建設グラフインターネットダイジェスト

〈建設グラフ2007年8月号〉

ハイクオリティ住宅の供給を担う信頼できる優良企業

顧客の要望を100パーセント反映し一棟ごとに進化

コストパフォーマンスを発揮したマンションづくり

株式会社日動 代表取締役 前川 大輔氏

前川 大輔 まえかわ・だいすけ
平成15年4月 日動サービス株式会社 常務取締役
平成17年4月 株式会社 日動 常務取締役
平成19年4月 株式会社 日動 代表取締役
現在に至る

高い人気を持つ分譲マンション「ラ・クラッセ」シリーズや賃貸マンション「クラッセ」シリーズなどのマンション開発を手がけて30年の実績を誇る(株)日動は、数年前に不動産ファンドを設立し、いよいよ投資型マンション事業にも参入した。入居者の要望を次期の事業展開において完全実施するという顧客重視の思い、また姿勢を貫いてきた信用から、供給過剰気味で買い手市場となっているマンション事業で、高評価と高実績を維持する同社のノウハウを、今年度に新任した前川大輔社長に伺った。
──会社の来歴からお聞かせ下さい
前川
当社は昭和52年2月に設立され、今年で創業30周年となります。そして、今年度に私が常務から社長に就任しました。オーナー企業ですから幼少の頃より今日に至るまで、その変遷を見続けてきました。
──ご自身がこの業界に従事する立場となって、感じることはありますか
前川
私は分譲マンションの営業職が、スタートでした。お客さまにとって、マンションは一生での高価な買い物ですから、夢や感動を提供することを基本に考えながら、私自身もやりがいを感じて取り組んでいました。
──かつては住宅金融公庫の金利やシステムの変更など、様々な動きがありました
前川
私が営業に当たったのは、不況の谷間を過ぎて、住宅需要が伸び始めた頃でした。公庫融資が100パーセントで、頭金を必要とされない時期でしたから、分譲マンションにとっては追い風でした。
──これまで、どれくらいのマンションを開発・供給してきましたか
前川
当社は60棟約2,000戸強のマンションを手がけてきました。この秋には福住地区で「ラ・クラッセ福住プレミアム」も販売となりますから、これで61棟となります。
──数年前からは、不動産ファンドという道内でも初めての手法に着手されましたね
前川
これまで実住としての分譲マンション事業に着手してきましたが、近年では欧米的な不動産金融商品としての性格も帯びてきました。例えば、アメリカでは居住目的というよりも金融商品としての投資対象として扱われています。この動向は、早晩、日本でも導入されるとの予測から、私たちもいち早くその手法に着手したわけです。
私たちは、独自に開発販売する分譲マンションだけでなく、賃貸マンションの入居募集から管理業務まで、オーナーからの受託業務も行ってきたことから、そのノウハウは十分に持っています。それを開発行為に生かしたなら、この札幌でも優良な賃貸マンションの開発も可能だと判断しました。
この賃貸マンションビジネスにおいては、マンションを開発するだけが目的ではなく、さらにその先のエンドユーザーである入居者まで見据え、たくさんの人々に入居して頂き、金融商品として運用していくのが目的です。そこで私たちの果たす役割とは、マンションの開発とプロパティマネージメントというオーナー利益を考えた管理業務となりますが、このように分業することで、より大きな力が発揮できるものと期待できます。
不動産業は、近年はパラダイムの転換期に直面しています。単なる資産価値だけでなく、金融商品としての収益還元も追求する時代へと転換しているのです。
──それを実現していくには、デベロッパーとしての信用も重大ですね
前川
創業30年で60棟を手がけてきた実績と実力、また当社の強味を顧客に伝え、事業を通じて有言実行し、信用を得ていくしかありません。
これまで、私たちの事業においては賃貸マンションの分野があまり注目されていませんでした。札幌市場は分譲に比べると、供給もそれほど多くなかったこともあり、競争力のあるマンションがあまり無い状況ですから、まずは「顧客のためのマンションとは何か」という基本から問い直し、この不動産ファンドという手段を用いて最良のマンションづくりをすることが、当社の実力を十分に発揮できるものとの結論に至りました。
つまり単なる開発だけでなく、開発したものは全責任をとるという姿勢で入居募集から管理まで一貫した業務を行っており、そのことにより説得力のあるマンションづくりを行うことが決定的な要因です。
──事業に着手して、反響はいかがですか
前川
賃貸事業に着手してからはすでに数年が経過していますが、投資家の方々はもとより、入居者にも大変に好評で、満足して頂いています。実際に、今年度に竣工したものでも入居率は98パーセントに達し、それを常時維持しているという状態です。
実は、今年は賃貸マンションのマーケットは、最も受給ギャップが崩れている年といわれています。供給が多くなっていますが、それでも当社の場合は高入居率を達成しています。
──どこに決定的なポイントがあるのでしょうか
前川
私たちが手がけているマンションは、賃貸は「クラッセ」シリーズ、分譲は「ラ・クラッセ」シリーズと名称していますが、それぞれがやはり顧客志向という点です。一棟一棟、お客さまのことを考えたマンションづくりをしていくことにより、お客さまから定評を頂き、ブランドとなっていくと思います。
そのような考えですから、市場の供給が多いときは、さらにチャンスだと思います。
▲クラッセ北大通り(賃貸) ▲ラ・クラッセ円山桜邸(分譲)
──ブランド力の他にも、入居者にとって魅力となる重要なアピールポイントがあるのでは
前川
当社の基本姿勢は、地場というものに精通した上で事業展開する地域密着型なので、用地の仕入れ手法が、他社とは異なっている点があります。例えば、地の利を知らなければ、同業他社と競ってしまい土地の仕込みで時価が高くなっていきますが、私たちの場合は地権者と直接用地交渉し、適切な価格で取得することができます。その結果、コストを合理的に抑制することが可能となり、さらに、そうした接触を通じてさらに局地的に踏み込んだ情報も得られ、次の展開につながることもあります。
また、供給過剰となっている今日の情勢は買い手市場ですから、顧客にとっては設備や立地条件というハード面が良いのは当たり前という意識があります。したがって、それ以上に顧客を惹きつけるために、私たちのマンションが顧客に何を提供し得るのかを考えなければなりません。それを突き詰めれば、お客さまのニーズを取り込んでいるというソフト的要因に辿り着くと思います。顧客の選択の眼はかなりシビアですから、真剣に顧客のことを考えているのかどうかが問題ですね。
そこで、私たちは営業及び管理での業務の中で、お客さまの声を常に聞き、今後の開発事業展開に反映することと、管理業務となると中ではクレームもありますが、そのクレームを二度と出してはいけないという姿勢で、そのクレームを開発に取り込んでいくことを基本としています。マンション開発においては、そうした顧客の声を確実に反映していなければ、シビアな顧客の視線は直ちに会社の姿勢を見抜いてしまいます。
──つまり、新規に開発するマンションは、常に顧客の声が反映されたものになっていくわけですね
前川
そうです。巷で開発されているマンションの中には、デベロッパーの要望であるマンションが多く見られますが、大切なのはあくまでも顧客の要望やニーズなのです。
私たちは、お客さまが入居してからでも快適に暮らすための声を、管理業務を通じて聞き取りしていますから、それを次の物件で生かせるわけです。かくして、私たちの提供するマンションは、一物件ずつ改善されていき、完成度が高まってきているわけです。いわば、終わりのない旅ですね。
──設計担当者にとっては、負担が重くなるのでは
前川
当社で委託する設計会社は、設計した作品が顧客に喜んでもらうことを使命と考えているところばかりなので、信頼しております。設計会社も、設計し建物を完成させることだけが目的なのではなく、入居者に喜ばれるものを創ることが目的だと思います。つまり、私たち開発者も設計者もともにベクトルは一つで動いているものと思います。
また、施工に当たっても、最初にあまりコストを考えていたのでは、それに束縛されて何も出来なくなりますから、コスト問題は取りあえず二の次とし、まずは顧客の要望をすべて取り入れることを大前提として臨んでいます。
──実際に施工に当たっている建設会社の内訳を見ると、公共事業を受注施工した実績を持った、名だたる企業が多いですね
前川
施工各社も、30年の事業展開の中で長く取引してきたところばかりなので、私たちが施工に求めるクオリティを十分に理解してくれている企業ばかりですから、いずれも安心して任せられるパートナーばかりです。
──これから分譲・賃貸に向けて開発中の物件は
前川
賃貸マンションでは来月に竣工する円山、北大通りU、地下鉄麻生駅前が着工しており、JR琴似駅前、知事公館隣りの物件はまもなく着工となります。分譲マンションでは、福住地区の物件に着工しましたから、およそ6、7件が新規事業として始動しています。
さらに棟数を増やして多く手がけることも可能ですが、先に述べたように顧客の要望を完全に反映するには、棟数の問題ではないと思っております。私たちとしては中途半端に妥協する考えはなく、確実なコンセプトを確立し、今だからこそできるというものを創り、提供したいというのが基本姿勢です。
したがって、地の利や立地条件などのマクロ的な利便性もさることながら、施設そのもののクオリティといったミクロ的な利便性においても完成度の高い物件を目指しております。
▲クラッセ近代美術館(賃貸)
──今後はこの札幌という都市が、どのように推移していくと思われますか。また、それにともなう事業展開は
前川
動向を見ていると、やはり中央に集中していく傾向が見られます。したがって、都市開発もJR札幌駅周辺エリアと、大通公園周辺エリアにビルの立地が見られ、競り合っている状況が見られますから、来年から再来年にかけてさらに両地区の開発が進むでしょう。このため、当面は各地方から道民が移住し、集積していく方向性にあると思います。
一方、中央以外でも住まいの需要は高まっていくと思いますし、人口が増加するということは、北海道経済にも大きな影響を与えると思います。そこで、その場所場所での住まいの需要を的確にとらえ、分譲と賃貸の2つのチャンネルを持つ強味を生かし、良質なマンションを提供していきたいと思います。
賃貸マンションも、仮住から永住志向へ転換しております。そこで、私たちは永住志向ベースの賃貸マンションづくりを心がけていかなければなりません。分譲についても、団塊世代の一斉定年により中心地が開発され、さらに便利になる中で、この開発にも貢献したいと思いますし、この団塊世代がさらに中心地へ向かうものと予想されています。この少ない世代数に応じた、中心地でのコンパクトスペックによる分譲マンションの開発も行っていきたいと思っています。こうして、私たちが最後に目指しているのは総合不動産業という業態です。
──桑園地区などは、市立病院が移転し、大型の商業施設も立地し、一つの街を形成していますが、惜しむらくは高さ制限が敷かれているために、土地の有効活用が制限されていることです。特に今後は周辺地区が新幹線のターミナルとなるでしょうから、土地の高度利用を制限するのは不合理だと考えます
前川
中心部の開発も含め、道内の郡部や関東圏からの移入などが今後も見込まれますから、高さ制限によって、出資者や土地所有者にとって見込めるはずの収益や、行政の税収が抑制されるのは残念ですね。北海道は、まだまだ人口が増える要因があり、可能性があるのですから。

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