建設グラフインターネットダイジェスト

〈建設グラフ2008年5月号〉

interview

足寄町は幹線道路の交差する重点整備地区

――十勝の農業王国大規模草地造成パイロット事業に参画

足寄建設業協会 会長、斉藤井出建設株式会社 代表取締役社長 斉藤 健司氏

斉藤 健司 さいとう・けんじ
昭和48年3月 明星大学工学部土木建設科 卒業
昭和48年4月 株式会社斉藤組入社 取締役就任
昭和53年1月 株式会社斉藤組 常務取締役就任
昭和54年4月 株式会社斉藤組 専務取締役就任
昭和63年8月 株式会社斉藤組 代表取締役副社長就任
平成 5年4月 株式会社斉藤組 代表取締役就任
公職
平成 7年4月 帯広建設業協会 理事
平成 7年4月 足寄建設業協会 会長
平成 8年4月 北海道土地改良建設協会 理事
斉藤井出建設株式会社
足寄町南6条4丁目62番地
TEL 0156-25-2353

 十勝管内足寄町の斉藤井出建設株式会社の斉藤健司社長にご登場いただいた。同社は平成15年1月、農業土木に実績を誇る斉藤建設と隣町・本別町の井出建設が合併、再出発した十勝管内の中堅企業。道建設部のランク付け「A」同士が合併したのは業界で初めてのケースとして話題になった。それぞれの得意分野を生かし建設会社として業容に幅の広がった新生「斉藤井出建設梶vは、技術者の育成、経営資源の効率化などの面で波及効果があり、ともに代表権を持つ井出裕一会長、斉藤社長コンビの息はピッタリ。けん引役の斉藤社長に地域貢献への取り組みなどを語ってもらった。
――最初に会社の社歴と業務概要からお聞きします
斉藤
 創業は昭和28年、法人化したのが35年で約半世紀になります。一般土木、農業土木、林業土木のほか、国道の維持管理、それに農業土木の分野に入るかもしれませんが、畑に種をまく草地整備関係の事業も行っています。以前は国営でしたが、いまは道営で実施されています。
――足寄町といえば平成18年1月まで日本一広い面積で、昭和20年終戦の海外引き揚げ者の収容と食糧増産対策で本州から入植した人たちが多いと聞きます
斉藤
 戦後の足寄への入植は、復員軍人を皮切りに各地の開拓団が多かったと聞きます。一昨年の農協合併まで足寄町開拓農協が存続していました。食糧増産のため昔はコメも作っていて土地改良区もありました。
▲社屋
――社長は二代目とのことですが、やはり先代の背中を見て育ちましたか
斉藤
 父の祖父は石川県で医師でしたが、明治時代の手取川大洪水で被災し、池田町に入植しました。私の祖父は運送会社に勤務していて、足寄町に転勤したのが縁でここに根付いたようです。  私は家業を継ぐ意志があったので、22歳で大学を出て、直ぐに帰省しました。入社は昭和48年です。公共事業は右肩上がりの時代でしたが、足寄〜帯広の全線舗装が完成したのが49年か50年頃で、当時は池田〜網走間の網走本線、その後、池田〜北見間に改められた池北線も通っていた時代でした。  北海道で初めての、大規模な農地造成と草地造成の国営トマム地区パイロット事業第1号が41年から陸別町で始まり、お陰様で当社が受注しました。木の根本にダイナマイトを使った火薬抜根で、根を浮かして原始林を切り開くのです。ほぼ全域が高度利用可能な農地形態に整備され、アジアからも視察団が現地入りしたそうです。  いまの士幌町もかつては湿地帯でした。農業の基盤である農地整備で、広大な農地が生まれ、十勝の農家は日本を代表する大規模機械化農業を営んでいます。建設業としては、畑づくりを通じて地域の活性化に貢献できるのは誇りです。
――冬の凍結深度が50cmで、土地が凍るという現象を本州府県の人はなかなか理解できないようです。寒冷地ならではの技術力が求められるのでは
斉藤
 平成15年に本別町の井出建設と合併して、グループ会社に地質調査の専門会社が本別町にありますが、ボーリング調査データで土層の構成を確認し、地盤の状態によって施工が変わります。  41年の国営パイロット事業から、地質調査の業務が始まりましたが、凍った土は水分を含んで膨張しているので、動かすと土の量が減ります。夏に掘ると水分が抜けて下がるので、暗渠排水を行っても、冬に埋め戻しをすると堰ごとに畑が凸凹になります。
――本州の業者では対応は難しいでしょう
斉藤
 北海道支店でもあれば別ですが、冬季の施工は厳しいでしょう。寒冷地特有の土木技術が地場業者にはあるので、例えば北方領土や、サハリンの開発に当たることも十分可能です。
――社長にはいつ就任されましたか
斉藤
 平成5年です。北海道はまだ開発が遅れているとはいえ、一気にインフラ整備が伸びた時代ですが、今は大変な時代ですね。発注量が減るのも辛いですが、「ムダな公共事業」と言われるほど辛いことはありません。憤りすら感じます。公共事業はモノづくりで、例えば川のある地域では、橋梁の整備によって時間短縮になり住民に喜んでもらうのがわれわれの生きがいです。何ひとつ取ってもムダなはずはありません。
▲別海町南部地区風配
――公共事業に陰りが見え始め、平成15年に合併に踏み切った経緯は
斉藤
 親の代から交流があり、お互いに決算書を取り交わしていた仲でした。経営体質も似ており、当社は主に農業土木、井出建設は建設が中心で、人材育成やコスト削減などの相乗効果を期待して合併に踏み切ったわけです。成功した方ではないかと思っています。  開発局のランクはともに「B」でしたが、道建設部の格付けでもA同士の合併は道内で初めてのケースでした。代表権を持つ井出会長がしっかり社内を守ってくれているので、私は安心して営業を中心に外回りに徹しています。  厳しい戦いの中で企業が淘汰されていく時代で、建設業界もようやく淘汰の時代に入ったということでしょう。
――次に地域の交通事情についてお聞きします。足寄町は国道241号と242号が交差しており、帯広、釧路、北見という流通体系の中心に位置していますね
斉藤
 帯広空港、釧路空港、女満別空港は、いずれも足寄から1時間半圏内で、将来の足寄の発展の方向は、この地の利をどう生かすかにかかっています。それからオホーツク海に位置する港が結氷することを考えると、新しい物流ルートとして網走、北見方面から足寄を経由し帯広、広尾への展開が考えられるので、道東自動車道の足寄〜北見間と、帯広広尾自動車道の幸福〜広尾間を早くつないでほしいと思います。  ふるさと銀河線(北海道ちほく高原鉄道)が平成18年4月20日廃止になってからは、網走支庁管内と十勝支庁管内の境界線にある陸別町は「陸の孤島」となっています。この地域の唯一の交通手段は道路ですが、一本しかない国道が、冬には地吹雪で通行止めになり、物流や生活に影響を与えています。通行止め発生多発地域を最優先で整備する必要があります。
――地元の建設業者として地域貢献については、どう取り組んでいますか
斉藤
 平成15年8月9日の台風10号災害では、沢からの土砂流出で、管内の国道が随所で寸断されました。被災地域に近い建設業者は、被災場所の情報が早く、人と重機がありますから、組織力と機動力をいち早く発揮することができます。それが、われわれの使命ですから、会社では18年9月から幹線国道の道路パトロールに取り組んでいます。  10年ほど前に、足寄町建設業協会と足寄町とが災害協定を締結しましたが、何と言っても災害対応が地域貢献の最たるものです。
――災害対応に向けた社員教育は
斉藤
 なかなか悩ましい問題ですが、組織力としてどう動けるか、教育していく必要があります。災害時に情報を集約し、いかに組織立って対応できるようにするかが大きな課題です。公共事業が先細りする中で、いかに作業員のマンパワーを確保できるのか。その意味でも各地域に最低限の業者がいなければ対応できません。
▲本別町美蘭別大橋下部工
――地域交流にも取り組んでいますね
斉藤
 昨年3月のことですが、道道笹川士幌線の橋梁工事「錦声橋」が完了したのを機に、地元の西中音更小学校の児童にお願いして描いてもらった手書きの「橋名板」を取り付けました。  また、9月の「敬老の日」にちなんで、足寄町特別養護老人ホームに生活用品を寄贈させてもらいました。11月には、本別町の勇足小学校の児童を、同町美蘭別大橋工事の現場に招待し、鉄筋の組み立てやコンクリート打設などの作業を体験していただきました。
会社概要
創 業:昭和28年5月1日
設 立:昭和35年7月4日
    平成15年1月合併により斉藤井出建設(株)へ商号変更
資本金:26,715千円/td>
役職員数:46名
許 可:北海道知事許可(特-19)十第00344号 平成19年4月14日/td>
     (許可業種)土木、大工、とび・土工、石、鋼構造物、鉄筋、
    舗装、しゅんせつ、塗装、水道施
格付け:北海道開発局:一般土木A 管A 舗装B
    北海道農政部:農業土木A
    北海道建設部:一般土木A 管A 舗装B
    北海道水産林務部:森林土木A 水産土木A
    東日本高速道路:土木工事D PC上部B 鋼橋上部B
I S O:JIS Q 9001 :2000(ISO9001:2000)
    JIS Q14001:2004
営業所:札幌営業所/本別支店
最近の表彰:
平成19年11月 十勝池田税務署 優良申告法人 表彰
平成19年 2月 日本林業土木連合協会 国有林野事業推進 感謝状
平成17年 2月 北海道森林管理局 優良工事 表彰
平成17年 8月 北海道開発局 帯広開発建設部 部長表彰

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