建設グラフインターネットダイジェスト

〈建設グラフ2007年8月号〉

interview

北海道土木行政110周年の歩みとともに
地域を護ってきた地場企業としての使命に徹する

――出資会社(株)副港開発のまちづくり事業も達成

株式会社中田組 代表取締役社長 中田 伸也氏

中田 伸也 なかた・しんや
昭和56年3月 芝浦工業大学土木工学科卒
昭和56年4月 株式会社 田中組入社
昭和63年3月 株式会社 中田組入社
平成 6年6月 専務取締役
平成 8年6月 代表取締役

明治30年に創業した(株)中田組は、まさに今年で110周年を迎える北海道の土木行政の歩みと共に、最北端・稚内市を中心として港湾土木などで実績を積み重ねてきた。顧客の満足、環境保全、安全を追求しつつ、地域を護る地場建設企業として、その使命に徹している。一方、同社の中田伸也社長は、(株)副港開発の社長も兼任し、この春には稚内港の副港開発事業も成し遂げた。同社長に地域建設企業としてのあり方について語ってもらった。
――建設業界には厳しい経済環境ですが、どのように乗り切って来ましたか
中田
地方では人件費のカットは可能でも、リストラのために従業員を切り捨てるような真似は、地域経済にとって痛手であると同時に、地元企業としてのイメージもダウンしますから容易なものではありません。したがって、人件費の削減も職員の理解を得ながらやむなく実行するのが実情です。 その一方で公共事業における近年のダンピング情勢は、本当に困ったことです。工事の積算は発注者たる行政のみならず、我々も適切に行っており、そこから落札率を競っていかなければなりませんが、営業利益率の平均は1.5%と言われる一方で、落札率が90パーセントという事例も聞かれます。これでは完全に営業利益を犠牲にしていることになります。
――建設事業の意義と、建設業界が持つ公益的役割というものが理解されていないのでは
中田
大都会である首都圏で公共工事を不要だと主張する人の意見に、首都圏の人々も地方の人々も感化されている印象があります。地方経済というのは、政府の財政支出によって成り立っています。今後は北海道全体としての自立は可能かもしれませんが、各地域が自立するのは到底無理だと思います。 したがって、必要な公共投資は着実に実施してもらいたいところです。この地域においては、札幌からはJRで5時間から5時間半もかかります。札幌から名寄市までは2時間半ですが、さらにこの稚内市までは2時間半もかかるわけです。国道にしても、ここから旭川市までは4時間半もかかります。それをクリア出来るような最低限のインフラは必要ですね。 そのためには、発注官庁も我々も各方面に対して理解を得る努力をしていかなければならないでしょう。
――公共事業不要論が、建設業における今日の構造不況を招いた印象がありますが、我が国にとって不要な産業でしょうか
中田
建設産業というのは、ローカルで見れば、地方の安全・安心、災害時の迅速な対応という役割を持っています。災害などが発生したときに、地域で迅速かつ臨機応変に動けるのは、やはり地方の建設業です。災害は予測できないだけに、いつでも即応できるだけの機動力・機械力、そしてそれらを保持する企業体力を持っていなければなりません。 しかし、復旧その他の緊急時の需要だけで会社の経営ができるものではないのですから、日頃から地域を護るための公共事業は持続していくことが重要です。これは全国規模の大手ゼネコンに出来ることではありません。
――専門分野と技術力の維持について伺いたい
中田
当社は港湾土木が主体です。明治30年の創業時も、利尻島での港湾整備からスタートしており、草創期から施工に当たってきました。近年では、道路や橋梁、公園整備などでも実績を残しています。 当社の考え方としては、「技術は人」ですから、人の技術を見て覚え、また教えるという連携体制が確立されており、技術の継承が途切れない体制となっていますが、ただ景気に左右されて、地方で人材が得られるときと、そうでないときと波があります。特にこの数年は都市部の景気回復によって、人材確保が難しくなっています。逆に、景況が悪化すると、地方にも人材が集まって来ますが、若者の土木離れも深刻な問題です。現場では集団生活となりますが、最近は一人っ子で育った若者も多く、集団生活に馴染めず、作業者らとのコミュニケーションが苦手な人は続かないでしょう。本当は、モノを造るということは面白いものなのですが。
――港湾土木となると、作業を誰もが肉眼で見ることができないので、施工上の困難もあるのでは
中田
作業は潜水夫に任せることになりますが、最近はビデオカメラで確認したり、工事検査も写真撮影して実施しています。しかし、まずは潜水夫を信頼することですね。
──ところで、中田社長は建設業だけでなく、稚内港の副港開発にも着手し、達成しましたね
中田
第一副港再開発プロジェクト・シーグランド計画の手始めは98年ですから、およそ9年間を費やしました。私は少し遅れて携わりましたが、この副港地区をなんとかしようという想いがあり、そこで(株)副港開発という会社を設立し、当社も出資して私が社長を勤めています。 市場を作って観光客と市民の賑わいの場を作ろうという主旨で行っている事業ですから、建設業とは基本的に業務が異なります。市場や温泉など、すべてがこの4月末にオープンしましたが、手応えとしては堅調といえるでしょう。
──そうした実績や、さらに隣国のロシアでは、サハリンプロジェクトも展開中ですが、会社を多角化したり、さらに新規事業に着手していく可能性は
中田
いいえ、建設業は仕事がないから鞍替えしたり、業務を広げられるような業種ではありません。基本はこの地域で確実に信頼を得て、地域を護るという使命に徹していくしかないと思います。
業務内容―――――――――――
港湾・漁港建設工事、空港工事、海岸工事、
水産土木工事、道路工事、橋梁工事、
農業土木工事、治山工事、公園工事、建築工事

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