建設グラフインターネットダイジェスト

〈建設グラフ2007年2月号〉

寄稿

淀川河川事務所管内の事業概要

強くてやさしい淀川をめざして

国土交通省 近畿地方整備局 淀川河川事務所 副所長 三上 章氏

三上 章 みかみ・あきら
平成 17年 姫路河川国道事務所 工事施工管理官
平成 18年 淀川河川事務所 副所長
はじめに

 淀川水系は、滋賀県山間部に発する大小支川を集める日本最大の湖・琵琶湖に源を発し、滋賀県大津市から河谷状となって南に流れ、京都府宇治市から京都盆地を通り、京都府山崎において南から本津川、北から桂川と合流します。そして、大阪平野を西南に流れ下流部で神崎川、大川(旧淀川)を分派して、大阪湾に注いでいます。  幹線流路延長は75.1km、流域面積は8240?で、流域は大阪・京都・兵庫・滋賀・奈良・三重の2府4県にまたがり、大阪市・京都市の2大都市のほか数多くの衛星都市をかかえ、近畿地方の社会・経済・文化の基盤をなしています。  近畿地方の中心を貫いている本水系の治水と利水の意義は極めて大きく、現在、流域内には人口約1,200万人、資産約100兆円が集積しています。京阪神地区では淀川の水を約1,600万人が上水として利用しているほか、工業用水などとしても大いに利用されており、淀川は京阪神地域の生活基盤を形成する最重要河川です。  現在、当事務所では淀川本川53.1km (河口〜天ヶ瀬ダム)、桂川18.6km (三川合流部〜渡月橋上流部)、木津川37.Okm (三川合流部〜笠置大橋)などの計143.2km (支川など含む)を管理区間とし、人々が安心して生活できる「強い川づくり」と、人々に親しまれ、自然を育む「やさしい川づくり」による「強くてやさしい淀川」を目指し、各種事業を実施しています。そこで、その一部を紹介します。

高規格堤防(スーパー堤防)整備事業

 淀川でも、特に下流部は背後地に人口・資産が稠密に集積した地域を有し、超過洪水による破堤が引き起こす被害は想像を絶するものがあります。そこで昭和62年の河川審議会答申「超過洪水対策及びその推進方策について」を受け、淀川でも三川合流部から河口までの区間、両岸で約90kmの延長をスーパー堤防整備区間として定め、昭和62年度から事業に着手しています。現在までに19地区で整備が完成(暫定完成を含む)し、平成18年度にも6地区で事業を実施しており、着実に整備は進捗しています。  また、スーパー堤防の未整備地区では、浸透や洗堀により破堤の危険性の高い個所から順次、堤防の幅を広げ、堤防に水がしみ込みにくくする対策を行い、洪水時に破堤する危険性を減らす堤防強化対策として、堤防の川側の法面になだらかに土を盛って傾斜を緩くする緩傾斜堤防整備を進めています。堤防沿いが軟弱地盤の場合には、土質改良によって地震時の液状化やすべりに強い堤防にしています。  また、淀川と市街地とを隔てていた堤防の傾斜が緩くなることで、親水性も高まり、「強くてやさしい淀川」の旗手として精力的に事業を推進しているところです。

堤防の質的強化について

昨年に中間報告された河川堤防の詳細点検結果で、当事務所でも堤防の浸透と浸食に対する安仝度の低い箇所を公表しましたが、この結果に基づき堤防に水が浸透しにくく、浸食されにくい河川堤防をめざして、強化工事を順次実施しています。

河川環境整備事業
ワンド群の整備
▲河川公園(枚方)

枚方市楠葉地区では、かつては多様な生物の生息環境を持つ多くのワンドがあり、生物にとって貴重な場所でしたが、下流部の河床低下によって干し上がってしまいました。そこで、生物の生息・生育に必要な環境を確保するため、ワンドを実験的に復元しました。今後、生物の生息・生育環境のモニタリングと平行して、ワンド群の再生整備を推進していきます。 鵜殿ヨシ原及び汽水域干潟の再生  高槻市鵜殿地区の高水敷は、75haにも及ぶ良質なヨシなど植物群落が形成され、優れた自然環境を備えており、また古くからヨシ焼きが行われるなど、生態学的にも歴史的・文化遺産的にも貴重な場所です。しかし、河床の低下に伴う高水敷への冠水頻度の減少によって干陸化が進み、ヨシなどの湿性植物群落の衰退が進行していることから、湿地再生に向けた植生調査や高水敷の切り下げの試験工事などを実施しています。  また、淀川の河口部の汽水域では、かつては180haの干潟が存在していましたが、近年その面積は大きく減少しているため、大阪市の海老江地区において低水路部に盛土を行い、干潟再生の試験工事などを実施しているところです。

国営淀川河川公園

淀川河川公園は、近畿圏住民の広域的なレクリエーションの場を提供するとともに、淀川の良好な自然環境を保全することを目的として昭和47年度から事業を開始したもので、淀川本川河口部から三川合流部及び桂川の一部の区間で整備を行っています。平成17年度末現在、約230ha(全休計画約96Oha)を供用しており、年間を通じてスポーツ施設などの利用のほか、各種イベントなどにも活用されており、年間約500万人の人々に利用されています。

おわりに

古くから近畿圏発展の中心となってきた淀川ですが、近年における住民ニーズの多様化、流域の都市化の進展など河川を取り巻く環境の変化は著しく、これらに適切に対処していくことが今後の河川整備にますます重要となってきています。  淀川水系における河川整備計画の策定については、淀川水系流域委員会を設置し、5か年余で延べ会議回数約420回を数える審議をいただき、河川整備計画基礎案に対する意見や、各事業の進捗状況の点検について意見を頂いたところです。今後、河川整備の基本方針の策定後、流域委員会、住民、自治体の意見を踏まえて修正し、河川整備計画を策定することにしています。  今後は河川整備計画にのっとり、環境の世紀といわれる21世紀において、より望ましい淀川の姿を求め、地域の繁栄を支えるとともに、地域から愛される川づくりに努めていきたいと考えています。

▲ワンド(楠葉)
淀川河川事務所管内の整備に貢献
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