建設グラフインターネットダイジェスト

〈建設グラフ2007年10月号〉

interview

生駒組にしかできない危険箇所の安全施工

――橋梁技術の高度化で活路を模索

株式会社 生駒組 取締役社長 生駒 雅彦氏

生駒 雅彦 いこま・まさひこ
昭和29年4月22日生まれ
慶應義塾大学 昭和52年3月卒業
職 歴 昭和53年4月株式会社生駒組入社
    昭和61年5月株式会社生駒組常務取締役
    平成 6年5月株式会社生駒組取締役副社長
    平成13年1月株式会社生駒組代表取締役社長
公職歴 社会福祉法人新生会監事
    社団法人旭川建設業協会理事
    社団法人北海道上地改良建設協会理事
    社会福祉法人旭川畑親会評議員
    社団法人北海道農業建設協会理事
    社団法人うまの道ネットワーク協会副会長
    上川農業建設協会副会長
    旭川商工会議所常議員
    社団法人茶這裏干家族交会旭川支部副支部長
    社団法人態川中法入会常任理事
    更生保護法人旭川更生保護協会理事
    社団法人北海道土地改良建設協会理事

公共投資の激減で、建設業のソフトランディングが注目されているが、そうした動向に動かされず、本業を貫こうとする企業もある。大正13年創業の生駒組は、橋梁技術に秀でた実績を持っており、特に急峻な崖や絶壁、海中など、人が近づけず、他社も引き受けたがらない危険箇所での施工を得意としており、その意味では生駒組ならではの生き筋を持っていると言える。同社の生駒雅彦社長は、「市民や事務員にも危険な現場を見せることで、我々の仕事の意義を知ってもらい、上川管内の発展のために本業を以て尽くしていきたい」と語る。
――大正13年の創業以来、82年が経過しましたね
生駒
祖父は、大正13年に石川県から入植し、当初から土木に携わっていました。昭和25年に株式会社に組織変更し、昭和47年に生駒二朗が二代目に就任して、平成13年に私が引き継ぎました。 橋梁工事を得意分野としてきましたが、その他にも道路などあらゆる土木工事に携わり、発注官庁からも表彰も受けるなど評価していただいています。
――様々な施工現場を経験してきたと思いますが、印象深い現場はありましたか
生駒
小樽市の雷電海岸などは、かなり危険箇所でしたが、資材を人力で運搬していました。また、水中でのコンクリート施工という危険な現場もありました。その他、雄冬方面の大橋梁や小砂子も危険な現場でしたね。 私は経理担当者らと現場を廻り、現場代理人から報告を受けたり、昼時には作業員を集めて給与を手渡していました。振り込みではなく手渡しすることで、会社の事務担当者も現場を見ることが出来たし、状況がどんなものであるかを知ることができます。
――そうした危険を負いながら安全な道を造るのも技術力のお陰ですね
生駒
危険な仕事ですが、結果的にはそこに住んでいる人々の利便を高め、さらに北海道の発展のためにもなり、そして土木技術の向上にも寄与することになります。公共事業とは公費を以て市民・道民・国民のために行われる大変な仕事なのだと、若い頃に痛感しました。 現在は森林管理局の事業で、利尻町の治山工事を施工していますが、現場は少しでも集中豪雨があれば、雪崩のように砂利や石などが上部から流れて来るのです。そしてそれは市街地に至り、海岸にまで流出していくのです。それを塞き止めるために砂防ダムを整備しているわけですが、わずかな降雨でも、せっかく作ったダムが決壊してしまうのです。かなり頑丈に作っても壊れるのです。 しかし、そうした山中に我々が踏み込んで、命がけで作業をしていることを、どれくらいの道民、国民は理解してくれているのか、あるとき疑問にかられました。そこで、地域住民にそれを知ってもらう必要があると思い、見学会などを提案したところ、賛同が得られたのでこれから実施するところです。
▲旭川紋別自動車道上川町上滝橋下部工事
――平坦で安全な箇所での施工とは違って、かなり厳しい管理体制が求められますね
生駒
もちろん、安全管理のほうは万全の体制で、安全パトロールも入念に行っており、現場代理人も危険予知と危機管理に精通した人材を配置しています。 そうした結果、あまり他社が望まない危険箇所での施工を、我々が専ら引き受ける格好になっています。何しろ、機材を持ち込めないようなところもかなりあり、名寄市の高速道路の落石防止施工の現場でも、かなりの急傾斜で石を積んだりしています。もちろん、安全帯は装着しているとはいえ、足を踏み外したものなら転落する状況ですから、安全管理の重要性は身に染みています。
▲大雪通新神楽橋架替工事
――今日、これほど公共工事が削減されることは予想していましたか
生駒
伸びることはないとの政府方針から、増えないものと思っていましたが、これほど急激に下降するとは予想外でした。そのためソフトランディングも提唱されていますが、私たちはあくまでも土木を中心に生きてきた会社ですから、いわばオンリーワンとして生駒組にしか出来ない仕事とは何かを見極め、そこに全力集中していくべきだと考えています。最善の技術力で高い評価点をあげ、安全に無事故無災害でいくのが第一です。 事業量がピーク時の4割とはいえ、世の中から道路や河川が無くなるわけではなく、また災害も無くなりません。そのため、新設も含めてそれらの修繕・施工は我々の業界にしか出来ないのですから、建設業もなくなるはずがないのです。したがって、少ない仕事を完璧に仕上げ、収益も出せるようできるだけの努力をし、地域の皆様に満足して頂ける仕事が出来ればと思います。
――30年間勤務し、トップという立場ですが、経営における理念をお聞きしたい
生駒
大切なのは、旭川に生まれ育ち、旭川に骨を埋めることです。地域のためになにが出来るかを考え、何かをしていきたいと思います。旭川市だけに限らず、上川管内ひいては北海道に繋がりますが、特に上川に本拠地を置いているのですから、上川を中心に住民のために出来ることをやっていきたいというのが、社訓であり理念です。 例えば、新神楽橋の施工では、近所に上川神社があり、その下は河川敷で春先には花見でごった返します。そこで我々が清掃に当たり、市民が快適に花見を出来る環境づくりに取り組んだり、国道の沿道には花を植えるなど、本業外のサービスも行っています。その他にも、良いアイデアがあれば、すぐ提出してもらい実行していこうと従業員に呼びかけています。 一方、社内では経理の女子社員も、上司と一緒に現場をパトロールする機会を作っています。そこで見た感想などを、イントラネットに構築したサイボウズの中で、現場代理人の様子も含めて報告してもらうなど、技術者ではない主婦や女子の目で率直な意見を聞かせてもらっています。
▲花壇造り(ボランティア)

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