建設グラフインターネットダイジェスト

〈建設グラフ2008年5月号〉

寄稿

優れた農水産品と観光アクセスの強化が課題

――求められる道路ネットワークの流通機能向上

小樽土木現業所事業部長 名取哲哉

名取 哲哉 なとり・てつや
昭和32年3月15日 富良野出身
北海道大学工学部卒業
平成 7年6月 札幌土現河川技術
平成 9年6月 経済部苫東開発課用地用水各係長
平成11年5月 河川課主査
平成12年6月 同 計画係長
平成14年4月 旭川土現治水係長
平成16年4月 建設部河川課主幹
平成19年6月 小樽土木現業所事業部長

はじめに

 後志地域は、北海道の南西部に位置しており、北部、西部は日本海に面し、東部は石狩地域に接しています。また、南は西胆振地域に接するとともに渡島半島の付け根にまで及んでいます。
 気候は、日本海側気候に属し、一般的に春から夏にかけては温暖で晴天の日が多く、冬は北西の季節風を受け、降雪量が多く、根雪は11月中旬から4月中旬にまで及びます。しかし、複雑な地形のため、地域によって気候は異なり、北後志は比較的温暖です。羊蹄山麓は道内屈指の豪雪地帯となっています。
 産業面では、農業は、気候・土地等の自然条件と大消費地である札幌圏に隣接する地理的条件などから水稲、畑作、畜産、果樹など幅広い生産活動が営まれており、「北海道農業の縮図」ともいわれています。
 漁業は、古くは「ニシン漁」で栄え、その後は沖合漁業を中心に発展してきましたが、「200海里問題」により沖合漁業からの大幅な撤退を余儀なくされ、厳しい状況が続いています。
 観光については、小樽、ニセコ、積丹という全国的な観光地もあることから、年間2,200万人の観光客が訪れる北海道を代表する観光エリアとなっています。特に、近年ニセコ周辺がリゾート地と注目され、外国資本等による投資も増加の一途を辿り、国際的な観光地へと発展していくことが大いに期待されています。
このように、後志管内は大きな可能性をもった地域ですが、広域的な交通ネットワークが未整備であることから、管内に散在する地域資源が有機的に結つくことができない状況にあります。
 地域としては高速交通ネットワークの整備が悲願であり、北海道横断自動車道黒松内・余市間の早期着工を強く求めています。
 当所としては、後志管内の観光振興や活力ある地域づくりを支援する事業や安心して暮らせる基盤づくりについて、国や市町村との連携を強化し事業の緊急性や投資効果を重視して地域の意向を反映した快適で質の高い社会資本整備に努めていきたいと考えています。


各事業の概要

道路事業  広域交通ネットワークの形成と安全・安心な道路通行を確保するため、赤井川村と余市町を結ぶ余市赤井川線では冷水トンネルの本体着工に向けたヤード造成などを行い、小樽市の小樽定山渓線では地すべり対策整備を促進するほか、神恵内村の古平神恵内線は大雪崩橋に近接の急傾斜面からの雪崩対策の整備促進を図る
 うるおいのあるまちづくりを支援する道路整備として、真狩村市街地ではまちなみ再生と連携した岩内洞爺線の堆雪幅確保の整備を進める。また、寿都町の寿都停車場線においても中心市街地再生と連携する道路整備を促進する。
歩行者などの安全を守る交通安全施設の整備として、寿都町の寿都黒松内線、倶知安町の蘭越ニセコ倶知安線などで歩道の整備を行う。
 市町村代行事業は、愛媛団体通(ニセコ町)真狩川橋上部工、賀老高原通線(島牧村)、浜中入船線(余市町)の整備を促進する。

街路事業  小樽市内の3・2・4臨港線で勝納跨線橋の架け換え工事に着手するとともに3・4・17朝里温泉通の拡幅整備を促進する。

河川事業 水害から人命や財産を守る河川整備として、余市町の余市川では平成20年度までに河口から上流約2qまでの緊急対策特定区間で内水氾濫対策の排水機場・浚渫等の重点的整備を進める。
また、喜茂別町の尻別川、寿都町の朱太川、共和町の堀株川などで河道掘削・護岸の整備を促進する。
 良好な水辺空間を創出する河川整備として、小樽市の朝里川と勝納川では、憩いと潤いのある水辺空間の形成を図り周辺景観に配慮した護岸、散策路などの整備を進める。

砂防関係事業 砂防事業は、土石流災害対策として蘭越町の蘭越第一川、小樽市の団地沢川、仁木町のマカナイ川、余市町の石切川など7箇所で整備を促進するほか、土砂災害防止法に基づく警戒区域の指定を促進する。
急傾斜地崩壊対策事業は、小樽市内において富岡2丁目2と天神3丁目4の整備促進を図る。
 地すべり対策事業は、仁木町の銀山学園地区、島牧村の豊平橋地区の2箇所で整備を促進し、雪崩対策事業は古平港町4で整備を進める。

海岸事業  建設海岸は、小樽市の銭函海岸で離岸堤工事を促進する。

漁港事業  安全で良質な漁獲物の安定供給に寄与する地域水産物供給基盤整備事業を、泊村の盃(カブト地区)漁港、神恵内村の神恵内漁港・川白漁港、島牧村の厚瀬漁港の4港で整備を促進し、積丹町の日司漁港の防波堤改良に着手する。


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