建設グラフインターネットダイジェスト

〈建設グラフ2007年11月号〉

interview

北海道洞爺湖サミットの受け入れ準備に努力(前編)

――北海道の自然をCO2削減合意の促進剤に

北海道知事政策部北海道洞爺湖サミット推進局 局長 山谷 吉宏氏

山谷 吉宏 やまや・よしひろ
昭和55年3月早稲田大学政経学部卒業
平成 9年6月 環境生活部文化・青少年室文化振興課長補佐
平成12年4月 文化財団派遣
平成14年4月 総合企画部政策室参事
平成15年6月 総合企画部IT推進室情報政策課長
平成18年4月 企画振興部IT振興局次長
平成19年5月 知事政策部北海道サミット推進局長
(平成19年6月 知事政策部北海道洞爺湖サミット推進局長)

来年に開催される北海道洞爺湖サミットの受け入れ準備に当たっているのは、北海道知事政策部北海道洞爺湖サミット推進局で、山谷吉宏局長は「北海道が取り組んできた自然環境政策が、世界で評価されるチャンスであり、これがCO2削減の合意に向けての促進剤になって欲しい」と期待を寄せる。そのため、会場の設営に当たっては、北海道の自然環境が、首脳会議の円滑な運営に役立つ演出を模索しているという。同局長に、サミット受け入れに向けて、道としての立場と、受け入れる道民の気構え、そして主催者となる政府・外務省への要望などを伺った。
――前回のドイツサミットに職員を派遣しましたが、主催国として参考になった点はありますか
山谷
サミット期間中は、部外者は入場できないので、外務省のサミット現地本部に職員を派遣し、約二週間の期間中に現地で手伝いをする形をとらせていただきました。日本の代表団は約200名ほどで、現地でホテルを一棟借り切ったと聞いています。 職員の派遣は、会議の運営に当たっての会場設営や警備状況、また、職員の仕事振りなど現場の状況を直接知ることが出来、さまざまな準備をする上で、大変に役立っております。
――主催国となった政府・自治体の責任は重大ですが、受け入れ側としては、どんなことを念頭において臨んでいますか
山谷
世界的な国際会議ですから、私たちは外務省とも様々に協議していますが、近年の傾向は、会議における具体的なコンテンツと成果がより重要視されるようになっています。 次期開催国の日本国としては、京都議定書の次の枠組み作りにおいて、イニシアティブを発揮することが課題です。また、外務省は運営議長国として、円滑な交通、宿泊、警備、通信などの設備を提供することになり、開催地となる私たちは、その設営・運営に協力することになりますが、いかに会議の成果を挙げる体制づくりをできるかがポイントです。 そのためには各国の代表団に、北海道の優れた自然環境に触れてもらい、くつろいだ中で、その豊な自然環境を体感してもらうことが有効です。何しろ、次のテーマは、CO2の削減問題などで白熱した議論になることも予想されます。そうした協議を円満に進めてもらうための場作りを成功させなければなりません。そのため、開催地として、例えば北海道の植林や、北海道が取り組んでいる環境保全などによって維持されている本道の大自然を、演出の中で活かして欲しいと思います。 それらを通じて北海道というものを世界にアピールする機会になると同時に、CO2削減に向けた我が国の主張に、各国が協調する良い流れが生まれることを期待します。
――日本国内で最も広い領土で、森林面積も最大ですからね
山谷
確かに、森林面積も最大ですが、経済も財政も厳しい状況にありながら、森林保全に取り組んでいますし、漁業を護り、海洋環境を護るため植林にも取り組んでいます。これまで北海道が地道に取り組んできた政策は、これからの環境重視の時代に大きくアピールするものと思います。
――最近は治山・林道、農業基盤、河川整備など、産業と自然保護、防災といった多機能を兼用する公共事業のための予算が削減される傾向にあります。近年の国際世論や次期サミットへの対応を考慮するなら、むしろ重点配分をして、CO2削減に難色を示す先進国に対してアピールするチャンスとするべきでは
山谷
関係各部においても、サミットを成功させるため、様々な施策を検討中ですが、この機会に、中長期的観点から、環境の北海道、食の北海道、観光の北海道を世界にアピールできる施策を組んでいただくようお願いしています。そうした各部の取り組みによって、次期サミットが本当に生きたものになると期待しています。
――北海道の政策的な予算配分における方向付けが、サミットによって形成され、また日本政府はおろか、世界にも承認される切っ掛けにもなり得るのでは
山谷
財政はあくまでも厳しいので、選択と集中は必要ですが、知事、副知事とも関係部局にその指示を出しており、今夏の第二回定例議会でも随分議論されました。
――議定書に基づくCO2問題となると、同盟国でもあるアメリカの抵抗が特に強かったものですが、最近はようやく態度を軟化させ始めたとはいうものの、各国の情勢と思惑によって、またどう変化するのか予断できないという不確実性は、国内政治も国際政治も同じでしょう。北海道でのサミットを通じて、北海道の自然への政策が、その流れを安定させる決定打になれれば、これは国際的にも偉大な功績になるのでは
山谷
議会答弁でも見られましたが、北海道としても環境宣言によって、これを確実に堅持し、北海道で行われている様々な取り組みを発信することで、国レベルの外交に対する地域からの支援になれればと思います。
――環境問題といえば、最近は工業化の進む中国で光化学スモッグが問題視されています。日本でも高度成長期には見られた現象ですが、それを解決した手本となるのも、環境サミットをリードする立場としてのあり方では
山谷
実は7月18日に、赤レンガ庁舎前で、サミット開催日までのカウントダウンボードの除幕式を行ったのですが、奇しくもその日は「光化学スモッグの日」でもあったのです。以前に、東京都杉並区で女子中学生が倒れ、その原因が光化学スモッグとはじめて認定されたのが7月18日でした。最近では温暖化による気温上昇で、国内でも再び光化学スモッグが発生しているようです。 CO2削減の課題も先進国対先進国、先進国対発展途上国という、これから発展を目指す地域も含めて、国際政治としての諸問題が端的に顕在化してくる課題ですね。何しろ、地球の将来を決める問題ですから。
――沖縄サミットまでは、どこか先進国の社交場というイメージが感じられましたが、今後はより実務的な色彩を帯びてくるのでしょうか
山谷
沖縄サミットでは、G8は世界の安定のために何をなすべきかが主要なテーマでした。しかし、その後になって、NGO、テロ、地球環境問題と、まさにこれからの地球の将来を議論すべき課題が次々と顕在化してきたことから、いわゆるリトリート型の、実質的討議の場に変わりました。今年のドイツサミットでは丸二日間にわたって、全体会議だけでなく、各国間の首脳会談なども休みなく次々と行われ、大変厳しいスケジュールでした。
――各国とも国益と国民のコンセンサスを背負った、利害が明確な会議になりつつあるためか、関係団体の関心も高いようで、ドイツサミットでは一部NGOの暴動も見られました
山谷
NGOの中には、サミットそのものに反対する過激な団体と、サミットにおいて自分たちの主張を反映させようと考える穏健な団体があり、二つに大別されます。穏健派は、サミットの中で話し合われたテーマについて、自分たちの意見も表明したくて集まってきたようですが、一方、サミット自体が先進国の利益のために行われているものでしかないと反対する団体は、デモや座り込みなどによって進行を阻害しようとするわけです。その対応が、今後は警備における大きな課題になると思います。      (以下次号)

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