建設グラフインターネットダイジェスト

〈建設グラフ2007年11月号〉

interview

札幌市との連携を視野に入れつつ 東北海道の中核都市としてまちづくり(前編)

――民間主導の歩行者天国で中心街の活性化に成功

北海道 帯広市長 砂川 敏文氏

砂川 敏文 すながわ・としふみ
生年月日 昭和 23 年 1 月 21 日
出身 香川県大川郡志度町(現在:さぬき市)
昭和 45 年 4 月 農林水産省 農地局 経済課 入省
昭和 59 年10 月 北海道開発庁 総務課長補佐
昭和 63 年 6 月 北海道開発局 帯広開発建設部次長
平成 3 年 6 月 北海道開発庁 計画官
平成 8 年 7 月 北海道開発局 官房調整官
平成 10 年 4 月 帯広市長当選 就任(4月21日)
現在 三期目

帯広市は、穀倉地帯である十勝支庁の中心都市として発展してきたが、市町村合併などの新しい流れを受けて、さらに管内における求心力が求められている。そのため、砂川 敏文市長は、周辺町村との連携を高めるだけでなく、高規格幹線道路によって直通する札幌市との交流を高めるまちづくりを目指している。とはいえ、リトルサッポロを目指すのではなく独自性を持たせ、無制限に市域を拡大するのではなく、森に囲まれた20万人規模の都市像を描いており、その実現に向けた都市計画が国によって認定された。同市長にそうした都市づくりにおける課題や理念などを伺った。
――帯広市は十勝管内の中心都市ですが、どんな都市づくりを考えていますか
砂川
帯広市はこれまでもこれからもそうですが、十勝の中心都市であると同時に、東北海道の中核都市として発展し、今後も都市基盤は整備されていきますが、今後はいままで以上に周辺都市との連携がスムーズになっていくよう、ネットワークを早く完成して欲しいと関係方面に要望しています。いま我々が考えているのは、その中でも帯広市の中核性を高めることで、そのために都市間ネットワークを活用していかなければなりません。そのためにも、周辺地域と話し合いながら進めていくことが大事だと思います。  一方、札幌市とのパイプも重要で、ストロー効果などと言われますが、ストローとはそもそもパイプであり、両方に流れるわけですから、一方通行ではなく双方向の流れとなります。両都市は、4年後には高規格道路で繋がりますから、いまからそれを意識した街づくりが必要です。
――北海道は広域分散型で、とかく市町村は互いに孤立しており、域内経済で自立しなければならないという不利な地勢ですね
砂川
北海道は広大で農業が基盤となっている地域です。農業から派生した様々な産業も道東にありますが、やはりその基礎は農業ですから、十勝の農業・畜産を維持・発展させることが重要で、そのためにも農業基盤整備が必要です。一方、営農においても品質改良など、様々な課題があります。EPAなどで対外的な経済環境は厳しくなりますが、政府と連携しつつ乗り切っていかなければなりません。  一方、バイオマス関係も多角的に推進していくことも必要で、これは十勝の農業を側面から支える事業として期待されます。余剰生産物や、食料ではなく飼料にしかならないようなものはエタノールに転換できるため、これまで産業廃棄物として経費をかけて処理していたものが、単価は安くても有価物という商品になるのです。実際に十勝ではバイオエタノール実証プラントの建設が行われており、こうした取り組みは農業だけではなく環境貢献事業とも言えます。
――都市間ネットワークの構築により、物流機能の向上が必要ですね
砂川
観光も含めた交流が出来る機会を増やしていくという考え方が、大切だと思います。定住人口も大切ですが、道内外との交流人口も増やしていきたいものです。しかし、交流人口を増やすとはいえ、地域の独自性がなければ、せっかく訪問してもらっても変わり映えがないために訪問の意味がなくなりますから、出来るだけ独自性を強調し、希少価値と個性など地域の持っている特色を最大限に活かすことが必要です。そこで、十勝の特性とは何かが問題です。
――十勝管内では、ばんえい競馬も名物ですが、最近は経営危機の話題がもっぱらですね
砂川
自治体は公営ギャンブルに携わらない方が良いとする風潮があります。ただし、これは収益性が良くないからという理由です。しかし、かつて競馬開催市はみな成功してきており、その収益を一般会計に繰り入れ、それによって様々な行政サービスの提供に寄与してきたわけです。それが今日では逆に赤字となり、市民の理解が得られず、自治体も赤字経営に耐え切れなくなり、そのため廃止しているのが現実ですね。  けれども、このばんえい競馬は北海道だけのもので、地方競馬のひとつですが、地域に根ざしたものであり、北海道開拓の歴史に結びついたものです。今でこそブルドーザーやトラックなどの重機が主力ですが、かつてはそれをすべて馬が担っていたのです。そのお陰で今日があるのですから、そうした記憶を北海道人として失うべきではないと思います。残念ながら、人々の記憶というものは物がなければ薄れてしまうものです。北海道にはサラブレッドだけでなくポニーなど様々な馬の種類があり、それだけ馬が文化に根付いているのです。
――確かに通常の競走馬とは違って、実用的な力強さが凄いと思いました
砂川
かつてのように、いわゆるギャンブルとしてのばんえい競馬は、そのままでは生き残れないでしょう。赤字を出さないようにしなければなりませんが、そのためには交流人口の拡大や馬文化の伝承、そして産業として運営を継続することで人々の交流が生まれ、様々なものが動くことになります。最近では、若い人のファンも増え、家族連れの姿も見られます。 したがって、ばんえい競馬もヴァージョンアップしていくことが必要です。全く新しく造り出すのはエネルギーと時間もかかるでしょうから。
(以下次号)

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