建設グラフインターネットダイジェスト

〈建設グラフ2007年2月号〉

寄稿

沿線地域の生活向上と活性化に貢献する山陰自動車道

NEXCO西日本高速道路樺国支

松江工事事務所 所長 石橋  彰氏

石橋  彰 いしばし・あきら
昭和48年4月日本道路公団入社
平成10年4月静岡建設局 掛川工事事務所
掛川西工事区 工事長
平成15年4月本社 高速道路部 高速道路工務課 課長代理
平成17年5月本社 高速道路部 高速道路工務課 調査役
平成17年7月中国支社 建設事業部
建設事業統括チーム チームリーダー

はじめに
担当事業

NEXCO西日本中国支社松江工事事務所は、建設部門と管理部門(分室)を併せ持つ組織で、山陰自動車道鳥取益田線の斐川〜出雲間の新規建設事業と、開通区間の山陰自動車道松江玉造〜斐川間、一般国道9号の安来道路及び松江自動車道の三刀屋木次〜宍道間の管理業務を担当しています。また、新直轄事業区間である中国横断自動車道尾道松江線の広島県境〜三刀屋木次間の建設事業の一部を国土交通省中国地方整備局から受託しています。  山陰自動車道鳥取益田線は鳥取市を起点に益田市までの東西244kmにわたる路線であり、高速道路、一般有料道路及び国事業の自専道やBP等により整備が進められているところです。  また、中国横断自動車道尾道松江線については平成16年4月から、国の直轄事業として事業が進められることとなり、松江工事事務所においては、県境〜三刀屋木次IC間の建設工事の一部と技術支援業務を行っています。


事業概要
山陰道玉湯地区災害

昨年7月の未曾有の豪雨によって、玉湯地区において切土のり面の大きな崩壊が発生しました。また、盛土のり面においても住民の方々に避難していただくことにまでなった大きな変状が発生し、松江玉造IC〜宍道IC間の通行止めを余儀なくされ、昼夜にわたる復旧工事の末、8月10日に応急復旧により通行止め解除、11月18日に完全復旧となりました。今回の災害では、東西の幹線交通をマヒさせることとなり、改めて自然の力の脅威を痛感させられる結果となりました。


宍道JCT〜斐川IC開通

11月25日には山陰自動車道のうち宍道JCT〜斐川IC間の 4.6km(暫定2車線)が開通しました。施行命令から8年11ヶ月での開通となります。当区間は、出雲平野南側の山麓を走る路線で、道路からは宍道湖や出雲平野の散居村や出雲大社方面が一望でき、見晴らしが良い路線です。  現在供用中の松江自動車道に宍道JCTで接続し、橋梁が6橋とTNが1本により斐川ICまで延びることとなりました。道路沿線には日本3美人の湯で知られる湯の川温泉や、358本もの銅剣が出土した荒神谷遺跡があります。また、斐川IC付近には先端技術の企業が立地しており、さらなる観光や産業の発展に寄与できるものと期待されています。また、国道9号に並行した山陰自動車道はその代替・迂回機能を有しており、今回の開通により交通混雑の緩和が期待されています。

工事概要

山陰自動車道宍道〜出雲間18.2kmのうち今回開通した宍道JCT〜斐川IC間4.6kmは、橋梁とTNの構造物比率が約43%(L=2km)になります。また斐川〜出雲間13.6kmの区間は、橋梁が8橋(1.9km)とTNが5本(7.8km)で、合せて構造物の延長は9.7kmで構造物比率が約71%になり、山岳道路並みの高い比率となっています。  山陰自動車道宍道〜出雲間は平成3年に基本計画が策定された後、都市計画決定され、平成8年12月に整備計画が策定された区間です。平成9年12月に日本道路公団への施行命令を受け、西日本高速道路鰍ノより、引き続き事業を実施しています。用地4車、工事は暫定2車の計画で設計速度100km/hの1種2級B規格(斐川〜出雲は暫定時1種3級)となっています。

工事の特色、進捗状況等

 開宍道JCTから斐川方面に1kmほどの地点は、地滑り区域に指定されており、計画段階から綿密な調査検討を行い、抑止杭、水抜きボーリング・集水井による対策工、水位・変位の観測を実施しながらの軽量盛土工等の施工を行いました。  当該区間にはTN1本(555m)が計画され、比較的新しい地質年代(第三紀)の泥岩であり、機械掘削により施工しました。  橋梁は本線橋6橋とJCTランプ部で2橋の計8橋を施工しました。  橋梁の種別ではPC3橋、M5橋となっており、本線のM橋2橋は多経間連続の2主版桁を採用し少数主桁化による経費節減を図りました。  現在建設中の斐川〜出雲間13.6kmについては、宍道〜斐川間とともに平成9年12月に施行命令を受けた区間でありますが、今年度内には残る工事の発注も計画しており、全面着手となる見込みです。  斐川ICすぐ西隣の仏経山では約3000mの長大TNの工事中です。東坑口部は地滑りが懸念されるため、集水井等の対策を行い、今夏にTN掘削作業に着手したところです。現在約200mの進捗ですが、既に西側から約1300mの工事は終えており、全体では残り半分の約1900mとなっています。TNの西側は1級河川斐伊川をM橋(L=431m)で渡ります。現在、下部工は橋台1基を残し完成しており、今期の非出水期に上部工の架設を行います。  斐伊川を渡って左岸側は出雲市となります。ここから約1kmの土工区間である船津工事の区域では、平成15年秋に地滑りが発生し、集水井による地滑り対策工を実施しており今後は恒久対策として、押え盛土工を計画しています。  更に西側では正善寺橋下部工、大津TN、所原TN、神戸川橋下部工、知谷TNの工事を展開中であり、出雲IC等の残る工事についても今年度内の全面着手に向け進めているところです。


コスト削減と環境負荷の軽減

 更なる削減の検討を加え、設計の見直し、再協議を行い道路構造の見直しを行い、コスト削減を図ることが出来ました。  捨土掘削においては、本線外盛土場として、現場近傍の公共事業との調整により運搬費用の削減を図りました。  伐採木の資源リサイクルとして、チップ化した材料を盛土のり面や園地へ利用しており、環境への配慮も図られています。また、ガードレールや仮設防護柵については、発生材を有効利用し経費節減を図っています。

おわりに

 山陰自動車道は、広域ネットワークを形成する幹線道路として、地域沿線の産業・経済・文化の発展に寄与するとともに、緊急時の代替ルートとしての機能を担う重要な道路です。  地域の方々の期待に応えて、お客様に安全・安心の道路空間を提供すべく、社員一同一丸となって建設・管理に邁進していきたいと考えています。

西日本高速道路鰹シ江工事事務所の整備に貢献
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