建設グラフインターネットダイジェスト

〈建設グラフ2008年3月号〉

寄稿

石狩川治水100年豊かな穀倉地帯・市街地の発展に寄与

――地域の健全な発展と自然環境豊かな社会形成を推進

国土交通省北海道開発局石狩川開発建設部 次長 今 日出人

今 日出人 こん・ひでと
昭和33年10月15日北海道札幌市生まれ
昭和59年3月北海道大学大学院工学研究科修了
昭和59年4月北海道開発庁採用
平成12年4月北海道開発局建設部河川管理課 河川情報管理宮
平成14年4月北海道開発局建設部河川計画課 河川企画宮
平成16年7月国土交通省北海道局水政課企画宮
平成18年4月石狩川開発建設部次長

石狩川の河川整備と事業概要について


1.流域の概要
 石狩川流域は、北海道の中央に位置し、道内では人口も経済活動も最も網密に集中している地域です。特に札幌と旭川間は鉄道、道路による物流網が構築されています。また、流域には大雪山国立公園、支笏洞爺国立公園を抱えるなど優れた自然環境が存在します。

2.石狩川流域委員会の審議と
河川整備計画の策定  「石狩川水系河川整備基本方針」(平成16年6月14日国土交通大臣策定)を受けた「石狩川水系河川整備計画」を策定するにあたり、学識経験者から意見を聴取するため、同年4月30日に北海道開発局長は石狩川流域委員会を設置しました。 石狩川は我が国における屈指の大河川であり大きな支川が数多くあることから、主要支川及び本川2つの計8つの河川整備計画を審議し、平成19年9月13日に開催された第29回の流域委員会をもって審議が終了しました。

3.河川整備計画の概要及び現在の整備状況
3.1  基本方針
 河川整備は、流域及び水系一貫の視点を持ち、北海道や関係市町村の施策と整合を図りつつ、市街地の発展や農地の利用状況等を踏まえた上で、事業箇所の重点化、ダムなど既存ストックの有効活用等を図りつつ、総合的、効果的、効率的に推進します。また、目標流量を石狩川流域に甚大な被害をもたらした戦後最大規模の洪水である昭和56年8月上旬(豊平川の場合、昭和56年8月下旬)降雨により発生する洪水流量を安全に流すこととしています。


▲石狩川流域委員会の開催(第18回) ▲新桂沢ダム取水塔工事

3.2 今年度の主な整備内容
1.安全・安心な国土づくり
 (1)千歳川流域の治水対策の推進
 千歳川の治水対策は、道央圈の防災対策として緊急を要するため、石狩川の高い水位の影響を長時間受けることに対応した堤防の整備や河道断面が不足している区間の河道掘削等を進めるとともに、4市2町に整備する遊水地群の調査検討を推進し、一部用地補償に向けた調整を行います。

(2)石狩川の治水対策の推進
 石狩川等で流下能力不足箇所の解消を図るため、河道掘削や丘陵堤等の整備を促進します。また、新たな洪水調整施設として石狩川中流遊水地の調査検討を推進します。

(3)多目的ダム建設の推進
 夕張シューパロダムについては、平成19年9月より開始した本体コンクリート打設を推進します。また、幾春別川総合開発事業は、本体着工に向けた取水放流設備工事(新桂沢ダム)を推進します。

▲石狩川左岸千歳川合流点付近東野幌の
昭和56年8月氾濫状況(江別市)
▲堤防強化対策工事(豊平川右岸南22条橋)

(4)大都市札幌市で壊滅的な被害を防止するための治水対策の推進
 札幌都市圏では、洪水時に堤防が決壊すると壊滅的な被害が予想されることから、豊平川において、洪水時の高速流対策等の堤防強化と併せて、危機管理演習や情報共有化等のソフト対策と一体となって治水対策を推進します。  また、堤防強化事業と札幌市による土地区画整理事業が連携し、堤防から東雁水地区土地区画整理事業区域までを一体的・連続的に盛土し、水と緑豊かで快適な都市生活空間の形成を推進します。

(5)近年発生した災害を踏まえた緊急的治水対策の推進
 低平地のため過去に幾度となく水害に見舞われてきた幌向川幌向地区の堤防完成化事業は、緊急を要する治水事業であり、重点投資を行い、早期の効果発現を目指します。

(6)防災関係機関の連携した災害対策を支援する防災情報共有化の推進
 防災情報をリアルタイムで共有し、迅速かつ円滑な防災対策を実施するため、札幌管区気象台、北海道及び市町村等の防災関係機関が連携した防災情報共有システムの市町村接続を推進します。さらに、「河川災害情報普及支援室」を窓口として、市町村の洪水ハザードマツプ作成への支援等を行います。

▲幌向川築堤工事 ▲岩見沢市北村地区

(7)地域と連携した河川防災ステーションの整備
 出水時には水防活動の拠点、支援物資輸送や復旧を行う基地となり、平常時にはコミュニティースペース等として活用できる河川防災ステーションの整備を岩見沢市と連携して推進します。

2.自然環境と共生する持続可能な社会づくり
 (1)石狩川下流における自然再生の推進
 北海道の恵まれた自然との共生を目指し、当別川合流地点において、湿地環境等の再生を目的に、自然再生事業を推進します。実施にあたっては、NPO、住民代表者、有識者、行政関係機関による「石狩川下流当別地区自然再生ワークショップ」を開催しながら、より事業を推進します。

▲茨戸川清流ルネッサンスU(創成川ルート吹き出し口)

(2)地域の協働による水環境対策の推進
 茨戸川の水質改善並びに札幌北部地区河川の流量確保を図るため、各関係機関や地域住民等で構成された、茨戸川清流ルネッサンスII地域協議会を設置し、河川管理者、下水道事業者、地域住民やNPO等の協働により、創成川ルートの通水を開始し、水環境改善を推進します。

(3)堤防除草刈草・ダムに流入する流木の有効活用
 堤防の除草は、機能維持、危険箇所の早期発見等のため河川管理上必要かつ重要です。毎年発生する刈草を堆肥などに有効利用し、処理コスト縮減、環境への負荷を軽減します。また、ダム湖に流れ込む流木については、チップ化して園路整備のマルチング材など資源の有効利用に取り組みます。

4.おわりに
 石狩川の本格的な治水事業は、明治43年から始まり、平成22年に100年を迎えます。この100年間で、石狩平野は、湿原地帯から日本を代表する穀倉地帯に変貌し、札幌市をはじめとする市街地の発展にも寄与しました。これからも、地域の健全な発展に不可欠な安全の確保と自然環境が豊かで活力に満ちた地域社会の形成のため、治水事業の整備を積極的に推進して参りますので、引き続き皆様のご支援、ご協力をお願いいたします。

石狩川開発事業に貢献します
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