建設グラフインターネットダイジェスト

〈建設グラフ2007年1月号〉

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県内屈指の難治河川で多目的ダムの整備

平成24年度の完成に向けて邁進する長沼ダム建設事業

宮城県 登米土木事務所 長沼ダム建築事業


宮城県内でも屈指の難治河川である迫川の洪水を調節するため、平成24年度の完成を目指して、長沼ダムの建設が進んでいる。この迫川は、古くから改修工事が行われてきたが、中下流部は極めて低湿地帯のため、県内でも屈指の難治河川で、沿川地域は水害常習地帯となっている。
近年では、昭和7年から14年の旧北上川合流点から山吉田間11.7qの新川開削工事を発端に、新北上川の開削工事の完成と相まって、沿川低地帯の洪水防御は進展した。
その後も迫川上流第一期工事など改修事業が進められた。しかし、戦後の22年9月、23年9月、25年8月と相次ぐ洪水のため沿川は甚大な被害を受けた。特に、23年9月のアイオン台風では、死傷者21人、浸水家屋8,098戸、氾濫面積17,930haという大惨事であった。
このため、25年に「迫川改良工事全体計画書が立案され、一迫川・三迫川上流部に花山・栗駒の2つのダムと、中流部に長沼・南谷地の2遊水地を有する計画に変更された。また、流域開発による人口や資産の増加、県北穀倉地の中心である迫町佐沼の市街地化により、社会的・経済的発展に見合った治水計画の見直しが強く要望された。
一方、迫川が合流する旧北上川でも、河口部の石巻市をはじめとする沿川の発展が顕著になり、北上川本川と整合した治水安全度工場が必要となったため、55年3月に国は「北上川水系工事実施基本計画」の改定を行った。同計画は、迫川の基準点である佐沼における基本高水のピーク流量を3,200m3/s、計画高水流量1,000m3/sとし、2,200m3/sを10ダム、1遊水地で調節することとしている。長沼ダムは、これら上流ダム群の一環として計画されたものである。
また、既存の長沼は登米市迫町、南方町の耕地等に対する水源として広く利用されているが、48年、53年、60年等、夏期において深刻な水不足に見舞われている。さらに長沼川は登米市の迫町佐沼の中心部を流れているが、生活排水による汚濁が著しいため不特定補給を行い、流水の正常な機能の維持を図る。
加えて、長沼を中心にレクリエーションゾーンが形成されつつあることから、国際級の漕艇競技コースを整備するなど、恵まれた自然環境を利用しながら、地域に開かれたダム湖として整備が進められてきた。

長沼ダムの目的・役割

ダムの洪水調節は、直接流域である上流からの流入量を貯水池内に貯留することで、洪水を調節するのが一般的である。しかし、長沼ダムは、間接流域である迫川の洪水を延長580mの越流堤で分流し、延長2.7qの導水路を経て、長沼に流入させ調節する。
一方、対岸の迫川左岸には、既設の南谷地遊水地がある。ダムと同様、越流堤により分流し迫川の洪水を調節し、計画高水流量1,700m3/sを同ダムと南谷地遊水地で、それぞれ600m3/s、300m3/sの洪水を調節する計画としている。
この他、ダム湖面の有効利用策として、インターハイ・ボート競技の開催を機としてレクリエーションも盛んになっている。平成4年度から長沼ダムはレクリエーション湖面創出も目的とした、多目的ダムとして整備が進められている。
また、長沼周辺には公園や湖面に近接した施設もあることから、迫川フェスティバルや伊豆沼ハスまつりなども行われ、美しい環境に基づいた催事にも力が注がれている。

事業の進捗状況

長沼ダムは昭和50年度に建設事業として着手しており、間接流域である迫川本川の洪水調節、長沼ダム直接流域の調節、導水路築造による内水対策の3点を治水計画としている。
均一型アースフィルダムとして、高さ15.3m、総貯水容量31,800,000m3、有効貯水容量30,600,000m3で、平成17年度末の進捗率は約75%となっている。
今年度は、長沼水門工事、主ダム築造(盛立)工事、取付擁壁工事、導水路築堤工事、砂原水門工事、糠塚橋上部工事、倉崎橋下部・上部工事、十五丁排水機場、荒川サイホンゲート設置工事、滝沢・梅ヶ沢副堤工事、背後地盛土工事、市道付替工事を進める。






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