建設グラフインターネットダイジェスト

〈建設グラフ2008年5月号〉

interview

設立100年目を目前にして迎えた前例のない苦況

――死刑宣告には屈しない

社団法人 旭川建設業協会 会長 盛永 孝之氏

社団法人 旭川建設業協会
旭川市5条通5丁目左10号
旭川建設業会館
TEL 0166-22-5144

 北海道で第二の商都である旭川市も、建設業界の苦況は他地域と変わらず、過剰な競争から業界内のムードはかなり険しい状況だ。業界の発展と共栄のために、一企業では対応できない公務を担う旭川建設業協会も、対応に苦慮している。設立して一世紀を迎えようとしている協会としても、かつて例を見ないほどの苦況に、どう立ち向かうのか、盛永組の社長でもある盛永孝之会長に、今後の対策を伺った。
──旭川建設業協会は、発足して100年を迎えつつありますね
盛永
 第一次大戦が勃発した翌年の大正4年に「旭川請負人組合」として発足し、平成17年に90周年を迎えました。初代組合長は中谷国太郎で、大正9年に選出し、その2年後に北海道土木建築請負業連合会が設立され、これに加盟して旭川土木建築請負業組合へと改称されました。そして大正13年に旧内務省北海道庁の長官による認可を得ました。  創立90周年を迎えた年の通常総会で、私は「先輩の実績を継承し、100年に向かって前進する」と宣言し、いまはまさにその道程にあります。
──公共事業批判と構造改革で、我が国は急激に財政が逼迫して公共投資が減少しましたが、さらに地方にとってかけがえのない財源たる道路特定財源廃止論が喧伝されています
盛永
 わが国経済は、首都圏、近畿圏等を中心に景気の回復が顕著になっているとはいわれますが、本道は依然として深い景気低迷の闇の中にあります。北海道開発予算の削減、道路特定財源の一般財源化に向けた取り組みなど、北海道を含む地方切り捨てと言える行革が断行され、私たちを取り巻く情勢は予断を許さないものがあります。  道も財政再建団体転落を回避するため、昨年11月に「新たな行財政改革の取組み」をさらに加速するとして、公共事業の補助事業費を前年度対比10%減、国直轄事業負担金を前年度対比5%減を4年間実施するという方針を表明しました。  これは私たち建設業界への「死刑宣告」も同じです。およそ一世紀にわたってインフラ整備や災害復旧、さらに雇用その他の波及効果を通じて貢献してきた私たちとしては、到底認めることはできません。そのため、再三にわたって再考するよう強く要請した結果、道はこの2月に、当初の4年間の削減計画を7年間に延期し、毎年度の削減率に一定の緩和措置を講じるとの見直し案を提示してきました。しかし、それでも大幅で急激な削減計画には変わりありません。したがって、協会としては今後も地方経済が崩壊しないよう、地元に必要不可欠な地場建設業を守っていく施策、振興策を盛り込むよう強く要請をしていきます。
──管内の建設業界の受けた打撃は、かなり大きいと聞きます
盛永
 管内では、公共工事は過去に例を見ない大幅削減によって受注環境が激変し、厳しい競争の波にさらされ、不当なダンピングによる無理なコスト圧縮などが業界全体に追い打ちをかける一方、受注量の減少で雇用情勢にも深刻な影を落としています。  この情勢を踏まえて、協会として今なお立ち遅れている地域の社会資本整備を考えると、ゆとりある豊な生活環境と21世紀の基盤整備を引き続きすすめていくことが不可欠です。そのためには、景気浮揚の観点からも積極的な公共投資の継続と地元中小建設業者に対する建設工事量の確保、受注機会の確保を最大課題として、北海道建設業協会とも連携をとりつつ国や道に積極的な財政措置、地方財政支援のための政策の実現を強く要請をしていかなければなりません。それを実現する上では、道路特定財源の暫定税率の維持、一般財源化の回避は不可避の課題ですから、協会としてこれを強くアピールしています。
──国民のコンセンサスを得るには、業界側の体質改善も必要では
盛永
 そうです。公共工事入札契約適正化法の施行による新しい競争のなか、苦境に陥っている地元中小建設業者の地域における社会的・経済的重要性を強く訴える一方で、地域を担う建設業者としてあるべき姿を追求し、経営基盤の強化とさらなる技術力の向上、品質管理の充実、IT化、コスト削減といった自助努力も、強力に進めていかなければなりません。  人材の確保と育成、建設労働災害の防止、特に死亡事故の根絶、独占禁止法の遵守、ダンピング問題、企業連携、新分野進出・経営多角化など企業体質の強化、業界の秩序・倫理の確立、緊急災害時における行政への協力体制の整備など、課題は山積ですが、これらに積極的に取り組んでいきます。  そして、会員相互の信頼と協調性を強化し、地域に貢献する技術と経営に優れた建設業として、地域経済を支える経済団体としての自覚と責任を持って取り組んでいく考えです。

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