建設グラフインターネットダイジェスト

〈建設グラフ2008年6月号〉

寄稿

杜の都仙台で2本目の地下鉄建設

――東西線の開通で市内四方へ交通ネットワーク形成

仙台市交通局東西線建設本部 本部長 高橋 秀道

高橋 秀道 たかはし・ひでみち
昭和25年5月6日生 仙台市出身
昭和51年 東北大学大学院修了(土木工学専攻)
昭和56年 仙台市役所採用
昭和59年 仙台市交通局高速鉄道建設本部建設課設計係長
平成 5年 仙台市都市整備局新線対策室長
平成11年 同 総合交通政策部長
平成14年 同 次長(東西線推進担当)
平成15年 仙台市交通局東西線建設本部長

▲仙台駅イメージ ▲連坊駅イメージ

 青葉が薫る杜の都仙台で,東北初の地下鉄となる南北線を開業してから20年を迎えた昨年、2本目の地下鉄「東西線」(南西部から都心を経て東部流通業務地区(動物公園〜仙台駅〜荒井)に至る約14.4km)の建設が本格的に始動した。平成19年度末で、全線の6割に当たる約9qの土木工事の発注を完了し,沿線は重機を連ね、目を向ける市民の期待が膨らんでいる。
 仙台市は、昭和40年代からの高度経済成長に伴う関東圏や東北近県からの人口流入により、郊外部へと市街地が拡大し続けたことや、自動車の急激な普及が相まって、都心部に押しよせた自動車の波にのみ込まれ、昭和初期から市内公共交通として主役に就いていた市電が、昭和51年にはその座を退いた。それ以降もなお急増した自動車交通量に道路整備が追随できず、市内移動の公共交通を担ったバスは、拡散した郊外部の面的な輸送サービスの困難性に、路面渋滞による定時性の喪失が追撃し、採算性が成立しにくい状況に追い込まれた。

▲工法別路線図
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 このような中、昭和62年に市電の代替基幹交通として南北線が開業し、南北方向の交通環境を一変させた。
 もとより、本市は東北の中枢都市でありながら、これまで鉄道の整備が行き届いていなかったため、南北線が開通した現在でも鉄道の空白地帯は広範囲に存在し、これらの地域では依然として自動車に頼った移動を余儀なくされている。このようなことから、将来あるべき総合的な公共交通体系を構築するとともに、新たな都市構造への転換を目指し、平成27年度の開業を目標として、東西線の整備事業が立ち上がった。
 この事業は、単に鉄道空白地域の解消による公共交通機関の利用促進、利便性向上だけにととまらず、軌道系交通機関を基軸とした交通体系とともに、これを活かしたまとまりのある市街地空間の形成を図るという長期的な視点に立った本市の一大プロジェクトである。また、今日の自動車依存型社会から環境負荷が小さく持続的発展が可能となる都市を築き、既存鉄道とともに、これを未来に継承していく都市基盤となるものである。

▲広域路線図
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 その一方で,地下鉄事業は、巨額の初期投資と運営経費が伴う事業であり、地方都市にあっても鉄道事業としての社会性と市場性といった二つの命題を共存させていくことが求められている。
 このようなことから、限られた需要の中での健全経営を達成するため、公共性、安全性、利便性を提供すると同時に、採算性の向上策として、建設コストの面では、@他事業者の工法などを参考にした効率的・合理的な建設工程管理、発注管理、A過剰投資を避けた必要最小限の施設計画(トンネル、駅舎、諸室等の小規模化、簡素化)、B既存技術の有効活用、汎用性・互換性の高い安価なシステムの採用による設備費及び保守経費の低廉化を、また、運営面では、@民間的経営手法の導入による業務の効率化や企業体質の強化、A適性かつ効率的な管理体制(組織の簡素化、管理運営の一元化)の構築、B運転・駅務業務の省力化・委託化、保守業務の大幅外注化などによる人件費、保守経費の削減等を重点とした取り組みを進めている。
 また、沿線まちづくりと連携した安定した需要の創出などの利用促進策についても積極的に推進している。
 本市の将来の都市づくりと公共交通ネットワークの構築のため、東西線は、南北線開業後の四半世紀を経て誕生する。関係各位のご協力・ご指導を拝受しながら、来る日に東西線が百万市民の新しい足として躍動することを想い、全力で事業に邁進してまいりたい。


仙台市高速鉄道東西線建設工事に貢献します
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