど、地域住民に親しみやすい施設となるよう配慮している。
 平面計画は、「患者主体」の理念を計画の基本とし、外来部門や放射線・検査部門はわかりやすく快適で、利用しやすい配置としている。救急・手術部門は、放射線・検査部門との緊密な連携により、今後の高度急性期医療・救急医療に十分に対応できる施設計画としている。供給部門は屋外スロープを利用し、2階から物品の搬出入できるようにすることで、動線を一般外来者や救急車輌などと明確に分離するよう配慮している。
 病棟部門は生活空間としての快適性や安全性の確保、看護の効率化を図った配置としている。病室は近年の生活水準の向上を考慮して、1床率の向上をはかり、4床室の場合は急性期対応を重視し、凸型ではなくベッド廻りの介護スペース確保が容易な□型の病室としている。各階には食堂・デイルームやデイコーナーのほか、面談室なども設け、入院者のアメニティーとともに、プライバシーにも十分に配慮している。
 こうして新しく生まれ変わる和歌山労災病院は、40年の診療の歴史を継承し、河西地区の基幹病院として地域に愛され、長く貢献することを目指している。

概要
所 在 地: 和歌山市木ノ本93-1
病 床 数: 300床
診療科目: 17診療科
敷地面積: 21179.11u
建築面積: 6684.4u(本館)
延べ面積: 21887.58u(本館)
構造方式:鉄筋コンクリート造/免震構造
階  数: 地上6階、地下無し

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