建設グラフインターネットダイジェスト

〈建設グラフ2007年12月号〉

interview

経産省の新連携認定計画において有力視される
下水道維持補修工事用超小型穿孔(せんこう)ロボット

――来春からいよいよ発売へ

草野作工株式会社 代表取締役 草野 貴友氏

草野 貴友 くさの・たかとも
昭和58年3月 日本大学商学部 卒業
平成 5年4月 草野作工株式会社 取締役企画部長
平成12年4月 草野作工株式会社 代表取締役
公職
江別建設業協会 会長
江別市交通安全協会 会長
(社)北海道中小企業診断士会 常任理事
草野作工株式会社
江別市上江別西町16番地
TEL011-382-2135

草野作工(株)は、昭和11年の創業以来、橋梁施工会社として不動の地位を築いてきたが、近年の公共事業激減の趨勢から、独自の技術に基づく機械製品を開発。建設業から機械メーカーへと幅広い業態を確立しつつある。中小企業診断士で、技術者ではないという5代目社長の草野貴友氏は、「土木の専門家ではないからこそ、既存技術を応用して新しい用途と可能性を生み出すことができた」として、門外漢であることの強味を示し、「それによって可能となる新たな施工も新産業と呼び得る」として、中小企業診断士に似つかわしいグローバルな視点で建設産業を捉えている。
──建設業に携わることとなりましたが、企業診断士の視点では、どのように見ていますか
草野
入社した時は公共事業予算が今日に比べると確保されている時期でしたので、建設業が「事業あって経営なし」と言われるのも、わからなくもないと感じました。また、公共事業を景気対策としていたのは小泉内閣の直前までで、橋本内閣の時にはいつまでも公共事業が確保される見込みはないだろうと私は予感していたので、リサイクル分野への進出などを検討していました。 しかし、最初の試みは充分な成果が得られなかったので、まずは橋梁、橋脚、橋台などのコンクリート構造物の補修に特化しようと考え、当時はPP工法という九州のマグネ化学が開発した、金属繊維が入っている塗装剤などの工法が旧道路公団でも公認されていたので、それに参入したこともあります。これによって、コンクリートの維持・補修、補強、地盤改良に特化していく方向づけができました。 また、中道機械(株)や日立建機(株)と協同で、日立建機(株)の自走式土質改良機(SR-G2000)を用いた現場内土質改良工法も導入しました。この土質改良機は、原料土と固化剤を2軸式パドルミキサで攪拌し、コンベヤーで排出する専用機械です。軟弱地盤対策として行う工法ですが、現場で環境負荷を抑えつつ現場発生土を高品質でムラのない改質土に改良して再利用するため、トータルコストが削減できます。これが報道などで公表された結果、問い合わせが意外と多く来ています。
──その他にも、北海道経済産業局が進めている新連携認定計画で公認された下水道維持補修工事用超小型穿孔ロボットも開発し、東京ビックサイトで行われた日本下水道協会の主催による下水道展に、3年連続で出展したとのことですが、開発に至る経緯を含めて伺いたい
草野
これは私たちが独自開発した、下水道管を主体とした穿孔ロボットで、来年からいよいよ販売となります。開発のきっかけは、平成14年12月と平成15年1月に札幌市発注の下水道管更生工事に孫請けという形で参加した時です。 現場が始まると、私はスタッフに気付いた問題点をボードの左側に書き出し、右側にはどうすれば良いかを書き出すよう指示しました。その結果、様々な問題点が浮上しましたが、中でも特に深刻だったのは仕上げで、作業のやりにくい箇所で時間がかかり過ぎることでした。つまり、老朽化した管の内側を特殊樹脂でコーティングすると、本管と取り付け管の接合部分も埋まってしまうため、接合部分のライニング材を取り除かなければなりません。その場合、本管側からカメラを這わせるとともに、取り付け側からもカメラを這わせ、円の中心となるところにマーキングをするわけですが、この作業に1日かかってしまうため、取り除く作業は翌日になるという状況でした。特に本管となると、何本もの取り付け管と接合しているために、それだけ時間がかかります。 しかも、工事中は交通規制もしなければならず、古くに施工された箇所では管の位置が下がっていたり、右左にずれている場合もあります。そうなるとライニング材を半分くらいしか取り除けないこともあり、精度、仕上がり、そして品質において満足できませんでした。そこで論議した際、弟である常務が「取り付け管側から作業すれば良い」と発案したので、さっそくその機械を開発することになりました。 そうして完成した機械を、下水道展に3回出展したのです。最初に出展した機械は70〜80センチの長さで、これは少し大きすぎました。取り付け管には勾配が60°くらいのものもあり、その場合は30p程度の長さでなければ管内を通せないのです。そこで、2年目には30pスパンの芋虫状のものを製作しましたが、施工した人々の話を聞くと、取り付け管では、やはり直径10p程度でなければ、汎用性は低いとの指摘がありました。15p口径の管が多いために、機械も15pでは入らないわけです。それで今年は10pにまで縮小したものを出展し、ようやく問題無しと評価されました。お陰で、現在は実際の現場でパイロットテストもしてもらい、来年3月〜4月には販売を開始するところであります。
▲自走式土質改良機
――公共事業の施工会社だけでなく、いよいよ機械メーカーとして踏み出したのですね
草野
当社の定款も昨年には「メカトロニクス製品の開発・製作・販売」という業務を付け加え、経済産業省の区分けである製造業への参入が可能となりました。 この穿孔ロボットの他にも、第二弾としては災害時にレスキューが駆けつけるまで、瓦礫の下に埋まった人に酸素や食料などを届けられる機械を検討しています。穿孔ロボットの応用型で、無線によるリモート操作により、どこでも移動できるキャタピラ式の芋虫型機械です。これに酸素や水、サンドイッチ、おにぎりなどの食糧を運搬できるものを考えております。
▲超小型穿孔(せんこう)ロボット
――穿孔ロボットについては、どのくらいの価格設定を想定していますか
草野
最終的な販売価格は2,200万円(+消費税)くらいになるでしょう。
──独自商品の販売が安定すれば、ソフトランディングに成功したと言えますね
草野
やはり、独自のノウハウや人脈を活用できる環境の中で、建設業以外に収益の上がるものを試行錯誤していくしかないでしょう。 ただし、私は技術屋ではありません。技術屋ではないから、今ある技術やノウハウの転用という思考に立っているわけです。建設業のマーケットは非常に厳しくなってきていますから、先に述べた維持・補修における新工法や、バイオを使ったロードヒーティングが実用化できれば、それは新しい産業分野なのだと私は思うのです。
――中小企業診断士の厳しい目で、自社も診断しているわけですね
草野
そうです。やはり建設業というのは専門技術が最大のキーワードであり、キーポイントであることは間違いありません。施工能力が一番重要であります。
会社沿革
大正 7年4月:創始者草野新治氏が森合組の出張所長として事務所を江別市に開設
昭和11年4月:草野組創業
昭和28年4月:草野作工株式会社に改組
昭和29年  : (現)有限責任中間法人江別建設業協会会員登録
昭和39年5月:社団法人 札幌建設業協会 会員登録
平成 3年5月:1級建築士事務所許可登録
平成 5年10月:宅地建物取引業許可登録
平成 7年1月:財団法人草野「河畔林」トラスト財団設立
平成11年8月:ISO9002:1994認証登録
平成14年4月:3SICP技術協会(管渠更正)会員登録
平成15年9月:ISO9001:2000認証登録
平成16年4月:社団法人 日本下水道協会会員登録

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