建設グラフインターネットダイジェスト

〈建設グラフ2008年6月号〉

寄稿

災害や冬期雪害に耐える道路設備が重要

――観光客増加で冬期の安全確保が急務

札幌土木現業所事業部長 土栄正人

土栄 正人 どえい・まさと
昭和33年 3月生 札幌市出身
昭和55年 3月 北海道大学工学部卒
昭和55年 4月 入庁
平成 5年10月 室蘭土現道路建設課舗装係長
平成 8年 4月 企画振興部計画室主査
平成10年 4月 建設部道路計画課主査
平成12年 4月 建設部道路計画課道路企画係長
平成14年 4月 建設部都市計画課主幹(小樽市派遣)
平成16年 4月 建設部道路課主幹
平成19年 6月 現職/td>

管内の地形、気象などの地理的自然条件
 札幌土木現業所は、北海道のほぼ中央に位置する石狩・空知の両支庁を所管区域とし、管内人口は約270万人と全道の約48%を占めています。広大な面積の中に16市16町1村が広がり、また、管内中央部には石狩川が流れ豊かな石狩平野が広がっています。
 道都札幌市を擁する当管内は、北海道の政治・経済において中心的役割を担っており、新千歳空港周辺や石狩湾新港地域などに道内外の企業の工場進出が相次いでいるほか、札幌市近隣では人口も増加傾向を示しています。
一方、管内は農業も盛んで、石狩管内は稲作を中心に野菜、花卉を組合せた複合型農業が、空知管内は稲作を主体とした専業型農業が展開され、米は全道の半数近くが生産されています。また、新千歳空港を擁するなど国内外との交通の利便性に恵まれていることから、支笏洞爺国立公園など豊かな自然を活かした観光地や、国際的な知名度を持つ札幌を訪れる観光客も増加しており、地域間の連携による観光振興を図ることにより、「緑豊かな田園地域」「食と観光・リゾート地域」としての発展が期待されている地域です。

管内の道路交通上の深刻な問題点や重要事項
北海道は全国の22%を占める広大な大地に、市町村が分散する広域分散型の社会を形成しており、都市間距離は全国の倍近い距離となっています。また、道内における貨物輸送の98%、人の移動では90%が自動車交通に依存しており、さらに積雪寒冷地であることから、冬期には旅行速度が低下するとともに、交通事故発生件数も増加するなど特有の事情があります。
 なかでも当管内は、中央部を縦走する石狩川が東西の交通を分断しており、また、気象の面からも道内有数の多雪地帯を抱えるなどの状況を有しており、地域の生活や経済活動の面はもとより、観光の面などからも、冬期も含めた安全で安心な道路交通の確保は重要な課題となっています。特に旧産炭地を抱える空知管内では、過疎化、高齢化が進むなか、地域医療を取り巻く環境は非常に厳しいものがあり、救急医療体制の面からも地域の中核医療施設への道路交通の確保が求められています。
 一方で、人口が集中する道央圏やその周辺地域では、都市部の渋滞の緩和による円滑な交通の確保や、企業立地が進む中で高規格幹線道路や新千歳空港へのアクセス強化を図る必要があります。
 さらには、既存ストックの老朽化対策も喫緊の課題の一つです。本道は戦後、急速に社会基盤の整備を進めてきましたが、今後これらの更新が必要な時期を迎える中、厳しい財政状況のもと施設を適切に維持管理していくためには、ライフサイクルコストを考慮した更新や既存ストックの有効活用を図っていかなければなりません。
加えて、修繕、補修等が主体である単独事業の予算が近年大幅に削減されてきており、これまで以上に施設の維持管理が大きな課題となってくると思われます。

それらを解決するために必要な処置、施策とは
 災害に強い安全・安心な道路や冬期の安全で快適な交通の確保など、今後とも道路整備の重要性は高く、限られた財源の下、効率的・効果的な整備を進めていく必要があると考えています。都市部における渋滞緩和のための立体交差事業や幹線道路の整備は地域の経済活動を支える上で極めて重要であり、また、過疎化や高齢化の進む地域においては、道路はまさに住民の生活を支えるライフラインであり、着実な整備と維持管理が求められています。
 既存ストックの有効活用については、老朽化の進みつつある橋梁で長寿命化の取組をスタートさせましたが、橋梁点検を着実に行い、橋梁マネジメントシステムを活用しながら修繕計画を策定し、長寿命化による経費の縮減、平準化を図ることが重要であり、早急に取組を進めていかなければならないと考えています。
 また、限られた予算のなか、ユーザーが日々利用している道路施設の維持管理については、サービス水準の低下を極力招かないよう留意しつつ、除雪や草刈りなどの維持管理水準の見直しを進めてきました。引き続き、地域の生活や経済活動を支える道路の交通機能を維持していくためには、今後は維持、修繕のための一定の財源を確保していくことが必要不可欠であると考えています。

現在、整備中の工事概況等
 具体の事業内容について触れていきますと、石狩川を跨ぐ美浦大橋の新設や、月形大橋及び江竜橋の架換を促進し、地域間の物流の円滑化を図っていきます。また、岩見沢市栗沢方面と南幌町を結ぶ清幌橋については老朽化が進んでおり、安全・安心な交通を確保していくために架換工事を促進します。
 都市部においては、国道36号の混雑緩和、大曲工業団地へのアクセス強化のため仁別大曲線の改築事業を進めます。また、野幌地区のJR函館本線連続立体交差事業を本格化し、江別市が取り組むにぎわいの都心づくり「江別のかおづくり事業」と一体となって、まちづくりと円滑な市街地の交通確保を図ります。
 その他にも、国道12号の補完ルートで、旭川から留萌方面への短絡路である旭川多度志線、富良野方面へのアクセス道路として観光振興を支援する岩見沢三笠線の改築工事など、地域の生活や経済活動を支える道路整備に全力で取り組んでまいります。


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