建設グラフインターネットダイジェスト

〈建設グラフ2008年3月号〉

interview

文部省の外郭団体から札幌の建設会社へ転職

――建設業界では仕事が無く地元の専門職人が道外に転出
 社会資本の維持、災害時の復旧、技術の継承が困難に陥る

札幌中小建設業協会   会    長
金井建設工業株式会社 代表取締役
三浦 光孝氏

三浦 光孝 みうら・みつたか
昭和18年12月14日滝川市に誕生
昭和37年3月 道立滝川高校 卒業
昭和41年3月 学習院大学経済学部 卒業
昭和41年4月 私学共済 入社
昭和45年8月 日本オリベッティ株式会社 入社
昭和51年3月 金井建設工業株式会社 入社
平成 元 年3月 金井建設工業株式会社代表取締役 就任
平成16年1月 札幌建朋会会長 就任
平成19年1月 札幌中小建設業協会会長 就任
金井建設工業株式会社
札幌市西区八軒10条東3丁目7番15号
TEL011-726-0181

 公共工事予算の減額、「改正法不況」とさえ言われる建築基準法の改正の影響で地元中小の建設業者は悲鳴を上げている。札幌市の指名業者で結成した札幌建栄会と札幌建朋会が統合に向けて動き出した背景には、会員企業の大幅な減少という事情も見逃せない。1年以内に両会を統合し、新団体を設立することになったが、その仕切り役が札幌中小建設業協会の三浦光孝会長。三浦会長は、札幌の中堅企業・金井建設工業の代表取締役でもある。地元中小建設業者の動向、行政への注文などをざっくばらんに語ってもらった。
――まず会社の概要からお聞きします
三浦
 創業は昭和30年。37年には株式会社として法人化しました。総合建設業ですが、建築が事業の中心になっています。金井建設はそもそもガソリンスタンドを建てるために創業した会社で、当時、市内で鉄骨造やコンクリート造の建物を手掛けていたのは地崎、岩田、伊藤組のほかは金井建設工業ぐらいだったと聞いています。私が入社した昭和51年以降は、それまでの民間中心から公共工事にも進出し、建築、土木、下水道の分野で少しずつ実績を上げてきました。年商は10億円〜15億円で推移していますが、昨年の後半は改正建築基準法、原油高騰、公共事業縮減の影響が大きく、成績は芳しくありませんでした。
▲総合的技術の開発
――社業伸展のため特に力を入れていることは
三浦
 「私たちは人の幸せと生活環境の向上に貢献する。」ことを理念に、「地域社会への貢献」「信用と技術の練成」「全員参加の経営革新」を経営の基本要項に掲げています。建築は何千万円、何億円もの投資で、命の次に大切な財産形成ですからお客様に満足してもらえる仕事ができるように、会社は社員が信用と技術を鍛錬する「人間道場」だと考えています。建築とは、修練された全人格「心と技」の表現である。これがわが社のモットーです。毎日の朝礼に始まり、さまざまな技術研修を通じて社員づくりに重点を置いています。たとえ会社の経営が行き詰まっても従業員には生き延びられる技術者として、その人間性を育てたいと思っています。
▲新日本石油南4条SS 新築工事
――社長は昭和18年12月14日生まれですから、今年で65歳になられます。学習院大学を卒業後は文部省の外郭団体に入られたそうですね
三浦
 実家が滝川で120余年も旅館業(ホテル三浦華園=明治19年創業)を営んでいますので、その団体では希望して保養施設を担当しましたが、どうしても営業力を身につけたいと思いイタリアのコンピュータ会社(オリベッティー)へ転進、東京、愛知、山梨で勤めていました。自分なりにいい経験でした。  そんな折、金井建設工業(妻の実家)の先代から誘われ、昭和51年、33歳の時に東京から戻ってきました。最初の1、2年はスコップとツルハシを持って作業員と一緒に現場の勉強をしました。当時は下請の仕事が中心でしたが、持ち前の営業力を生かして公共工事に参入し、徐々に元請の比率を高めていきました。しかし、公共工事は事業量がピーク時に比べて半減しているので、今ではわが社の工事高に占める公共工事の割合は2割弱です。
▲市営住宅菊水上町団地新築工事
――国、地方自治体とも公共工事費の縮減が続き、建設業界は相当なダメージを受けています。札幌中小建設業協会(三浦光孝会長)の構成団体である札幌建栄会と札幌建朋会が1年以内に統合し、新団体を設立することにした背景には会員の減少が影響していますか
三浦
 そうですね。会員企業は札幌建栄会(安田謙一会長)が92社、札幌建朋会(三澤繁実会長)が66社。建朋会は昭和47年20社程度でスタートし、一時期は167社を数えました。建朋会の初代会長をはじめ、2代目、3代目、4代目の会長企業は既に廃業退会しています。初年度の会員40社の大半が建設業界から撤退しています。それほど業界を取り巻く環境は厳しい。  多くの地元中小企業は疲弊しています。会員になっていれば行政、業界のいろいろな情報が入りメリットは大きい半面、会員の減少に伴う経費負担を少しでも緩和しようとそれぞれの事務局体制を一元化し、経費削減を図りたいと考えています。
――業界として行政への注文も多いのでは。ざっくばらんに本音を伺いたい
三浦
 日本の政府は稲作の減反、遠洋漁業の減船、繊維不況や石炭、そして金融機関の不良債権処理問題などに対して必ず救済策を打ち出してきました。建設業界には企業数が多すぎるということで、今は見放されています。建設会社を半分まで減らせというなら合併に向かうでしょうが、目標を示さないまま、国は公共事業費の大幅縮減、入札制度の見直しで地元中小業者は根こそぎ廃業、倒産の危機に直面しています。このままでは建設産業のあらゆる職種の専門技術者、後継者が地元を離れてしまいます。その時、地元にいまある社会資本の維持整備はもとより災害時の復旧作業に誰が立ち向かうのでしょうか。  聞くところによると、アメリカでは落札業者を予め順番制にし、予定価格も有識者が決めているとのことです。  また、昨年は確認申請の審査を厳格化した改正建築基準法の影響で確認申請は40%減った月もあります。工事高でも20%減とのことで、これはまさに「改正法不況」です。本州への出稼ぎ労働者は、地元には仕事がないため戻るに戻れない。今年の4月は鉄筋工、大工などの専門職人はかなりの人手不足が予想されていますから大変なことになりそうです。  職人の多くが50歳〜60歳代に集中しており、若い世代が極めて少ないことも深刻です。このままでは技術の承継も難しくなる。  行政に対しては、地元に根ざした建設業者を根こそぎ潰すような政策を変換して欲しい。また、公共工事、建物の維持保全予算の計画的な確保と地元への優先発注を訴えたい。  入札制度の仕組みにも問題があります。数年前から予定価格を公表するようになったが、結果的に最低制限価格(15%又は20%カット)への誘導です。これでは建設業者は赤字を出してまで仕事をせざるを得ない。予定価格の公表は止めてもらいたいものです。
会社概要
社     名:金井建設工業株式会社
創 業 年 月 日:昭和30年1月3日
資  本  金:20,000,000円
年     商:1,000,000,000円
従  業  員:17名
関 連 会 社:三戸部建設株式会社
資材センター:石狩市花川東655番地
建設業許可業種:
  建築一式工事(北海道知事許可 特14石3501号)
  土木一式工事(北海道知事許可 般14石3501号)
  一級建築士事務所(北海道知事登録 石2551号)

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