建設グラフインターネットダイジェスト

〈建設グラフ2008年6月号〉

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地域医療の確立と質の高い医療提供を図る

――道北唯一の基幹病院として役割を担う

名寄市 名寄市立総合病院増改築工事

 名寄市立総合病院は、昭和12年開院以来これまでに数回にわたり増改修を重ねて本日に至っているが、現在の病院は平成4年に新病院として診療を開始し、道北唯一の基幹病院としての役割を担ってきた。
 その後における医療情勢の変革に伴い、平成10年に感染症、人工透析棟の増設及び増床を行う中で施設運営を図ってきており、現在同病院は、救急告示病院、地方センター病院、地域センター病院、地域災害医療センター、第2種感染症指定医療機関等に指定されている。
 今回の増改修工事は、診療規模の拡大により医師数が増加し、医局、手術室等の拡張も必要となっていることや、第5次医療制度改革関連法による、医療機関の機能分担化や地域医療の確保及び医業経営の近代化といった質の高い医療の提供を図る施設とするために、小児科における24時間診療体制の充実を含めた救急外来診療の充実と、ICU病棟の増築と改修が主な事業です。

1.平面計画
@ICU棟
 今回の増築において、機能的な動線を確保すことが大事な場所は、ICU棟の2階となります。手術部と病棟へのエレベーターホールとに接続し、患者搬送を効率的に行うことが出来、また医局からの単独動線も確保し、スタッフ休憩室、器材庫、更衣室をICUと手術部で兼用できる室配置とし、無駄なスペースがないよう配慮している。
 ICU病棟は、8床室を全て見渡せる位置にスタッフステーションを置き、看護動線の短縮化を図る。また各ベット間は壁で仕切り、患者本人や家族のプライバシー確保に努める。
A救急棟
 現在の救急部とほぼ同じ位置で増改修を行い、救急車での搬送や夜間休日外来の利用者も、これまで通りのルートで利用することができる。1次・2次救急の患者と3次救急の患者動線を明確に分け、3次救急からは待合を経由することなく手術部に移動出来る動線を確保する。
 また、現在の救急部の改修エリアに生理検査部を設け、中央採血室も隣接させて外来検査のスペース不足にも対応していく。
B外来レストラン棟
 救急棟の増改修に伴い移設される外来レストランは、これまで「奥」のイメージが強かった場所から離れ、エントランスホールに直結して増築を行うことで、外来患者が利用しやすくなる上、病院のイメージアップを図ることが出来ると考えている。

▲配置図
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2.外観イメージ
@ICU棟、救急棟
 既存棟にはさまれる形で増築するICU棟と救急棟は、既存棟の外観イメージを継承したものとし、既存棟と同色の濃淡2色のタイルにより、建築基準法上は別棟でも一体感のあるものとしている。また、救急棟の救急入り口部分に突出させたコンクリート壁には明るい塗装(白色)を施し、救急入り口部分を分かりやすくし、誘導する役割を持たせる。
A外来レストラン棟
 エントランスホールのガラスカーテンウォール部分に連続して増築するレストラン棟は、同様のガラスカーテンウォールを用いて「ガラスの箱」の意匠とし、明るく開放的な空間とします。これまでの外来食堂のイメージを一変し、利用しやすく市民に親しまれるものを目指している。

3.構造計画
 全ての増築部分は構造的にも別棟の形式を取り、既存棟に遡及をさせない構造とし、また、既存棟と同レベルの耐震性能を確保するため、重要度係数は1.25とした。杭には、狭隘な敷地での施工であることと、工事騒音低減や残土の減量化のため先端羽根付き鋼管杭を採用している。
@ICU棟
 ドライエリアを越えて接続しなければならないICU棟は鉄骨造とし、斜材を入れた本体(ICU)からの吊り構造形式によって、6m程度の渡り廊下を支える。外壁は押出成形セメント板を下地にタイル張りとしている。これは感染症病棟増築時にも用いた工法であり、RC造の既存棟とも違和感をなくした。これら乾式工法を多く採用することで、既存棟との間隔の狭い場所での施工を容易にし、また、既存病室への騒音低減に効果を上げている。
A救急棟、外来レストラン棟
 鉄骨造とRC造を比較した場合、構造的にも要求される柱サイズは、一般的に鉄骨造が細くなりますが、耐火被覆や柱脚部の処理のために柱を囲う仕上げが必要になり、外観上の柱サイズは大きくなることから、面積も小さく平屋建てのこれら2棟では、RC造にて無駄なスペースが生じないよう計画を進めている。

工事概要
増築面積
     1) ICU棟       1,069.66u
     2) 外来レストラン棟 136.42u
     3) 救急棟 155.68u
     4) 既存棟 23,595.08u
名寄市立総合病院増改築工事に貢献します
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