建設グラフインターネットダイジェスト

〈建設グラフ2007年12月号〉

interview

通年型スケートリンクでトップアスリートの養成と市民の健康促進を実現(後編)

――市域を森で囲まれた20万人都市のイメージを目指す

北海道 帯広市長 砂川 敏文氏

砂川 敏文 すながわ・としふみ
生年月日 昭和 23 年 1 月 21 日
出身 香川県大川郡志度町(現在:さぬき市)
昭和 45 年 4 月 農林水産省 農地局 経済課 入省
昭和 59 年10 月 北海道開発庁 総務課長補佐
昭和 63 年 6 月 北海道開発局 帯広開発建設部次長
平成 3 年 6 月 北海道開発庁 計画官
平成 8 年 7 月 北海道開発局 官房調整官
平成 10 年 4 月 帯広市長当選 就任(4月21日)
現在 三期目

 十勝・帯広と言えば、スピードスケートが地域のスポーツ文化として根付いているだけに、清水宏保、石野枝里子、妹尾栄里子をはじめ有力選手を多く輩出する地域性が特色でもある。しかし、トップアスリートを育てた現施設は老朽化や冷媒フロンガスの製造中止などから、改築が必要となり、帯広市は国内でも初めての通年型屋内スケートリンクを整備し、トップクラスの有力選手養成拠点とすると同時に、機能も多様化することで、全市民のスポーツ拠点として活用化する考えだ。一方、まちづくり政策においては、無秩序な市域拡大を抑制し、グリーンベルトに囲まれた市域に20万人がほどよく集積するコンパクトシティの形成を目指している。前号に引き続き、砂川敏文市長に帯広市の魅力と将来像などを語ってもらった。
──十勝管内では、スピードスケートの名選手も輩出していますね
砂川
十勝にはスピードスケートの文化があり、地域の人々は子供の頃から日が暮れるまで親しんできたスポーツで、この十勝で育ってきたスポーツ文化ですから、他と比べて圧倒的な強さを誇っています。それだけに、名選手も多く輩出しています。これまでもそうですが、今後もレベルアップやヴァージョンアップは常に努めなければなりません。 こうした中、従来のリンクが老朽化や冷媒フロンの製造中止から改修が必要になり、この際、思い切って市民が利用しやすく選手をより強化できる屋内型のリンクにしようと考えました。お陰様で、これは無事に事業化できて、この7月に着工し、2年後には完成します。これが完成すれば、これまでの11月から2月までの4ヶ月間の利用期間から7月中旬から3月上旬までの8ヶ月間の利用が可能になります。この施設は日本のスケート界が待望していたものになります。これまでは長野市に「エムウェーブ」というオリンピック用の施設がありましたが、リンクとして稼動するのは10月の秋以降なので、夏の期間は使用できませんでした。このため、夏場にも練習したいと考えるトップアスリートなどは、みな外国で合宿したりしていました。しかし、この施設で7月からリンクが使用可能となれば、拠点性を高めることにもなり、十勝の競技レベルもさらに向上していくでしょう。 ただし、それはトップクラスの選手の練習環境としては理想ですが、それだけでなく子供達にも裾野を広げなければなりません。そしてより一層スピードスケート文化を定着させ、盛り上げたいと思います。 また、屋内スピードスケート場は多目的化するため、中地については、テニスやフットサルなど別の競技やイベントにも使えるようになりますから、全市民の健康とスポーツ振興を促す施設にもなります。
――一方、帯広市は中心市街地活性化の基本計画が国に認定されましたが、今後どのように具体化していきますか
砂川
従来からも中心市街地の活性化に取り組んできていましたが、基本計画が認定され、郊外型の大型店舗などは影響が大きいので規制するなど法律体系も整備されました。以前には郊外型大型店舗がどんどん進出してきたのですが、その結果、今日では弊害の方が目立ってきたこともあります。そのため、これを規制することが今後の具体的な解決策になるものと思います。 国の認定を受ければ、国としても優先的に周辺エリアの開発に乗り出すでしょう。私としても、現在の中心市街地が現状のままで良いとは決して思っていないのです。街として無制限に拡充していくのでは、行政として負担が重くなります。人口がどんどん増えるという時代でもないので、出来るだけ市街地をコンパクトに収めたいと考えています。 市の「帯広の森」の計画を見てもわかるように、市街地を森で囲み、その中でおよそ20万人くらいが住める市街地を目指したいと思います。したがって、何でも誘致しようという方向性ではありません。そうした方向付けによって、この7〜8年で民間の分譲・賃貸マンションなどが、街中に建設されてきています。 一方、中心街で展開している「菜の花」という高齢者下宿事業も順調です。「北の屋台」という屋台村は全国から注目され、多くの利用者で賑わっています。こうしたことをさらに進め、活性化を図っていく上で具体的な新計画を作ることが必要でした。 中心市街地というのは、他の所とは違い、そこに行かなければ味わえない雰囲気や、様々な機能が集中する「街の顔」であり、人々の生活や交流の場として他のところとは違うものがあれば良いと思います。そうなれば人は集まるもので、帯広市の中心市街地では活性化のために昨年から6月から9月までの毎週日曜日にメイン通りの車輌を止め、街中歩行者天国が実施されています。
▲帯広市スケート場 外観イメージ
──人の交流を促す有効策ですね
砂川
しかし、これは行政主導ではないのです。民間企業の人や商店街の人々など、中心街を活性化させようと取り組む若者などが結構いるのです。そうした人々が実行委員会を作り、賑わいを生み出すために、6月から毎週日曜日に実行することにしたのですが、市民の間では好評です。  色んなグループによる様々なイベントも積極的に行われ、歩行者天国を発表の場にしたり、ブラスバンドが登場したり、詰め将棋が行われたりと、着実に活動の場として広がり、かなり盛り上がっています。
▲帯広市スケート場 リンクイメージ ▲帯広市スケート場 エントランスイメージ
――人の集積と交流は商業には欠かせないものですね
砂川
ただし、商店街側としてももう少し改善の余地がありそうです。個々の店舗がいかに歩行者天国と連動していくかが課題で、せっかく人が集まるのですから、出来るだけその人達に立ち寄ってもらい、商品を買ってもらうなどの消費に繋げていけば、さらに賑わっていくでしょう。 しかし、こればかりは行政が無理にやりなさいとは、言うわけにもいかないので、それぞれの商店主が工夫をしてもらうしかないので、民間の活動と私たち行政の基本計画による事業などを、理想的に組み合わせていくのが良いと考えています。 これから行政も市民も、それぞれがまちづくりを考えなければなりません。今までのように、公益に関することは、すべて行政がやってくれるのが当たり前で、行政もそれに応えられてきた時期はありましたが、今日ではそうでなく官民が連携しながら協力して働く時代です。その方がより良い成果が得られるものです。一方に依存してしまうと、必ず不満などが生じて解決には結びつかないものですね。

HOME