建設グラフインターネットダイジェスト

〈建設グラフ2007年2月号〉

寄稿

福島県浜通り地域の期待を担う常磐自動車道の整備状況

NEXCO東日本高速道路鞄喧k支社

相馬工事事務所 所長 高橋 正治氏

高橋 正治 たかはし・しょうじ
昭和44年4月日本道路公団入社
平成11年2月東北支社保全部保全第一課長
平成14年2月盛岡管理事務所副所長
平成17年10月東日本高速道路鞄喧k支社
相馬工事事務所長

■常盤自動車道 建設状況

常磐自動車道の概要

 常磐自動車道(以下、常磐道)は、東京都を起点として、関東地方から東北地方南部の太平洋側を北進し、宮城県仙台市に至る総延長352kmの高速道路です。常磐道は、北関東自動車道、磐越自動車道、東北中央自動車道を経由して東北自動車道と接続することから、北関東と南東北との地域相互の高規格道路網を形成し、緊急時における代替・迂回などのネットワーク機能を強化する重要な路線と位置づけられています。また、救急医療への貢献、太平洋沿岸地域の経済発展、生活、文化、情報基盤など交流・連携軸の形成、発展に不可欠な路線です。

管内概要

 相馬工事事務所は、常磐道の建設中区間の常磐富岡IC〜亘理IC間のうち、南相馬市小高区から福島県・宮城県境までの約43kmの整備を行っています。この区間は、太平洋岸の海岸から6〜9kmの阿武隈山地東端付近に位置し、一般国道6号と主要地方道相馬浪江線と平行しながら、南相馬市、相馬市、新地町を通過しています。  道路規格は、第1種2級B規格(暫定2車線)で、設計速度は100km/h、線形は最小曲線半径R=1,500m、最急縦断勾配i=3%で計画されています。  構造物の比率は、土工が中心であり85%、橋梁が13%、トンネルが2%です。  また、工事区間全線にわたって、福島県のレッドデータブックで「絶滅危惧T類」に分類されるオオタカ等が生息しており、これら猛禽類の保護対策を実施しながら工事を進めています。

工事概要

当事務所管内は、大きく3つの工区に分かれています。起点側から、南相馬市小高区〜相馬ICまでの平成23年度開通を目標とする工区、相馬IC〜新地ICまでの工区、新地IC〜福島県・宮城県境までの工区であり、後の2工区は平成26年度開通を目標としています(注:建設中のIC名称は仮称です)。

南相馬市小高区〜相馬IC

 南相馬市小高区から相馬ICまでは、延長約30kmの工区であり、原町IC、相馬ICの2箇所のインターチェンジと、1箇所の休憩施設を含んでいます。  用地買収は98%が完了しており、埋蔵文化財の発掘調査は、試掘が594千u(95%)が完了、本掘が平成18年度末で63千u(42%)が完了予定です。  工事は現在、延長比で34%の着手率であり、土工工事3件、橋梁下部工工事7件(うち2件は竣工済)、橋梁上部工工事5件が施工中です。  当該区間の工事の特色としては、南相馬市原町区の馬事公苑の直下を通過する約790m区間が唯一のトンネルとなっています。この原町トンネルは、土被りが約40mで、地下水位はトンネル天端より約15m上方にあり、その地質は固結度の低い風化砂岩が主体で非常に脆く、トンネルの掘削は技術的難度が高いものとなっており、今後詳細な調査を実施するとともに、施工方法の検討を進めていく予定です。

相馬IC〜新地IC

 相馬ICから新地ICまでは、延長約9kmの工区です。  用地買収は92%が完了しており、埋蔵文化財の発掘調査は、試掘が62千u(51%)が完了しています。  工事は現在、福島県との事業調整工事1件と、橋梁下部工工事1件が施工中です。  当該区間の工事の特色としては、大部分が丘陵地を通過することから土工構造が主体となっています。一部地すべり地形を通過することから詳細な調査を実施するとともに、対策工法を検討していく予定です。  なお、新地ICは、常磐道で唯一の平面Y型形式となっています。

新地IC〜福島県・宮城県境

▲上真野川橋(南相馬市鹿島区)

 新地ICから福島県・宮城県境までは、延長約5kmの工区です。  平成18年2月に事業化された区間であり、現在、路線測量及び土質調査中であり、今後、設計協議を実施し、道路構造を決定する予定です。  当該区間の工事の特色としては、相馬IC〜新地IC間と同様に大部分が丘陵地を通過することから土工構造が主体となります。一部地すべり地形を通過することから詳細な調査を実施するとともに、対策工法を検討していく予定です。  これら3工区の土工量は約650万?であり、2箇所の土取り場(約130万?)を調達して切盛をバランスさせています。  なお、全線にわたって、橋梁やカルバートボックスの工事を先行し、土運搬を本線内の敷地を使用して行う計画としており、沿線地域の交通安全や環境保全に配慮しています。

常磐道の整備効果
ダブルネットワーク

常磐道の全通により、既に全通している東北自動車道、磐越自動車道、計画〜建設中の東北中央自動車道や北関東自動車道とともにダブルネットワークが構築され、人・物・情報が活発に交流・流動し福島県浜通り地域の発展に寄与するものと期待されています。

命と安心をささえる

福島県内において、脳や心臓に疾患を受けた患者を治療できる高度医療施設(三次救急医療施設)がある市町村は福島市、郡山市、いわき市、会津若松市の4箇所のみで、浜通り地域にはありません。これら緊急・重症な患者は、仙台市やいわき市の病院に長時間かけて搬送しなければならないのが現状です。  常磐道の全通により、搬送時間の短縮、患者の安静搬送が可能になることから、日常生活での安全・安心感が高まると期待されています。

▲前川橋(南相馬市小高区)
リダンダンシーの向上

常磐道の整備は、大雨、大雪、地震などの災害や事故が発生したときに、ネットワークを介して、東北自動車道と相互に補完することができるようになるため、東北地方におけるリダンダンシーを向上させます。たとえば、平成13年1月の大雪の際は、東北自動車道の福島・宮城県内が延べ437時間にわたり通行止めになり、約60万台の交通に影響がありました。高速道路を利用していた車両は、国道6号への転換を余儀なくされ、最大50kmに及ぶ渋滞が発生するに至りました。常磐道は東北地方でも雪の少ない地域にあり、東北自動車道の代替ルートとして重要な役割を担うことになります。

都市間交流の拡大

福島県では高速道路ネットワークの整備に伴い、沿線都市間を結ぶ高速バス路線が増加しており、利用者も年々増えています。常磐道の整備により、東京・仙台・県内主要都市との交流活性化に寄与すると期待されています。

おわりに

ネクスコ東日本相馬工事事務所では、一日でも早い常磐道の開通を熱望されている福島県浜通り地域の皆様への期待に応えるべく、「お客様第一」「公正で透明な企業活動」「効率化の徹底追及」「チャレンジ精神」の経営方針のもとに、「いいものを安く造る」ための工夫を重ね、事業の効率的な執行を行い、新技術・新工法を採用しながら低コスト・高品質で自然と調和した高速道路を目指し、社員一丸となって建設事業を展開しています。  浜通り地域の皆様の豊かで快適な生活と社会・経済の更なる発展のため、また、高速道路の建設にあたっては、人と自然と共生の出来る快適な沿道環境に配慮し、質の高い常磐道の早期建設に全力を注いでいく所存です。引続き、皆様の一層のご支援ご協力をお願いいたします。        ?

東日本高速道路椛株n工事事務所の整備に貢献
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