建設グラフインターネットダイジェスト

〈建設グラフ2007年8月号〉

interview

食の安全・安心できる牧草地づくり

――酪農家が使いやすい草地整備で全道展開

株式会社ホッカイ 代表取締役 泉 日出美氏

泉 日出美 いずみ・ひでみ
生年月日 昭和22年2月10日
昭和41年4月 上川生産農業協同組合連合会勤務
昭和50年4月(財)北海道農業開発公社勤務
昭和54年4月(財)北海道農業開発公社十勝支所勤務
昭和58年4月(財)北海道農業開発公社釧路支所勤務
平成16年4月 北開建設道東株式会社 道央支店 代表取締役
平成17年8月 株式会社ホッカイ 釧路支社 代表取締役(社名変更)
平成18年4月 株式会社ホッカイ 代表取締役社長

牧草地整備のリーディングカンパニーである株式会社ホッカイ。平成元年、釧路と苫小牧を拠点に産声を上げ、その後の合併を経て、現在は旭川を拠点に農業土木工事、施工管理、技術指導などの事業を全道で展開しており、文字どおり「農家の庭先」で飼料作物の生産基盤を支えている。今後、函館などの道南に事業を構築するほか、自ら飼料作物の生産・販売に乗り出す方針で、創業20周年を機に新たな飛躍を図ろうとしている。ホッカイの泉日出美社長の事業の展望などを聞いた。
――会社の概要から伺いたい
平成元年にホッカイの前身である北開建設道東(株)を釧路に、北開建設道央(株)を苫小牧にそれぞれ設立しました。農業土木工事、一般土木工事の施工など事業目的に掲げていますが、基本的には北海道農政部、北海道農業開発公社の仕事を請け負っています。平成7年に北開建設道央の本社を旭川に移転し、14年に両社を合併しました。合併時の本社は釧路に置いていましたが、事業のメインである牧草地づくりを全道展開するには旭川が動きやすいと判断し、平成17年8月、本社を現在地(旭川市東鷹栖2条2丁目635番地375)に移転しました。現在も釧路に支社を置いているほか、網走、帯広、稚内にそれぞれ営業所があります。
事業体制は、工事管理技術者、監理技術者、機械運転技術者など総勢約70名。クローラートラクター、作業機、ブルドーザなど約170台の機械を配備しています。
草地や暗渠整備など農家の庭先での仕事が多く、特に牧草地づくりは乳牛の成育に直接影響しますので気が抜けません。簡単に考えて他の業種から参入してくるケースがありますが、失敗している例は少なくありません。
――草地管理のポイントはどんなところにありますか
雑草駆除のための除草剤は使うべきでないと考えています。食の安全・安心に対する関心が高まっていますが、消費者においしい牛乳を提供するためにも、除草は手作業で行うのが一番です。とりわけ漁協の目が厳しい宗谷、別海、興部、雄武などの酪農家は除草剤を使っていません。特にサケの漁獲高の多い漁協は除草剤に神経を使っています。
牧草地に多いのが「ギシギシ」という雑草です。根っ子から抜かないと群生します。ブームスプレイヤーで広範囲に除草剤を散布しても、メーカーは「影響ない」と強調していますが、何十年か後に影響が出ないと限りません。役所にも常々、設計に除草剤を入れないでほしいとお願いしています。
▲耕起作業 施工状況 ▲砕土1回目作業 施工状況 ▲土壌改良材散布 施工状況
――ずいぶん神経を使うのですね
農家の財産ですから、社員には、父親の畑を造る気持ちで取り組むようにうるさく言っています。例えば、草地の耕起作業はだいたい地中25センチのところで反転すき込みを行いますが、あとで管理作業がしやすいようにできるだけ平らにし、異物を残さないよう細心の注意を払っています。
同じ農地でも地力のある所とない所がありますので、草が生えてこない所があれば、春に現地に飛んでタネを蒔くことがあります。お蔭様で「ホッカイはきれいな仕事をする」との評価をいただいています。高品質の粗飼料を与える基盤づくりになりますから、大事な仕事をさせてもらっていると感謝しています。
――今後の事業展開について、具体的な目標をどう設定していますか
今後は、道南方面に進出する考えです。一般の施工業者は当社のような機械を持っていません。導入するにしてもイニシャルコストもさることながら、技術者がいないと事業展開は難しいのです。
――ところで草地整備は何年周期で行うのが望ましいですか
3年に1回更新するのが理想です。それまで15周年周期だったのを7〜8周期に短縮してもらっているのが実態です。
――輸入飼料が高騰しているようですが
わが国の食糧の自給率を最低でも50%以上にするためには、北海道が頑張らなければならないと思います。余剰農地を安く借りて、牧草やデントコーンなどの飼料作物を生産・販売できないか、社内で検討しているところです。草地整備は施工期間が短い。わずか2か月間で1年間食べていくだけ稼ぐには無理がありますから、事業に幅を持たせながら牧草づくり事業を継続していきたいと考えています。
▲石礫除去 施工状況 ▲整地鎮圧作業 施工状況 ▲暗渠排水 施工状況

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