建設グラフインターネットダイジェスト

〈建設グラフ2008年2月号〉

interview

画期的な既設管更新工法を発明

――コスト縮減で札幌市水道局の工事に採用

株式会社 フォルテック オーナー取締役 花松 真一氏

花松 真一 はなまつ・しんいち
昭和39年3月 北海道札幌南高等学校 卒業
昭和44年3月 北海道大学工学部衛生工学科 卒業
昭和46年3月 北海道大学工学研究科修士課程 修了
昭和46年4月 西原衛生工業所 入社
昭和49年4月 花松工業(現 潟tォルテック) 入社
株式会社フォルテック
札幌市中央区南5条東3丁目5番地
TEL 011-531-1611

 札幌市管工事業協同組合理事長でもある株式会社フォルテックのオーナー取締役の花松真一氏にご登場いただいた。同社の原点は、花松オーナーの祖父が大正5年、中央区南4条東3丁目にて創業した「花松ポンプ店」で、いわゆる井戸掘削業者である。豊平川の扇状地が広がる札幌は昔から地下水に恵まれており、井戸は札幌市民に欠かせない生活道具だった。花松ポンプ店が産声を上げたのは、札幌の水道事業が始まる約20年前にさかのぼる。北大工学部大学院で環境工学を研究した花松オーナーは、東京での3年間のサラリーマン生活に終止符を打ち、札幌にUターン。前進の花松工業株式会社に入り、父の逝去とともに社長に就任。平成14年、社長の座を実弟に譲ったが、オーナーとして同社の頭脳的な存在でもある。3年前には道路などの開削工事が必要最小限で水道の既設管を更新することができる画期的な「パイプ・リプレース工法」を開発し、水道事業体から注目を集めている。水道の普及率が99.8%に達している札幌市は昭和47年の政令指定都市への移行を機に、急激な水需要の高まりから短期間に集中的な施設整備を行い、近い将来に大量の更新時期を迎えることが予想されていることから、同社の特許工法はコスト縮減に威力を発揮しそうだ。
――最初に会社のルーツからお聞きします
花松
祖父の佐吉が大正5年、南4条東3丁目にて花松ポンプ店を設立したのが始まりです。井戸掘りを業としていたわけですが、恐らく当時の事情から、それだけで生活していなかったようで、他の仕事と半々だったことを父から聞いた記憶があります。昭和33年には法人組織に変更し、名称を花松工業株式会社に改め、父が社長に就任しています。職人が何人かいて、父がしばしば井戸用の長い鉄管などの材料を自転車に積んでいたことを小さい時から見ていました。今とは隔世の感がありますが、当時の創生川の東側は職人の町でした。大きな会社はありませんでしたが、鋸の目立、仏壇製作など一種の家内工業で、それなりに活気がありました。
――略歴をお聞きしたい
花松
昭和21年1月の生まれで、44年に北大工学部を卒業し、大学院で環境工学を研究しましたが、どうも大学に残って研究生活を続ける意向はなかったので、46年にマスターを得た後、東京の企業に就職しました。しかし、長男だったこともあって3年後にUターンし、家業を継いだわけです。
▲社屋
――現在の業務概要は
花松
営業品目は給排水、衛生、冷暖房、空調換気設備の施工及び修理、水道施設の設計施工等。札幌市、北広島市、石狩市等から給水装置、排水設備工事業者の指定指定を受けています。  管工事の分野には冷暖房から空調、給水、排水まであり、建物を人間の体に例えれば、心臓から末端まで血液を流し、老廃物を排出するまでの役割を担っていますがやはり、建物を生かすのは設備だと思います。
――社長就任はいつでしたか
花松
昭和60年で、父をガンで亡くして引き継ぎました。
――平成4年には佐藤機械商会と合併し、社名も変更していますね
花松
同業者同士でしたが、得意先がバッティングしていなかったので、それぞれの強みを発揮できると判断しました。受注先を分散することが経営のポイントで、特定の1社の受注額が売上全体の30%以上では、相手の意図に引っ張られる恐れがあります。できるなら20%以内に抑えるのが理想です。  ピーク時は公共事業が40%前後ありました。今では官庁からの受注額は数字上半分に落ち込んでいますが、感覚的には三分の一以下との実感です。新築工事や大規模改修工事はゼロと言って良く、いまや公共事業に頼っていたなら、会社の成長はないでしょう。わが社としても、同様にアウトでした。民間物件は営業するほど売上増につながりますが、公共事業で売上を2〜3割増やすのは容易でありません。
――昨年の建築基準法の改正に伴い、確認申請の審査基準が一層厳格になり、マンション等の着工件数が大幅に落ち込んでいます。影響は
花松
最初にダメージを受けているのは設計事務所です。着工が3、4か月遅れており、すき間の期間をどれだけ埋められるかが勝負です。
――平成14年に社長の座を実弟に譲り、オーナー取締役の立場になられましたが、この間、Pe管用非開削給水管取替工法(パイプ・リプレース工法)を開発、特許を取られています。発明者としては手ごたえを感じていますか
花松
開発から3年目に入り、すでに札幌市水道局の工事に採用されています。先般も釧路市から問い合わせがあり、今春、現地でデモンストレーションを予定しています。
▲クリックすると拡大したものが開きます。
――どんな工法でしょうか
花松
水道管と各家庭への給水管は経年劣化に伴って、いずれ更新が必要になります。従来は全面的に開削して取り替えていましたが、この工法では、両端だけを開削し、既設管路を利用して、最小限の掘削で新設管と交換することが可能です。非開削給水管取替工法は以前からありましたが、新工法はさらに精度を高め、切断刃を外套管で覆うことにより、誤って他の埋設物を損傷させることがありません。  地中に埋設している既設管に特殊なカッターを内挿している外套管とワイヤーを通し、ワイヤーとともに移動させながら既設管を管軸方向に切断、牽引装置で縦に3分割された既設管を引き抜き、既設管路に新設管を引き込みます。カッターは外套管の内壁面に接合されています。一般的な給水管なら内径30〜40_、長さが12〜13bであっても対応できます。
――確実にコストを削減できるでしょう
花松
メリットとしては、開削時間の短縮と施工のスピードアップ、産業廃棄物の排出量の減少、仮・本復旧に必要な砂利、舗装材の軽減、車道の交通遮断制限の軽減などが挙げられます。40%以上のコスト縮減効果が期待できます。  当面は札幌近郊を中心に普及させたいと考えています。特許を取っていますから、わが社で独占的に受注しようと思えばできるわけですが、なるべく地元の指定業者さんと連携し、地元の業者さんにもメリットのある形で普及するのが良いと考えています。
会社概要
株式会社フォルテック
オーナー取締役 花松 真一
代表取締役 花松 雄二
大正 5年3月:創始者花松佐吉氏が「花松ポンプ」設立
昭和21年3月:五男、佐久雄氏が継承
昭和33年3月:法人組織に変更。花松工業株式会社に改め、
          花松佐久雄氏が代表取締役に就任
昭和54年6月:札幌市中央区南5条3丁目に新社屋を建設
昭和60年4月:二代目、佐久雄氏の長男、
          花松真一氏が代表取締役に就任
昭和63年4月:商事部を開設
平成 4年7月:(株)佐藤機械商会と合併し、
          社名を「(株)フォルテック」に改名
平成14年4月:花松真一氏がオーナー取締役に就任

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