建設グラフインターネットダイジェスト

〈建設グラフ2007年1月号〉

寄稿

地域振興の繁栄による自立への道となる阪和道

地元にとっては震災時に孤立しない命の道

北海道 札幌土木現業所長 寺山 朗

寺山 朗 てらやま・あきら
昭和29年1月生 小樽市出身 北大工大学院修了
昭和63年 帯広土現道路建設課舗装係長
平成1年 北海道開発庁開発専門官
平成4年 土木部総務課主査
平成6年 企画振興部企画室主査
平成9年 渡島支庁地域政策課長
平成11年 建設部空港港湾課主幹(苫小牧港管理組合派遣)
平成13年 建設部企画調整課長補佐
平成14年 同企画調整課主幹
平成15年 釧路土現事業部長
平成16年 建設部企画調整課長
平成17年 網走土現所長
平成18年 現職

▲沼田奔川砂防工事 環境保全護岸

札幌土木現業所は北海道のほぼ中央に位置する石狩・空知の両支庁を所管区域とし、東西は130km、南北は200kmに及び、そのほぼ中央を道内一の流路延長を誇る一級河川石狩川が流れています。当管内は道都である札幌市を擁し、人口は全道人口563万人のおよそ48%を占め、さらに、北海道の空の玄関である新千歳空港や重要港湾石狩湾新港といった物流・人流などの交通の要衝を有しており、北海道における政治・経済の中心的な役割を担っています。
また、肥沃な石狩平野や空知管内では稲作や花き栽培等の農業が盛んであり、特に稲作の収穫量は全道の半数近くを占めるなど、基幹産業となっています。さらに、支笏洞爺国立公園などの豊かな自然や、奥座敷と言われる定山渓温泉での憩い、雪国の四季の魅力を活かした観光も重要な産業であり、近年は外国人観光客、特に台湾、韓国、中国といった東アジア地域からの観光客数が飛躍的に増加しています。
このように、当管内は北海道の政治・経済の中心としての役割に加えて、札幌・旭川という大都市近郊における「緑豊かな田園地域」「食と観光・リゾート地域」としての発展が期待されています。

このような状況のもと、札幌土木現業所では管内地域の経済活動を支え、地域間の交流・連携・自立的発展に不可欠な幹線道路ネットワークの整備や、自然災害から人命と財産を守る河川の改修やダムの整備、さらに少子高齢化に対応した安全・安心のための基盤整備などを積極的に展開し、「社会資本整備の着実な推進」を図ります。
平成18年度当初の公共事業費は、354億3千5百万円、箇所数は205箇所で、事業費については前年比92.2%と、厳しい予算を反映して減少しています。
道路関係では都市圏における渋滞の緩和、食料生産地から物流拠点までの定時制の確保、そして観光資源等の地域振興を支援する道路の整備を進めています。さらに、災害に強い道路整備や、交通不能区間や冬期交通不能区間の解消を目指し、重点的に事業を進めています。

▲岩見沢石狩線 たっぷ大橋

道路事業は事業費171億9千万円、箇所数130箇所で、主な事業としては、石狩川を挟む地域間の交通網の確保と物流の円滑化を図るため、美唄浦臼線(美浦大橋)、江部乙雨竜線(江竜橋)でそれぞれ整備を促進し、岩見沢月形線(月形大橋)では今年度下部工に着手します。
また、岩見沢石狩線(旧岩見沢大橋=たっぷ大橋)は、今年度に旧橋解体を行い工事完成の予定です。
北広島市仁別から国道36号に至る仁別大曲線では、国道の恒常化した交通渋滞解消や国道のバイパスとして、円滑な物流活動支援のため4車線化を進めます。
道都札幌と急激に人口が増加している江別市を結ぶ幹線道路の東雁来江別線では、交通混雑解消と安全確保のため4車線化による整備を行っており、平成17年度に新道が供用開始され、今年度歩道工事等を施工し事業の完成を目指します。
街路事業は、事業費47億7千2百万円、箇所数31箇所で、主な事業として、JR函館本線(野幌駅付近)連続立体交差事業では、2箇所の踏切除却により、交通渋滞、事故が解消されるともに鉄道の高架化により、分断されていた南北市街地の土地の有効利用が可能となります。
3・4・102 14号東通(奈井江町)及び 3・4・123 団地中央通(恵庭市)においては、踏切遮断時間による車両混雑と通勤通学等の安全性の向上を図るため、立体交差事業を推進します。

下水道事業は、事業費5億5千9百万円をもって、石狩川流域下水道の、管渠並びに処理場の改築更新工事を行います。
河川事業は、事業費65億7千1百万円、箇所数31箇所で、主な事業として、徳富川広域基幹河川改修工事では、自然環境に配慮しつつ、洪水や土砂災害に備えた安全性の高い災害防止施設の整備を促進します。また、千歳川流域対策事業では、南九号川など千歳川流域河川において、直轄事業と連携した工事及び河川整備計画の策定などを行います。
ダム事業は、事業費49億6百万円、箇所数2箇所で、主な事業として、当別ダム建設工事では、平成19年のダム本体工事に向けて、仮排水トンネル工事に着手するとともに、付替道路の整備を促進します。
砂防、地すべり、急傾斜地事業は、事業費12億7千5百万円、箇所数9箇所で、主な事業として、沼田奔川砂防工事では、魚道の設置や環境保全護岸など自然環境に配慮しながら、土砂災害による周辺農地の被害防止するために、工事を推進します。
漁港、海岸事業は、事業費1億6千2百万円をもって、厚田漁港海岸の環境整備工事を行います。
道内経済は依然として、厳しい状況から脱却できない状況でありますが、地方分権の推進など、自主自律の地域社会を目指す北海道にあって、石狩・空知管内は今後とも中心的役割を担う地域です。事業の遂行にあたっては、限られた財源での緊急性の高い事業の優先実施と、選択と集中による効率的・効果的な事業の実施が不可欠であり、より一層のコスト削減に努めていたいと考えています。

▲江部乙雨竜線 江竜橋 ▲仁別大曲線 道路改築 ▲当別ダム建設事業 完成予想図 ▲徳富川広域基幹河川改修 
 河畔林を保全した河川改修

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