建設グラフインターネットダイジェスト

〈建設グラフ2008年6月号〉

interview

釧路市建設事業協会総会で会長に就任

――釧路−網走間の道路整備で釧路港の活性化を

釧路市建設事業協会 会長、タカオ工業株式会社 代表取締役
尾 實氏

尾 實 たかお・みのる
平成 9年 5月 釧路町建設事業協会 会長
平成10年10月 釧路商工会議所1号議員 3期目
平成20年 4月 釧路市建設事業協会 会長
タカオ工業株式会社
釧路市住之江町2番7号
TEL 0154-23-1271

 道東の拠点都市・釧路市は北洋漁業の衰退、炭坑の廃坑などで厳しい状況に置かれている。重要港湾釧路港を擁しながらも、「せめて釧路〜網走間の道路が整備されれば、フェリー誘致も可能になり、相乗効果が期待できるのに…」と、長年地域のインフラ整備に貢献してきたタカオ工業の尾實社長は無念の思いを語る。4月18日に釧路市建設事業協会総会で会長に就任した同社長に、釧路地域の将来性と、地域としての要望を伺った。

――社歴からお聞きします
 前身は、親戚が昭和39年11月に創業した原田組という会社で、今の日本製紙の下請け企業でした。私は高卒後に、釧路市役所に臨時職員として就職しましたが、4年後になってから、後を引き継いで欲しいと依頼され、26歳の若さで名義だけを貸したのです。それが倒産してしまい、負債も残ったために、いよいよ私が引き継ぐこととなりました。その時に初めて差し押さえなど、倒産会社の現実に直面しました。
――マイナスからのスタートだったのですね
 43年前で、名前を貸したばかりに負債300万円でスタートしました。若かったのでしょう。出身は釧路工業高の土木科だったので、土木施工に従事しましたが、当時は実績がなくても、ある程度は受注ができた時代でした。
――これまでの施工実績で、特に印象深い現場はありますか
 区画整理事業を受注し、国道38号線鳥取大通沿いの整備に当たりました。その当時は沿道にあった十條製紙(日本製紙)の花壇が、国道側に並んでおり、それらを移転するため600万円くらいで受注できたのです。会社を引き受けた直後の大変な時期で、市の計画では花壇を解体し、新たに移設する予定でしたが、今まで使っていたものを修繕して大切にすれば、敢えて壊して捨てる必要はないのです。そこで、既存の花壇の再利用を私から提言したところ、了解を得られて受注できたのです。  このお陰で、借金の返済ができましたが、私はこの時に思いました。人間は真剣に考えれば、いろいろなアイディアが浮かぶもので、いかに苦しくてもここぞとなれば様々なアイディアが思いついて何とかなるものです。この実感が、43年間にわたる企業経営の出発点だと思っています。
――会社経営において、常に心がけていることは
 発注官庁による経審(経営事項審査)の導入によって、意識は完全に変えられました。建設会社にしてみれば厳しいものがありますが、健全経営のために常に経審を念頭に置くのは良いことだと思います。  そして、安全管理については、毎月管理者による現場のパトロールを実施し、思いついたことは気兼ねなく提案するように言っているため、現場技術者の心構えも変わってきました。このように収益と安全の確保が実現できないなら、建設業から去れということでしょう。
――どの会社も将来に深刻な不安を抱えています
 経営者である私が不安がっていては終わりです。ただ、従業員は安全対策と収益性を両立しなければならないので、辛いでしょう。
▲社屋
──釧路地方の地域的特色と将来に向けての要望は
 釧路の良さは、帯広と違って札幌からはほど遠いために、ひとつの独立国家を作れる地理的条件にあることだと思います。ただし、そのためには周辺のインフラをしっかりしなければ、人が集まって来ません。  釧路市の北隣り(阿寒町は釧路市と合併)は、網走管内です。その、オホーツク地域は1月から3月にかけて、流氷により港が使えません。現在は、網走と旭川間に高速道路が建設中で、網走と釧路間の高速道路は未整備です。冬期間のオホーツク地域の物流において、釧路港を使ったなら、道路の距離はわずかで済むのです。その分、ガソリンも少なく済みます。しかし、網走と釧路間の道路網が整備されていないために、みな旭川へ行ってしまいます。  物流においても、網走は苫小牧方面から移入していますが、網走と釧路間は山地があり、それがネックになっています。トンネルでスムーズに車が流れるようになれば、お互いに相乗効果があるので、網走と釧路間の路線整備は早く実現して欲しいものです。道路整備によって、釧路港へのフェリー誘致も期待できますから。
――釧路町の自衛隊協力会副会長に就任していますね
 地域として自衛隊を応援する組織です。災害時はとかくお世話になり、地域に必要な経済効果もあるのですが、一般市民とはあまりなじみがないためです。  一方、米海軍のホームビジネット支援にも取り組んでおり、これは別海での合同演習に参加する米海軍兵のホームステイを支援する活動です。別海だけで四国に匹敵する面積ですから、それを有効に使った方が良いのです。  その意味では、我が国の3大都市圏と地方では事情が全く異なるわけで、この地域に投資してくれる民間投資家はいないのですから、せめて同じ国民として最低限度の公共投資はして欲しいと思います。
──この4月には、地元釧路市建設事業協会の会長にも選任され、苦況の中での就任となりましたが、業界のために、どんな施策に臨みますか
 村井前会長の後を引き継ぐこととなり、身が引き締まる思いです。建設業界は、入札契約制度や道路特定財源など、経済的な問題もさることながら、地域を護る地場建設業として災害への対応や社会貢献など、市民の信頼を得るサービスも求められています。  一方、阿寒・音別両地区の建設協会との合併問題もあり、協会としては今年度中に方向性を決めることになります。その他、「くしろ元気ファンド」への支援、産消活動の推進など、一企業ではなし得ない施策を多角的に行うための予算を編成し、実行していきます。  業界はかつてない危機的な局面にありますが、これまでも、そしてこれからも地域の雇用と経済、そしてその発展を支えるインフラ整備に貢献する業界であるとの自負を以て、重責を全うしていきたいと思います。
会社概要
創業・設立:
 昭和39年11月丸惣原田建設創立
 昭和53年 3月タカオ工業(株)と社名変更
資本金:21,000,000円
許可番号:知事(特-19)釧第364号
許可業種:土木、建築、とび・土工、大工、
     鋼構造物、しゅんせつ
社員数:18名
出先:札幌営業所
関連会社:株式会社タカオ企画

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