建設グラフインターネットダイジェスト

〈建設グラフ2007年1月号〉

寄稿

北の大地を東西に貫く高速道路ネットワーク完成に向けて

東日本高速道路竃k海道支社千歳工事事務所 所長 服部 清繁

服部 清繁 はっとり・きよしげ
昭和58年4月 日本道路公団入社
平成13年8月 本社 高速道路部 高速道路工務課長代理
平成15年8月 九州支社 建設部 企画調査課長
平成17年7月 北海道支社 千歳工事事務所長

管内概要
▲鵡川橋から穂別トンネル東坑口を望む

北海道横断自動車道は、黒松内町を起点とし小樽市、札幌市、千歳市、夕張市、帯広市近郊を経て根室市及び網走市に至る予定路線延長694kmの高速道路である。このうち、小樽〜千歳〜夕張間及び十勝清水〜本別・足寄間が既に開通している。
千歳工事事務所では、未開通の夕張〜十勝清水間のうち夕張〜占冠間の延長36.8kmと余市〜小樽間の延長23.4kmの区間の建設を担当している。
夕張〜十勝清水間は道央圏と道東地域を結ぶ最後の区間である。この区間の完成により、国道274号利用に比べて約50分の時間短縮が図れるほか、急峻な地形と過酷な気象条件により交通の難所となっている日勝峠を回避することができ、走行性、安全性にも大きく寄与すると考えられ、道央圏と道東地域の物流、観光の活性化、ひいては北海道全体の発展に大きく貢献する路線である。
夕張〜占冠間は夕張〜十勝清水間の西半分の区間であり、夕張市、むかわ町、占冠村を通過している。この区間は、急傾斜山地地帯となっており、トンネルと橋梁を併せて50%を越える構造物比率となっている。
また、余市〜小樽間は、現在開通している札樽自動車道に接続することで、後志北部に高速道路ネットワークが伸びることとなり、この地域の産業、経済、文化、観光の発展に大きく寄与する区間である。
平成18年10月21日には中心杭打ち式を行い、本年度は、測量や地質調査などを行う予定である。

夕張工事区

▲夕張市紅葉山地区を望む

当工事区は、すでに供用している夕張ICからむかわ町に予定されている穂別IC(仮称)付近までの約13.2kmを担当しており、そのうちトンネル延長が約6,500mと約半分を占めている。トンネル工事3件を含み全体で7件を担当している。
特徴の一つとして、全用地の60%に迫る約18haを国有保安林が占めている。保安林解除の手続きに当たっては、工事工程に遅れないよう関係機関と十分調整を行って進めてきている。
また、夕張IC 周辺では高級ブランドとして名高い夕張メロンの畑を通過していることから土運搬工事には細心の注意を払っている。
当工事区に存在する岩質は、古第三紀及び白亜紀の泥岩が主体となっている。そのため、起点側のユーパロトンネル工事(L=1,955m)では泥岩の破砕帯部の変圧・沈下が発生している。
また、むかわ町内ではのり面部で地滑りが多発しており、アンカー等の対策を実施している。

穂別工事区

当工事区は、むかわ町から占冠村にかかる約13.7qの建設を担当している。 道路構造としては、土工区間5割、橋梁区間1割、トンネル区間4割となっている。
工事の特色として、2本のトンネルがあり、このうち穂別トンネルは延長が4,323mで完成時には北海道の道路トンネルとして最長になる予定である。
トンネルの地質は蛇紋岩主体となり、土被りが400mあることから大きな変形が予測される。
よって、避難坑工事を先行発注して、蛇紋岩の物性値・特性及び計測結果等を把握し、本坑の掘削にフィードバックする計画である。現在、避難坑の掘進も1,850m程度まで進み、蛇紋岩区間では大きな変状を伴っている。本坑については坑口付けが終わりトンネル掘削を開始した状況である。

占冠西工事区

▲双珠別川橋を望む

当工事区は、占冠村のニニウから中央まで約9.9kmの延長を担当しており、構造物比率は、約60%となっている。トンネル工事2件を含む7件を担当している。
工事の特色としては、一つにトンネル掘削に伴う可燃性ガスが発生してきており、その対策としてガス抜きボーリングや工事中の連続換気運転等で安全管理に努めている。もう一つは、大規模地すべりブロックをトンネルで掘削する区間があり、事前の対策を実施しているが、今後とも動態観測を行いながら、掘削中の安定性と工事の安全を確保し、工事を進めていくこととなる。

余市小樽工事区

余市〜小樽間は札樽自動車道23.4kmの暫定二車線区間である。
このうち、小樽JCT〜小樽西ICは、小樽市街地を迂回して山地部を通過するため、トンネルや橋梁などが多くなる見込みであり、住宅地を通過する区間や近接する区間も存在する。また、小樽西IC〜余市IC間は、埋蔵文化財調査が必要な区域が相当数存在する予定である。
7月中旬までに地元への事業説明会を実施し、8月からは路線測量、土質調査、自然環境調査など現地立入調査を開始した。今後は、現地調査が本格化するとともに、設計、協議へと事業が展開する。

おわりに

事業実施に際しては沿道住民の皆様方のご理解ご協力のもと、関係機関と、環境対策及びそれぞれとの事業調整などについて緊密に連携を図ることとしており、夕張〜占冠間は平成23年度、余市〜小樽間は平成30年度に開通を予定しています。
今後は、一層のコスト削減に取り組み、関係職員一丸となって工事の安全と周辺環境への配慮を第一に考え施工を進めてまいります。皆様のご協力を今一度お願いするものです。


東日本高速道路(株)千歳工事事務所の整備に貢献
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