建設グラフインターネットダイジェスト

〈建設グラフ2007年6月号〉

寄稿

産業・観光・物流・教育・医療の全方位で地域格差を解消する西九州自動車道

――地域の交流・連携を促進し、地域づくりを強力にバックアップ

佐賀国道事務所 副所長 中野 道男 氏

中野 道男 なかの・みちお
昭和55年3月名城大学 理工学部 卒業
平成12年4月九州地方建設局 道路部 建設専門官
平成15年4月大隅河川国道事務所 副所長
平成17年4月現職
私たち佐賀国道事務所は、佐賀県全域の直轄指定区間の一般国道3号・34号・35号・202号・203号・208号及び497号(7路線・延長209.1km)を管理し、改築事業(バイパス及び現道拡幅等)、維持修繕事業、電線共同溝事業、交通安全施設等整備事業及び道路管理業務を担っています。この他、高規格幹線道路の西九州自動車道(一般国道497号唐津道路等)の整備にも力を入れています。今回は西九州自動車道に焦点を当てて、その事業と整備効果などを紹介します。
西九州自動車道の概要
西九州自動車道は、高規格幹線道路網の一環として計画された道路で、九州西北部の地域経済の活性化、高速定時性の確保に大きく寄与するものです。本路線は福岡市を起点として、唐津市、伊万里市、松浦市、佐世保市を経由して武雄市に至る延長約150kmの一般国道の自動車専用道路で、福岡市の鹿家IC(仮称)から唐津ICまでは唐津道路、唐津ICから伊万里東ICまでは唐津伊万里道路、伊万里東ICから伊万里西ICまでは伊万里道路、伊万里西ICから松浦ICまでは伊万里松浦道路として整備しています。 高規格斡線道路とは言うまでもなく、昭和62年6月の道路審議会答申及び第4次全国総合開発計画に基づき、全国で14,000kmの高規格幹線道路網として計画され、高速交通サービスの全国的な普及、主要拠点間の連絡強化を目標とし、地方中枢・中核都市、地域の発展の核となる地方都市及び周辺地域などからおおむね1時間程度で利用が可能となるネットワークの形成を目指すものです。
唐津道路
唐津道路は鹿家IC(仮称)から浜玉ICを経由して唐津ICまでの全長10.4kmで、九州西北部〜福岡都市圈における相互交通の利便性の向上を目指し、高速定時性の確保に伴う輸送時間の短縮、地域経済の活性化の核として大きな役割を果たします。 昭和63年度に事業化され、平成4年2月に都市計画決定し、7年度に工事着手。これに関連して15年8月に「ちゃく2プロジェクト2003」を発表し、『浜玉〜唐津間平成17年度供用目標』を公表したのに続き、17年7月には改めて「ちゃく2プロジェクト2005」を発表して『鹿家〜浜玉間平成21年度供用目標』を公表。そして、同年12月18日には浜玉〜唐津間供用の開始によって、ちゃく2プロジェクトは達成しました。 このちゃく2プロジェクトとは、「5年で見える道づくり」を目標としたもので、利用者に見える道づくりを目指し、供用目標・効果の明示と進捗を管理するものです。これに基づき、厳しい財政的制約を踏まえ、効果の高い事業の集中的・重点的な整備を進めると同時に、規格の見直し、事業のスピードアップなど総合的なコスト縮減に取り組んでいます。また、選択と集中により5年以内に供用が可能な事業を選定して、供用目標と効果を明示し、その達成に向けて、予算・体制の確保、毎年の進捗状況の確認、用地確保のための収用制度の適切な活用など、プロジェクト管理を徹底してきました。 今年度は、鹿家IC(仮称)〜浜玉IC間について平成21年度の供用を目指し、用地買収、谷口高架橋上下部工工事などを促進するとともに浜玉トンネル工事に着手します。 この唐津道路が全線開通すれば、唐津くんちや唐津城、虹の松原、七ツ釜などの観光地にスムーズに行くことができます。渋滞の緩和効果としては、年間28万人の方が約1時間分の渋滞時間を削減される試算結果となります。
唐津伊万里道路
唐津伊万里道路は佐賀県北西部に位置し、唐津ICから千々賀山田IC、北波多IC、谷口ICを経て伊万里東ICに至る18.1qの区間で、唐津道路と同様に九州西北部〜福岡都市圈における相互交通の利便性の向上、高速定時性の確保により、輸送時間が短縮され、地域経済の活性化に大きく寄与します。また、佐賀県北西部の幹線道路である一般国道202号の代替路線としても機能します。 今年度は唐津市中原から伊万里市南波多町までの18.1qについて、用地買収のほか松浦川大橋上下部工工事及び養母田トンネルエ事などを促進するとともに、養母田1号橋上部工と山彦トンネル工事にも着手します。 この唐津伊万里道路が開通すれば、九州でのコンテナ取扱量第3位(H17)の伊万里港や唐津港から県内外への輸送時間が短縮し、コスト削減や効率化につながります。防災面では国道202号、204号の代替路として救援活動に活用できます。 また、地域医療の向上にも寄与し、例えば伊万里市から唐津赤十字病院まで、救急患者の搬送に50分かかったのが、わずか30分へと短縮されます。
伊万里道路
伊万里道路は、伊万里東ICから伊万里中ICを経て伊万里西ICまでを結ぶ6.6qの区間で、地域の幹線道路である一般国道202号の代替路線としても機能します。 今年度は、伊万里市南波多町から同東山代町までの6.6qについて路線測量を促進するとともに設計に着手します。 この路線も唐津伊万里道路と同様に、伊万里港から県内外への輸送時間短縮に貢献すると同時に、災害時のバイパスとして機能します。また、地域には海のシルクロード館、陶器商家資料館、黒澤明記念館サテライトスタジオといった各種記念施設へスムーズに到着できます。
伊万里松浦道路
伊万里松浦道路は、伊万里西ICから楠久IC、山代IC、今福IC、調川ICを経て松浦ICに至る17.2qの区間で、佐賀県北西部の幹線道路である一般国道204号の代替路線としても機能します。 今年度は、伊万里市東山城町の山代IC(仮称)から長崎県境までの3qについて、用地調査を促進するとともに用地買収に着手します。 区間内には海のふるさと館、不老山総合公園、上志佐の棚田、龍王の滝、明星桜などの名所があり、この路線によって迅速に到着できます。また、伊万里市と松浦市の移動にかかる所要時間が、これまでの47分からわずか13分へと大幅に短縮されるため、通勤、通学、ショッピング、通院などの日常生活の利便性が向上し、地域間交流が促進されます。 産業面では、まあじの水揚量が全国2位(H17)、さば類水揚量は全国3位(H17)を誇る松浦港からの物流が効率化されます。さらにこの路線を含めて全線が開通すれば、呼子のイカ、伊万里牛・伊万里ナシ、松浦の旬アジ、旬サバなど佐賀が誇る地域ブランドを、高新鮮度で福岡・全国へ搬送できます。

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