建設グラフインターネットダイジェスト

〈建設グラフ2007年6月号〉

interview

豊富な経験と技術に基づく地域の信頼が企業の原点

――オホーツクの21世紀を考え実行する企業

土屋工業株式会社 取締役社長 土屋 善治郎氏

土屋 善治郎 つちや・ぜんじろう
昭和56年4月10日 土屋工業株式会社入社 土木部 土木係長
昭和61年4月 1日 土木部長
平成元年5月 1日 取締役土木部長
平成 2年8月30日 専務取締役
平成 8年4月 1日 取締役社長

網走市に本社を置く土屋工業株式会社は土木、建築工事をメインとする総合建設業として着実に事業実績を重ねている。堅実な施行管理能力には定評があり、品質と安全を最優先に顧客満足度の向上を経営理念の柱に掲げている。平成8年に就任した土屋善治郎社長は、建設業の新たな雇用創出を目指して「オホーツク21世紀を考える会」の地域戦略委員長を務めるなど多方面で活躍している。
――土屋社長は、本業の建設業のほかにオホーツク21世紀を考える会の戦略委員会委員長など多方面でご活躍されていますが簡単な略歴をお聞きしたい
土屋
私は、昭和53年に大学を卒業後、3年間、道内企業でお世話になり、56年に係長職でこの会社に入社しました。高度成長期の真っただ中で業界も安定していた時期です。 知床峠の国道333号改良工事など印象に残っている工事は少なくありません。当時の知床峠は、まだ砂利道で、夏でも防寒衣が手離せないほどでした。知床旅情のヒットで知名度は一躍全国区になり、今では世界自然遺産に登録されるまでになりました。自然保護を訴えるきっかけになったことは喜ばしい限りです。 そして、取締役部長、専務を経て、平成8年に父親から土屋工業のカジ取りを任されました。
――昭和32年の創業以来、網走管内を代表する建設企業に成長されましたが、経営理念をお聞かせください
土屋
建設産業は、時代の要請に応えながら、地域に暮らす人々に、より安全で快適な住環境づくりや、豊かな社会に貢献していく役割を担っています。 わが社は、「各種工事に応じた堅実な施行と管理に努め、企業としての永続的な成長及び地域社会のさらなる発展に寄与することはもちろんのこと、顧客満足度の向上を永遠に追求しながら社員の幸福を願い、企業の永続的な成長をめざす」ことを、経営理念に掲げているところです。 特に公共事業は税金で実施しているわけですから、常に地域に貢献することを念頭に置いて会社を運営していくことが大切です。また、私たちのように地域に根差して事業活動している企業は、豊富な経験と技術力を基に地域との信頼関係を構築することが企業発展の源泉になると思っています。 今日の建設業界を取り巻く環境は依然として厳しい風が吹いていますが、先代たちが築き上げた歴史と伝統と風土、それに時代の流れを上手く共有し、品質・安全を最優先に、営業力の強化と技術力の向上、さらにコスト競争の向上を図り、創業建設業者としての操業力を高めるとともに、お客様が安心して発注できるように堅実かつ温かい社風を守っていきたいと考えています。安全性と品質には絶対手を抜かないよう、日ごろから社員に口をすっぱくして言っています。
――構造改革の流れの中で公共事業が大幅に圧縮されています。業界の生き残りについてはどのように考えていますか
土屋
それぞれの地域で時代とともに栄えた産業があったように、建設業もかつては管内のリーディングカンパニーの一面があったと思います。今でも網走経済を下支えしている役割を果たしていると確信しています。 公共事業は、人口密度など様々な数値が評価され、事業の誘致・採択の面で(人口の)多いところに負けるのはやむを得ないところはありますが、雇用確保を前面に押し出して公共事業の必要性を訴えてほしい。道路整備にしても、医療とリンクしていますから、そこには住民の命と暮らしを守る視点があっても良い。公共事業は縮小の方向ですが、みな何とかして生き残っていこうと必死にもがいています。土屋工業は今後も本業に軸足を置いて頑張っていくつもりです。
――災害時に地元の建設会社が果たす役割は大きいものです
土屋
そうです。昨年、佐呂間町で起きた竜巻でも、地元の建設会社がどれほど頑張ったことか。管内も過疎化が進行していますが、それぞれの地域に核となる建設会社があることが住民に安心感を与えるものだと思います。
――「オホーツク21世紀を考える会」で、社長は地域戦略委員会の束ね役でいらっしゃいます
土屋
考える会にあった10の委員会を四つに再編した5年前から委員長を引き受けています。もともとは黒子に徹していましたが、現在は建設業界のPRも兼ねて、表舞台に出ていることもしております。 また、既に21世紀に入ったので、「考える」より「実践」を念頭に置いています。その中で地域戦略委員会は、建設業の異分野進出や新エネルギーの調査、新産業による雇用創出をメインに活動しており、シンポジウムや視察を通じて、さまざまな個人、団体とのネットワークが出来たことは大きな成果の一つだと思っています。 ひと口に異分野への進出といっても大変難しいものがあります。本業が安泰で、なおかつ異分野へ事業のウイングを広げようと考えているグループと、本業がジリ貧だから異分野へ進出せざるを得ないグループとの2パターンがあり、経営者自身が頭を切り替える必要があります。建設業自体も、黙っていても仕事が回ってくる時代ではありません。引き続き地域に必要な事業を掘り起こし、国や道などの予算措置を訴えていきます。

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