建設グラフインターネットダイジェスト

〈建設グラフ2007年12月号〉

interview

低価格入札には緊急公共工事品質確保対策で対応(後編)

――入札ボンドの導入で金融機関による入札保証

北海道開発局局長 鈴木 英一氏

鈴木 英一 すずき・えいいち
昭和50年 3月 北海道大学工学部卒
昭和50年 4月 北海道開発庁採用
昭和63年 4月 同北海道開発局石狩川開発建設部千歳川放水路建設事業所長
平成 3年 4月 同北海道開発局帯広開発建設部帯広河川事務所長
平成 4年 6月 同北海道開発局建設部河川計画課長捕佐
平成 5年 4月 同水政課開発専門官
平成 7年11月 同北海道開発局建設部河川計画課河川企画官
平成 9年 4月 同北海道開発局旭川開発建設部次長
平成10年 6月 同北海道開発局石狩川開発建設部次長
平成12年12月 同北海道開発局長官房開発調整課長
平成13年 1月 国土交通省北海道開発局開発監理部開発調整課長
平成14年 8月 同北海道開発局建設部河川計画課長
平成15年 7月 同北海道局水政課長
平成17年 8月 同北海道局参事官
平成18年 7月 同北海道開発局建設部長
平成19年 7月 同北海道開発局長

近年の公共工事において注目されている課題は低価格入札で、健全な施工会社の経営を圧迫するだけでなく、公共事業の品質を損ねる懸念もあるため、早急な有効策が求められている。そこで、北海道開発局では緊急公共工事品質確保対策や、従来の総合評価方式だけでなく、小規模工事を対象とした簡易総合評価方式を導入したり、金融機関に入札保証を求める入札ボンド方式を採用することで、ようやく過度の低価格入札は減少傾向に向かい始めた。前号に引き続き、鈴木英一局長に今後の開発事業のあり方と、ダンピング対策などを伺った。
(前号続き)
――地域づくりを担う地方自治体との連携について
鈴木
北海道の各地では、地域の方々の創意工夫による地域の自立を目指した様々な活動が行われています。こうした状況を踏まえつつ、北海道開発局では、社会資本整備の効果を高める観点から、地方公共団体との連携を始めとする様々な主体との連携や、ハード・ソフトの連携に力を入れて取り組んでいます。 例えば、観光や地域振興の分野では、地域と行政が連携し、沿道景観の保全・改善により「美しい景観」、「活力ある地域」、「魅力ある観光空間」をつくる「シーニックバイウェイ北海道」の全道展開を推進しています。 また、農業の分野では、農地や農業用水などの基盤整備を通じて、農業経営の安定化や地域農業の活性化を図り、ナガイモの台湾輸出に見られるような「攻めの農業」を支援し、「北海道ブランド」の向上に努めるとともに、「わが村は美しく−北海道」運動の展開などを通じて、地域やNPOの活動を支援しているところです。 その他、平成16年度からは地域の方々やNPO等との協働により、北海道観光の魅力アップや防災活動などの危機管理体制づくりに向けて地域と一体となった取り組みを推進する「地域協働プロジェクト」を進めており、3年を経過した今、より地域と連携した活動が展開されているところです。 これらの取り組みに関する効果をより一層高め、更なる展開を図るためには、北海道を始めとする関係機関との一層の連携が不可欠であると考えています。これまでも事業の推進や地域振興に関して、私たちと北海道及び市町村による「地域連携会議」を全道各地で開催し、意見交換などを通じて、関係機関、地域の方々と協働・連携し、地域が主体となって自ら描く将来像の実現に努めてきたところです。 今後も多様な主体との連携・協働を推進し、地域のニーズに対応した社会資本整備を進め、施策効果の十分な発現を図ることが必要であると考えています。
――低価格入札が問題視されていますが、対策はありますか
鈴木
いわゆるダンピング受注については、公共工事の品質に影響を及ぼしかねないだけでなく、下請へのしわ寄せ、労働条件の悪化、安全対策の不徹底などにつながるものであり、建設業の健全な発展を阻害するものであることから、その排除の徹底を図る必要があると考えています。 ダンピング対策として、主に大規模工事の施工段階における監督・検査、立入調査などを実施してきたところですが、依然として 低価格による入札案件が高水準で推移していることから、入札段階を中心とした新たな対策として、極端な低入札者に対しては、特に重点的に調査を行う特別重点調査の試行実施や、施工体制が確実に確保できるかを審査に加味する施工体制確認型総合評価の実施を盛り込んだ「緊急公共工事品質確保対策」に、本年1月から取り組んでいるところです。 これらの低入札対策の実施により、7月末現在では前年度同時期に比べ、一般土木や鋼橋上部工事などの大規模工事において、極端な低入札は減少傾向にあります。 また、本年3月には水門設備工事に関し、公正取引委員会からの官製談合防止法に基づく改善措置要求が出されたことにより、本省に設置された入札談合防止検討委員会において取りまとめられた「当面の入札談合防止対策」(平成19年3月9日)において、災害復旧工事などを除き、一般競争入札方式へ段階的に移行するとともに、総合評価方式の拡充や入札ボンドの導入など、不良不適格業者の排除等を図るための条件整備を行うこととされたところです。 このため、平成19年度における北海道開発局の入札及び契約に関する取り組みとしては、予定価格1億円以上の工事を対象とする一般競争入札方式を予定価格5千万円以上にまで拡大。 総合評価方式を積極的に活用することとし、特に小規模工事については、簡易型総合評価方式を積極的に活用しつつ、昨年の全工事発注件数5割相当以上を原則として、発注件数の全件数を対象に実施。 不良不適格業者の参入や経営力に比べて過度な入札参加の増大の懸念があるため、金融機関による入札保証などのいわゆる入札ボンドの提出を求めることとし、予定価格7.2億円以上(WTO対象工事)の工事を対象に実施。 工事と同様、設計コンサルタント業務についても、低入札価格調査を実施することとなりました。 北海道開発局としては、これらの措置を着実に実施し、入札・契約手続における一層の透明性及び競争性の確保、公共工事の品質確保の促進等に努めていきたいと考えています。  ?

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