建設グラフインターネットダイジェスト

〈建設グラフ2007年2月号〉

寄稿

松江国道事務所の整備事業概要

島根県東部をはじめ山陰地方の一体的な発展を支える道路整備

国土交通省 中国地方整備局
松江国道事務所 副所長 内海 一幸氏

溜渕 孝治 たまりぶち・こうじ
昭和32年1月生 熊本県出身
内海 一幸 うつみ・かずゆき
昭和30年9月広島県生
昭和52年4月建設省入省(中国地方建設局)
平成13年4月中国地方整備局道路部 道路計画課専門官
平成15年4月中国地方整備局企画部企画課長補佐
平成17年10月現職

はじめに
松江国道事務所は、島根県の東西約220qの細長い県土のうち、国道9号については鳥取県境の安来市から大田市までの間、国道54号については広島県境までの島根県区間の2路線合計延長約198qを松江、出雲、頓原の3維持出張所で管理しています。 日本海側島根県東部から鳥取県にかかる地域として山陰で最も人口が集中している「宍道湖・中海圏域」がありますが、この地域は、山陰の産業・経済・文化活動の中心的役割を果たしており、国際便のある出雲、米子両空港、重要港湾の境港などの交通拠点や出雲大社、城下町松江など、自然及び歴史的にも極めて優れた観光資源が多数あります。また、管内西部に位置する大田市には、平成19年度の世界遺産登録が確実視されている石見銀山遺跡もあります。  事務所としては、観光振興を支え、環日本海地域の経済・文化交流を促進するため、山陰道や横断道尾道松江線による高速交通道路網整備と都市機能強化を担う幹線道路の整備など、真に必要な社会資本整備を重点的、効率的に進めているところです。

主な事業の概要
一般国道9号松江道路
 「山陰道」の一部である松江道路は、延長10.9qのうち、暫定2車線区間で残っている延長6.5qの4車線化を進めており、平成19年度までに2.8qの完成を目指しています。  上乃木高架橋上部工事(橋長約410m、PC24径間連結プレテンションU型コンポ桁橋)は、従来のコンポ桁をU型にすることで桁本数を減らし、既設の橋脚横梁の継ぎ足しを不要としました。 また、松江道路の玉湯工区は、平成9年度からPI方式による事業を進めており、今年度はバイパス部分の延長1.6qの完成供用を目指すとともに、残る現道拡幅区間1.2qの4車線化工事などを進めています。  軟弱な堆積層である玉湯川扇状地を通過するバイパス部では、軟弱地盤対策としてサーチャージ盛土やCDM、TBM等による地盤改良を実施しました。また、新玉湯大橋(橋長165m、PCポステン7径間連続中空床版橋)は、桁自重を低減するために、床版の内型枠として5角形の発泡スチロールボイドを採用しました。


一般国道9号仁摩・温泉津道路
「山陰道」の一部となる仁摩・温泉津道路は、現国道9号の交通隘路区間を解消し、広域交流の促進を進める延長11.8qの自動車専用道路ですが、中国地方整備局管内で初めて環境管理計画に基づく整備を実施している箇所です。  箇所内13橋すべての橋梁を対象に、「設計アドバイザー制度」を導入したVE検討委員会を設置し、LCCを考慮したコスト縮減に関する技術提案や設計方針等について審議いただき、各橋種を決定しました。  現在下部工を施工中の福波第2高架橋(橋長394m、鋼8径間連続非合成複合ラーメン2主鈑桁)は、少数主桁と複合ラーメン構造を採用し、約15%のコスト縮減を図っています。  平成16年度に事業化し、来年度からの工事全面展開を目指して、今年度は用地買収を促進するとともに、すべての工事用道路の設置を進めています。

中国横断自動車道尾道松江線
 尾道松江線は、尾道を起点として三次市を経由し松江市に至る延長約137qの高速自動車国道であり、「新直轄方式」により整備するものです。このうち、島根県境から供用済の高速道三刀屋木次ICまでの間、延長24.6qについて、今年度から当事務所が担当しています。路線は県境の中国山地から日本海に向かって約490mの標高差があり、橋梁及びトンネルが多数計画されています。県境部の毛無山トンネル(仮称)は、延長約4.9qで、完成すれば中国地方最長の道路トンネルとなり、尾道松江線を代表する構造物となっています。  今年度は用地買収や保安林解除の概成、文化財調査の促進、構造物等詳細設計の概成を目指すとともに、工事用道路の設置や橋梁下部工事に着手しており、今後、橋梁上部工事、トンネル工事等にも着手します。

一般国道9号出雲バイパス
出雲バイパスは、現国道9号の慢性的な交通渋滞となっている出雲市街地をバイパスする延長8.7qの道路であり、現在までに市街地中心部の2.8qを暫定供用しています。  今年度は、残る前後の区間計5.9qについて改良、橋梁下部・上部工、地下道などの工事を促進するとともに、山陰を代表する斐伊川を渡河する「からさで大橋(橋長578m、15径間PCポステン連結T桁橋)」を完成させ、平成19年度には全線暫定供用を目指しています。
 また、出雲バイパスが通過する出雲平野全体が斐伊川の扇状地と考えられる軟弱地層のため、その対策として、サーチャージ盛土やCDM等による地盤改良、橋梁取付部などの高盛土区間では、沈下やすべり破壊を防ぎ、資源の有効利用となるクリンカーアッシュ(石炭灰)を盛土材として活用しています。

宍道湖夕日スポット整備事業
宍道湖東岸の国道9号松江市内の「嫁ヶ島」を背景とした夕景は、写真愛好家など多くの方が訪れる観光スポットとなっています。しかし、狭い歩道で駐車場もなく交通安全上危険な状況であったことから、より安全で魅力的な観光スポットを創出するため、国・県・市の道路・河川・公園事業等が連携し「宍道湖夕日スポット整備」を進めています。  計画及び景観デザインは、市民アンケートやワーキング、松江市デザイン委員会等によるご意見などを基に策定しました  今年度は護岸、地下道、歩道、駐車場などを整備し、事業の完成を目指しています。

おわりに
事務所の事業としては、ご紹介した箇所以外の改築事業や維持修繕・交通安全事業等を実施していますが、そのほかにも、住民やドライバーなどからご意見をいただき事業実施の参考とする道路モニター制度の活用や夢街道ルネサンス、日本風景街道などの地域振興支援、また山陰道標識改善プロジェクトの推進など多様な取り組みや積極的な広報により、「道づくり」「地域づくり」を進めています。
 今後とも地域の皆様のご理解とご協力をいただき、なお一層地域に貢献できるよう、事務所職員全員で頑張っていきたいと考えています。
松江国道事務所管内の整備に貢献
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