建設グラフインターネットダイジェスト

〈建設グラフ2008年5月号〉

寄稿

釧根2支庁を所管し広域分散

――道路ネットワーク化が重要な地震多発地帯

釧路土木現業所事業部長 久野 顕

久野 顕 ひさの・あきら
昭和57年3月 北海道大学工学部土木工学科卒
昭和57年4月 札幌土木現業所(滝川出張所河川係)
平成 5年4月 土木部河川課 計画係
平成10年4月 旭川土木現業所 治水課 河川技術係長
平成13年4月 札幌土木現業所 治水課 河川整備係長
平成15年6月 保健福祉部地域福祉課 福祉基盤G主査
平成17年4月 建設部河川課 主幹
平成20年4月 現職

 釧路土木現業所は、釧路支庁、根室支庁の2支庁を所管しており、北部は比較的標高の高い千島火山群を境として網走支庁に接し、西部は十勝支庁に、南部・東部は太平洋・オホーツク海に面する釧根台地と称される標高20〜80mの広大な丘陵地帯となっています。
 管内の面積は、9,537km2(青森県と同等の面積)で全道83,451km2の11.4%を占めており(色丹島、国後島、択捉島を除く)人口は34万5千人(平成17年10月国勢調査)となっています。
 管内の気候は、夏期は湿潤冷涼、冬期は乾燥寒冷です。
 春から夏にかけて沿岸部では陸上と海上の温度差や、道東沖で交錯する海流の影響で発生する「海霧」のため、日差しのさえぎられる日が多く、平均年間霧日数は100日前後に達します。
 秋は降水量が少ないうえ、日照時間も多く、過ごしやすい季節となり、冬は降雪が少なく晴天が続きますが、気温が低く、厳しい季節となります。
 管内には、3つの国立公園と2つの道立自然公園さらに世界自然遺産の知床など世界にすぐれた自然環境を有しています。さらに、数多くの貴重な動植物が生息生育しており、ワイズユースのもとに自然と共生する地域づくりが進められています。
 管内においては、道央圏との距離が遠いという地理的に不利な条件を抱えており、また、1市町村当たりの面積が広く、地域社会が散在しており、医療面では高度中核医療機関のある釧路市への通院・搬送や、産業面では酪農・水産業の主要生産地として消費地への輸送時間の短縮といった面からも道路網の整備は緊急の課題となっています。
 また、地震の多発地帯である当管内は、防災上においても道路の機能強化を図る必要があり、冬季においては、地吹雪等による交通傷害が発生するため、四季を通じて安全で安心な道路整備が必要であります。
 当所では、根室、中標津、釧路を結ぶ釧根トライアングル構想の一翼を担う根室中標津道路において地域高規格道路として整備促進しています。完成後は根室、中標津の経済、社会、文化など各分野において広域的な連携や交流が促進され、更には、重要港湾根室港と中標津空港間の時間が短縮されることにより首都圏などへの輸送コスト縮減が期待されるところです。
 知床公園羅臼線は、オホーツク沿岸特有の厳しい気象条件に加え、急峻な崖地と海岸に挟まれており、平成16年には大規模な落石が発生し、長期間の交通止により地域住民に多大な影響を与えた路線です。順次計画的に防災工事を実施しており、年間を通じ安全で安定した生活環境を早期に図りたいと考えています。
 釧路環状線では、釧路市内の渋滞対策として、釧路市武佐地区から釧路町別保地区の国道44号を直接結ぶバイパスルートの早期完成を目指しています。完成後は、交通分散により円滑な都市交通の確保が図れるものと思われます。
 釧路鶴居弟子屈線、中西別計根別線、上風連大別線などでは、冬期に地吹雪、吹き溜まりによる通行止めが頻繁に発生しており、地域住民等に多大な影響を与えていることから防雪柵等の整備を進めています。早期の整備により、冬期の安全で円滑な交通確保及び民生の安定が図れるものと考えています。

▲釧路環状

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