建設グラフインターネットダイジェスト
〈建設グラフ2007年8月号〉
interview
道路は中央分離帯があってこそ
高速道路のネットワークが地域と業界の重要課題
村井建設株式会社 代表取締役社長 村井 泰彦氏
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村井 泰彦 むらい・やすひこ |
昭和42年 3月 法政大学法学部政治学科 卒業 |
昭和42年 4月 村井産業株式会社 留辺蘂工場 加工課長に就任 |
昭和46年 5月 柏土建株式会社 総務部長に就任 |
昭和48年 4月 柏土建株式会社 取締役に就任 |
昭和55年12月 村井建設株式会社 取締役に就任 |
平成 2年 4月 村井建設株式会社 代表取締役社長に就任 |
現在に至る |
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村井建設は、昭和21年に創業された柏土建が前身。創業者は北見信金の理事長を務め、道議会議員も勤めた青木氏で、昭和46年に資材会社であった村井産業が資本参加したことから、現職の村井社長が出向。木材屋から土木へ転身し、まったく未知の業界に来たわけだが、その後、50年に青木社長が青木建設を新設して移籍する一方、現職社長の先代が柏建設を継承し、55年に村井建設に社名変更し今日に至っている。一般土木工事と建築工事を専門とする同社の村井泰彦社長に、地域と会社の展望などを伺った。
- ――元は木材資材業界がスタートだったのですね
村井
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木材の加工で、フローリングという床板を扱っていました。42年に入社して加工部門に4年間ほど在席し、そして平成3年に現職に就任しましたが、生産現場とともに販売も経験してきましたから、土木よりは建築の方に接点を持ってきたわけです。
- ――施工実績は、網走開建や網走土木現業所の土木事業が中心ですか
村井
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そうです。基本は管内の受注で、舗装会社もグループ企業として持っており、一般国道、道道、農道、市道、農業土木、河川工事など幅広く施工しております。
列島改造論に基づき、インフラ整備が盛んな時期でしたから、私たちも年々地方の道路や河川が整備されて変わっていく状況を目の当たりにしてきました。道路整備の現場に向かう際には、未舗装の道路を通って現場へ行くという状況でした。
かつては砂利を敷いただけの道路もありましたが、今日では舗装されていること、それが道路という概念になりましたね。
- ──道路も、かつてのように量産型ではなく品質重視であり、また多機能性が求められるなど、かなり高度化していますね
村井
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イギリスでは、未舗装道路は道路と呼ばず、道路予定地と呼ばれるのだと、20年ほど前に聞いたことがありますが、その当時に現地を見てそれを実感しました。舗装されていない道は農家の入口まで、ヨーロッパの道路インフラは、先進的でかつ隅々にまで普及しており、圧倒されました。
その時、我が国の道路インフラの完成度はかなり低く、北海道でやるべきことはまだまだあると痛感しましたし、現在でも整備基準を上げるなら、十分に道路整備の需要はあると思います。
- ――農道は泥道で埃を舞上げながら走っていましたが、野菜や果物などの作物を運搬しますから、食の安全のため食品衛生の観点からも、農道の舗装は時代の要請でもあるでしょう
村井
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何度か東南アジアやヨーロッパへ視察に行く機会もありましたが、アジアでインフラ整備が日本よりも遙かに後れている一方で、ヨーロッパは日本よりも遙かに進んでいる状況を見てきたことから、大きな格差を痛感しました。とはいえ、経済的には日本はかなり豊になり、それに従って、整備率もかなり進んできまして私たちの仕事もなくなってきたと感じます。
しかし、近年になって、この地域の自動車専用道路である道東高速自動車道の足寄−網走間の北見道路というバイパスでは、2つのトンネルが整備されており、一部改良も行われるなど、ようやくこの管内にも自動車専用道路としての芽が出てきたところです。
実際に、走っていて実感するのはノンストップ道路と信号のある道路とでは、異動効率が全く違うということと、信号や歩道があるために歩行者と対峙しなければならない道路とは、必ずしも安心して走れる道路ではないということです。特に冬などはブレーキが効かなくなり、交差点などで様々な事故が発生しますから、真ん中に白線を引いて対面交通するというのは基本的に安全な道路とは言えず、あくまでも中央分離帯があって、右左に分けられていることが幹線道路の最低条件だと思うのです。したがって、自動車専用道路であればそれらは解消されるのです。北見は昨今豪雪に見舞われたこともあり、自動車専用道は、高度の除雪が行われますから、冬期間でも一般道路よりは遙かに安心して走れるのです。
したがって、走行における安心と同時に、医療のための救急搬送においても、地方にとって自動車専用道路は非常に大切ですから、私たちの役目は終わっていません。この整備促進のため、政府省庁への陳情にも力を入れています。
- ――全国一の面積を持つ広大な北海道でありながら、自動車専用道路は未整備区間が多すぎますね
村井
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高速交通ネットワークは繋がらなければ意味がありません。繋がっていてこそ、ありがたさは分かるものです。北海道の整備率は、本州よりもまだまだ遅れていますから、是非とも整備に向けて、要望を伝えなければなりません。ともすると、政府は経済効率にとらわれて東京中心主義となりがちですから。
- ──地方は経済的に非効率との烙印を押されていますね
村井
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地方の景気が冷え込むのは当たり前だと思います。建設業は時代の担い手ではなくなってきましたが、時代の担い手になる新しい産業分野が他にはないのが弱点です。我々の役割を終えたら、違う分野が補完していくという体系であれば、地方もまだ活力ある地域たりえたのですが、公共工事が減った分、弱くなっただけです。
そのため、政策的には建設業界のソフトランディングなど、様々な施策を進めていますが、それらは代替え産業の確立とはほど遠い話です。近年では、観光が重要な産業と位置付けられていますが、そのためにも高速道路が繋がっていなければ、移動効率が悪くて観光にも支障があると思います。
したがって、インフラ整備の芽があるならば、声を上げて、実現していくよう努力しなければ、地域間競争の中でも負けてしまうことになるでしょう。
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