建設グラフインターネットダイジェスト

〈建設グラフ2008年1月号〉

interview

北海道洞爺湖サミットの受け入れ準備に努力(後編)

――北海道の自然をCO2削減合意の促進剤に

北海道知事政策部北海道洞爺湖サミット推進局局長 山谷 吉宏氏

山谷 吉宏 やまや・よしひろ
昭和55年3月早稲田大学政経学部卒業
平成 9年6月 環境生活部文化・青少年室文化振興課長補佐
平成12年4月 文化財団派遣
平成14年4月 総合企画部政策室参事
平成15年6月 総合企画部IT推進室情報政策課長
平成18年4月 企画振興部IT振興局次長
平成19年5月 知事政策部北海道サミット推進局長
(平成19年6月 知事政策部北海道洞爺湖サミット推進局長)

(前号続き)

――次期会場となる洞爺湖一帯は、警備に有利であるのが選ばれた理由の一つとされますが、警備等の対応には、難しいものがあるでしょう
山谷
外務省と警察庁と道警本部で警備体制、救急医療体制などを確立し、確実に対処して頂くことになっていますが、これは代表団、要人警護はもちろんですが、地域住民皆さんの安全にもつながる大事な事です。期間中は交通規制などでご迷惑をおかけすることもあるかと思いますが、住民説明会などで説明し、ご理解いただくと同時に、むしろご協力をお願いすることが私たちの役割だと思います。 私たちとしては、国の出先機関を含む24機関の連絡会議も開催しており、そこで情報交換しながら住民に的確な情報をお伝えしていきたいと思っています。
――どこまで開示できるかが問題ですね。非公開では、誰もが対処のしようがなくなるので論外ですが、詳細に公表しすぎて、悪意ある者に悪用される心配もあるのでは
山谷
来日される代表団も報道陣も、基本的には自分たちでも気をつけるでしょうし、国際会議というものは、毎年どこかで行われており、その経験とノウハウを十分に持った方々が来られるわけですから、一定レベルの警護でも対処は可能だと思います。 しかし、地域住民にとっては、このような大イベントは初めてで不安はあるでしょうから、地域住民には事態をよく理解してもらい、協力頂くよう努力することが最も大切だと思います。
――開催地域の住民に求められるものは、非常に多いでしょうが、ひいては私たち道民としても、世界の要人を迎えるに当たり、どのような気構えでいるべきと考えますか
山谷
来訪されるお客様に対しては、高橋知事の言う「おもてなしの心」が大切だと思います。各国首脳たちは厳しい警護の中に囲まれていますが、各国代表団や報道陣の場合には、多忙の合間を縫って地域を視察したり、取材する機会もあるものと思います。 そうした時に、言葉が分からないからと引っ込み思案になることはありません。あくまでもオープンマインドで迎え入れるという姿勢と気構えがあれば、来訪者にとっても良い想い出となったり、北海道に良い印象を持って評価される可能性もあります。 何しろ、G8が揃うとなれば5カ国語、新興諸国も加わると8カ国語から9カ国語が行き交うことになります。それぞれの言語でコミュニケーションを図ることは難しいでしょうが、気さくに握手や挨拶に応じるなど臆さない心が、一番のおもてなしに繋がるものではないかと思います。 それ以外では、北海道は食と観光での立県を目指し、宣言していますから、国内外のメディアが、そうした情報を大いに外国に発信してもらえれば有り難いですね。国外の来賓が道内の環境や観光について、関心をもってくれればと思います。例えば、知床自然遺産や釧路湿原、宗谷丘陵の風力発電施設など、そうしたものを報道などを通じて知っていれば、予めスケジュールに組んでもらえる可能性も出てきます。来てから初めて知るようでは、立ち寄る余裕もないでしょう。こうした事前のPRによって、テーマにあったサミットツアーや、取材ツアーなどを企画し、全道にわたって動いてもらえる可能性も生じるのではないかと期待しています。もちろん、私たちも情報発信に努めますが、どれくらいのことが出来るかが大事なポイントだと思います。
――同時にファーストレディによる外交の場も重要ですね。ドイツサミットでは、途中で予定変更になったという事例も見られたということですが
山谷
これについては、みなさん期待しているところですが、セッティングはなかなか難しいようです。どこへでもクルマで気楽に移動するわけにはいかず、緻密にスケジュールを組み、移動はヘリコプターを用いることになりますが、大型ヘリとなると、エンジン音もかなり大きく負担がかかります。 こうした配偶者プログラムについては、総理のご夫人がホストとなって、他国のご夫人におもてなしをするものですから、外務省で綿密な計画を組立てるでしょうが、北海道としても、北海道という舞台をどのように使っていただくか、外務省には積極的に提案していきたいと考えています。
――最終的に、総勢で何名くらいが来訪するものと想定されますか
山谷
現時点では、各国代表団が1,700〜1,800人、その他に、外国のプレス関係者が1,000人程度、国内のプレス関係者は3,000人程度、そして海外に発信するための通信インフラ整備の関係者、警備の関係者なども合算すると、およそ3万人近くにはなるとのことです。 道経連による試算では、その経済的効果は将来的な効果も含めて約380億円とされています。
――ひとつの市町村を丸飲みする人員と経費の規模ですね
山谷
まさにいくつかの町村を合わせた以上の規模となります。このとき、注目すべきことは、洞爺湖という地名がサミットの名に冠されることです。沖縄サミットの場合は、九州・沖縄サミットという名称で、県名を冠した広域的な地名となりましたが、次回のサミットは北海道と並んで、胆振管内の中の洞爺湖という名称が世界史に記録されることになります。 世界中で洞爺湖の名が呼ばれ、記されることになりますから、地元の知名度は一足飛びに世界レベルの知名度へと飛躍します。 これが、北海道の今後の飛躍の有効な足がかりとなることを期待しますので、国内の報道関係者にも、大いに事前報道とPRに協力して欲しいと思います。

HOME