建設グラフインターネットダイジェスト

〈建設グラフ2008年1月号〉

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網走の酪農経営を向上させる国営かんがい排水事業

――水源施設である雄武ダムが完成間近

北海道開発局 網走開発建設部 雄武農業開発事務所

▲事業内容

 網走開発建設部雄武農業開発事業所が進めてきた雄武ダムの完成が間近となった。この雄武ダムは、同事業所が網走管内雄武町で実施している国営かんがい排水事業雄武中央(一期・二期)地区の水源となる事業。 この雄武中央地区は管内の北部の雄武町に位置し、オホーツク海に面した酪農地帯で、緩やかな波状形の台地と、雄武川を含む中小河川が流れているが、保水性が低い重粘性土壌の無水地帯であった。しかも、かんがい期間中の降水量が少ないため、干ばつ被害が頻発していた。 このため、雄武川支流のイソサム川に雄武ダムを建設してかんがい用水を確保し、それを畑地に搬送する用水路などの施設整備によって約4,000ヘクタールの牧草地に給水することになった。同時に、牛の糞尿をスラリーとして草地に還元するための肥培かんがい用水を供給することで、干ばつ被害の解消と循環型農業の実現を図ることにしている。

▲肥培かんがいの状況 ▲干ばつ被害の状況(昭和54年6月) ▲事業後のイメージ

 ダムの構造は、土や岩を積み上げて作られるフィルダムで、中心遮水ゾーン型。堤体は堤高53.6メートルで、13階建てのビルに相当し、堤頂長は234メートルとなる。堤体積は883,000?で、10tトラックで166,000台分となる。総貯水量は3,300,000?で、そのうちの有効貯水量は2,700,000?。これは東京ドーム約2杯分に相当する。満水時の貯水面積は20万uで、札幌ドームグラウンド面積の約40倍にもなる。

▲雄武ダム完成予想図

 ダム設備は傾斜式シリンダーゲート、非常放流ゲート、河川放流ゲート、かんがい放流ゲートが設置されている。 すでに河川協議一部使用検査を終了し、平成20年3月から7月末まで試験湛水が行われ、平成20年度末に完成を迎える。 これに合わせて、雄武中央(一期)地区は14.85qの用水路とファームポンド2カ所が整備され、雄武中央(二期)地区では81.26qの用水路と3カ所のファームポンドが整備される。 こうした雄武ダムを水源とするかんがい排水事業によって、糞尿を希釈し、圃場に還元する肥培かんがいが可能となり、営農における堆肥処理の労力が軽減される。また、スラリーの施用によって、従来の化学複合肥料からリン酸やカリなどの不足要素を単肥で補うことが可能となるので、肥料経費が軽減されることになる。

地区概要
受益面積:4,039ha
予定工期:平成1年度〜21年度
施設概要:貯水池(雄武ダム)用水路25条延長96.11km、ファームポンド 5ヶ所
工事進捗:一期地区98%、二期地区59%(平成19年度迄)
雄武ダム概要
 ダム諸元
  ダム形式:中心遮水ゾーン型フィルダム
  堤頂長:234.4m
  堤 高:53.6m
  堤体積:883,000m3
雄武農業国営事業に貢献します
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